第49話:事件の後のギルド
悪徳経営者リッパーの襲撃から数日が経つ。
ボロン冒険者ギルドは平穏な日々が戻っていた。
本日も開店と同時に冒険者たちが来店。
多くの冒険者でギルド内は賑わっていた。
「おはようございます!」
「おはよう!」
そんな中、駆け出し冒険者のライルとエリンは、今日も元気に顔を出してきた。依頼の掲示板を見ながら、二人で雑談をしていた。
オレは仕事をしながら二人の様子を確認する。
「それにしても、ライル。前に比べたら、かなり人が増えてきたわよね、ここって?」
「そうだね、エリン。最初は他の冒険者の人は、あんまり見かけなかったけど、今はこの大盛況だからね」
二人が思い返しながら感慨深くなるのも無理はない。
彼らが登録した当初、ボロン冒険者ギルドには数組の冒険者しか登録されていなかった。
だが今はまだ午前中だというのに、既に多くの冒険者でギルド内にいる。滅多に登録者の移籍が行われない業界の中にあって、異質な急増の現象なのだ。
「たしかに、そうよね。でも賑わってきた分だけ、ライバルも増えたったことよね? それじゃ良い条件の依頼を早く探さないとね!」
見習い女神官エリンが焦るもの仕方がない。登録冒険者が急増しても、依頼の件数は急激には増えない。
需要と供給のタイミングに時間差がでてしまうのだ。
さらに駆け出し冒険者の彼ら向きの依頼は、まだ条件が狭い。自分たち向きの依頼を探すだけでも、二人は一苦労といえるのだ。
これは助け舟を出した方がいい様子。オレは掲示板の方に向かう。
「おはようございます。ちょうど二人にピッタリ依頼を見つめたのですが、これはどうですか?」
数ある依頼の中から、二人向きの依頼を提案する。こうした適切な仕事を提案するのも、冒険者ギルド職員の大事な仕事の一つなのだ。
「あっ、フィンさん。おはようございます。なるほど、これはいい感じね! これにしましょう、ライル?」
「そうだね。フィンさんのオススメ案件は、今まで全部成功したし、いいね!」
提案された依頼用紙をもって、エリンとライルの二人は受付に移動していく。こうしてギルド職員の提案を素直に受け入れられるもの、冒険者としての資質の一つ。
あの二人は未熟だが、将来性がある雰囲気がある。もしかしたら将来的に大物冒険者に成長するかもしれない。
だが今はまだ駆け出し域を出ていない。もうしばらくは“サポート”も必要だろう。
「さて、次は誰か困っている人はいないかな?」
今のボロン冒険者ギルドは受付業務に、有能なレオンとクルシュがいてくれる。そのため事務員であるオレは、自由にギルド内でサポート業務を行うことができるのだ。
「ん?」
そんな時だった。ギルドの入り口付近にいた冒険者たちが、急にザワき始める。誰かがやってきたのだろうか?
「おはようございます、フィンさん。オーナーのマリーさんはいらっしゃいますか?」
一直線にこちらに向かって声をかけてきたのは、四十代半ばの神経質そうな眼鏡の男性。王都公正取引委員会の筆頭調査官ケンジー=ヒニリスだ。
「おはようございます、ヒニリス調査官。オーナーは……」
「あっ! はい! ここにいます! ど、どうしましたか、ヒニリスさん⁉」
カウンターの奥から銀髪の少女マリーが飛んできた。直立不動の姿勢でオレに隣に立つ。
マリーが緊張するのも仕方がない。何しろヒニリスは《毒マムシ》の異名で恐れられた調査官。
この男のしつこい調査によって閉鎖に追い込まれたギルドは少なくないのだ。
「おい、また《毒マムシ》の奴が、ここにきたぞ……」
「前回の執拗な調査は、前菜で今回が本番なのか⁉」
「あのオーナーの子、可哀想に。完全に《毒マムシ》に目を付けられたんだな……」
ギルド内にいた冒険者たちもざわついていたのだ。今も遠巻きになりながらヒニリスとマリーに注目をしている。
ギルド内の空気は張り詰めた空気になった。
「おや? そこまで萎縮しなくても大丈夫です、マリーさん。本日ここに来たのは報告のためです」
「へっ?……ほ、報告ですか?」
操作だと思っていたマリーは肩すかしをくらって、思わず変な声を出す。それにしても一体なんの報告なのだろうか?




