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男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される  作者: 新城かいり


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男装聖女と騎士団長の秘密 4


「言っただろう。お前の正体がバレたら部屋を別にすると」

「そ、それは」


 確かに前にそう言われたけれど。


「お前には一人部屋に移ってもらう」

「私だけ急に一人部屋とか皆変に思うだろう!」


 思わず声が荒くなってしまった。


「そんなことはない。元々一人部屋の者もいるだろう」

「だったら、なんで元々一人部屋にしてくれなかったんだよ!」


 最初からトーラが私だと気づいていたのに。


「あの部屋割りを決めたのは俺ではない。……それに、あの頃はお前を早く城から追い出しかったからな」


 そのためにやたら厳しくされていたことを思い出す。

 そしてムカついていた頃の感情がふいに蘇ってきた。


 ラディスはこちらに背を向け着替えながら続ける。


「それに知っていると思うが、騎士になった者には一人部屋に移る権利が与えられる。希望した者のみだが。現にあの、ザフィーリだったか、あいつは希望を出している」


 ザフィーリが希望を出すのは納得だ。寝る時いつも耳栓をしていると言っていた。

 でもイリアスは……。


「あいつが希望を出せば自然とお前は一人になる。何もおかしいことはない」

「それは、そうかもしれないけど……」


 それでも納得出来ずにいると、ラディスの冷たい目がこちらを見た。


「それとも、なにか。お前はどうしてもあの男と同室がいいのか?」

「そ、それは……」


 そんな言い方をされると返答に困る。

 そりゃあ、一人部屋の方が何かと気楽そうだし、あのいびきも気にせずぐっすりと眠れるだろう。

 でも……一年以上ずっとうまくやってきた友人と離れるのは、やっぱり寂しいと感じてしまう。


「あいつも納得すると思うがな」


 それを聞いてハッとする。


「お前、まさかイリアスに命令するつもりか!?」

「そのつもりだが」

「やめろよ! 公私混同も甚だしい!」


 ラディスの眉がピクリと上がった。


「なら、お前が希望を出すように言うか」

「……っ!」


 私から一人部屋に移ってくれなんて、言えるわけない。

 つい2日前に親友だと言ってくれたイリアスに対して。

 勿論、イリアスが一人部屋の方がいいと言うなら、私にそれを拒む理由はないけれど。


「言えないのなら俺が言う」

「……」


 私が俯き黙っていると、支度を終えたらしいラディスがため息交じりに言った。


「俺は先に行っているぞ。お前もそろそろトーラの姿をになれ」

「……わかってるよ」


 かなりつっけんどんな言い方になってしまった。

 ラディスが部屋を出ていき、私はベッドに腰を下ろした。


 ……ラディスにとったら、私が男と同部屋なのはありえないのかもしれない。

 でも私にとったら、イリアスは友人……親友で、基本私はずっと男の姿をしているわけだし何も問題はないと思うのだけど。


 むしろ、このまま部屋が別になったらイリアスと疎遠になってしまいそうで。

 それがとても怖かった。




「あ」

「あ」


 支度を終え遅れて廊下に出ると、丁度イリアスとばったり出くわした。


「おはよう」

「お、おう」


 なんとなく気まずいながらも笑顔で挨拶すると、イリアスはなぜか焦ったように私から視線をそらした。


(……?)


 不思議に思いながらそのまま行ってしまう背中を追いかけ声をかける。


「昨日、遅くまで飲み歩いてたのか?」

「ま、まあな」

「よく起きられたな。また先輩に叩き起こされたんだろ」


 言いながら顔を覗き込むと、イリアスはまたふいと私から視線を逸らしてしまった。

 流石にムッとして先を阻むように足を止める。


「なんだよ。何で目合わさないんだ?」


 訊くと、イリアスはやはり目は合わさずに言いにくそうに答えた。


「……隠したほうがいいぞ、それ」

「何が」


 するとイリアスは私の首元を指差した。


「そこ、赤くなってる」

「え? ……っ!?」


 イリアスの言わんとしてることがわかってしまって、私は慌ててそこを手で隠した。


「じゃあ、先行ってっから」


 イリアスはそう言い残してそそくさと階段を下りて行ってしまった。


「~~っ!」


 私は急いで一度部屋に戻り、首元を鏡に映した。

 思った通り、そこには昨夜ラディスにつけられた痕……キスマークがくっきりとついていた。


(あいつ~~っ)


 最っ悪だ。

 イリアスに、ラディスとそういうことをしていると思われた。確実に。

 事実ではあるが、それをイリアスに知られたことがめちゃくちゃ恥ずかしかった。


(こ、こんなとこにも!)


 他にもいくつか見つけたそれを、私は一度藤花に戻って聖女の力できれいさっぱり消し去った。


(あとで絶対に文句言ってやる!)




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