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ギルド

今日は、学園は休みだった。

俺は、学生らしく昼ごろに目を覚ました。

起きてすぐに、カレンに軽く説教された事は、今は置いておこう。

「いい依頼ある?」

俺は今、ギルドに来ていた。

昨日の件で、俺の財布の中が氷河期を迎えそうだったからだ。

「久しぶりですね、シオン君」

受付は、机の下に入れているのであろう、依頼書を漁りだした。

「シオン君に受けてもらいたい依頼はこれくらいですかね」

机の上に、依頼書が3枚置かれた。

依頼書にはそれぞれ、スカルドラゴン5頭の討伐、キマイラ1頭の討伐、妖精の美酒の採取と書かれていた。

スカルドラゴンは、文字通り体が骨でできたドラゴンだ。

魔素と呼ばれる大気中に含まれる魔力が濃い場所だと、死体が動き出す事があるらしい。

スカルドラゴンは竜の死体が動き出していたものだ。

既に死んでいるから、個体の戦闘能力が通常種のドラゴンより低めだ。

そのため、スカルドラゴンの依頼は、他2枚の依頼よりランクが低い。

SSSランクではあるから、弱いという事ではないんだけどな。

キマイラは、みんなも予想出来ているだろうが、合成獣の事だ。

キマイラの出現方法は、おもに使い魔召喚での禁忌召喚だ。

キマイラの代わりに死神が召喚されるようになってからは、キマイラの出現情報もったけどな。

その出現方法から、キマイラは個体の戦闘能力が非常に高い。

なにせ、1頭にして複数体の命がつぎ込まれているのだ。

寿命は非常に長く、予測不能な戦い方をしてくる事が多いのだ。

妖精の美酒は、一種の薬だと思ってもらって構わない。

妖精は、自然に存在する魔力に意思が宿ったものだ。

昔は、美酒目当てに人工的に妖精を創り出す研究や妖精の乱獲などをしていたらし。

おかげで、妖精にとって人間は敵と認識されたらしく、めったに人前に現れる事はくなった。

3枚の依頼の中で一番難しいのは、間違いなくこの依頼だろう。

「分かった。全部受ける」

そのほうが、面白そうだし、なにより依頼を選ぶ余裕もないくらい金銭的に困ってるんだ。

これ全部受けただけで、1カ月くらいなら遊んで暮らせるはずだ。

「頑張ってきてくださいね」

受付の声援を背に、俺は依頼書を持って転移した。



「あれ?」

俺は依頼に記載されていた森にて、スカルドラゴン達を見つけた。

見つけたのはいいが、数がおかしい。

依頼書には確かに5頭と書かれているが、目の前にはどう見ても10倍以上の数がた。

スカルドラゴンは基本的に群れをなさない。

脳まで腐っているんだから、群れを作る知能もないからだ。

だから、目の前の光景は異常だった。

まるで、誰かが操っているとしか、考えられないからだ。

俺は、そこまでで考える事を中断した。

依頼書に書かれている事が違うとしても、最高ランクを持つ俺には関係ないから。

俺は闇衣を纏い、既に創っていた斧槍を手に、スカルドラゴンの群れに突っ込ん。

挨拶代わりに、目の前の竜の首を叩き斬る。

やっと、俺の接近に気付いた他の竜が吠えだしていた。

おせぇ、よ!!

俺は、吠えていた竜の足元から、掬いあげるように、顎を突き上げた。

そして、槍の柄を軸に、横から口を開いていた竜を横から蹴り抜く。

その勢いを利用し、周囲にいた竜に、遠心力を加えた斬撃をお見舞いした。

「よっと」

俺は、空中に舞い上がり、魔力の塊を適当に撃ち放つ。

魔力の塊は竜達に当たると、爆発を起こした。

撒き上がった砂煙の中、俺は考える。

あれだけやっても、全然数は減っていない。

目測より、数は全然多いようだ。

そこまで考えて、持っていた斧槍を振り下ろす。

ちょうど、砂煙の奥から竜のアギトが出てきたが、振り下ろされた斧槍に頭をかちられた。

今は、このアソビを楽しもう。

俺の頭はそう結論付けた。

「ハッハァ!!!」

そして、俺は舞い踊った。



ふぅ。

俺は息を整えるように、短く息を切った。

さっきまでの、アソビに身体が疲れてしまったようだ。

我ながら、情けないな。

あの程度で息を切らせるとは、前世より体力が落ちたかもしれないな。

俺の視界には、スカルドラゴンによる山が築かれていなかった。

スカルドラゴンは死ぬと、灰に還るからだ。

ん?

俺はナニカの気配を感じた。

「何の用だ?」

俺は、辺りに聞こえるように、訊いた。

ナニカの気配が、複数感じられたからだ。

俺の言葉に反応するように、光が集まった。

「貴様こそ、何者だ?ただの人間ではないだろう」

光は、男とも女とも見分けのつかない、中性的な顔立ちをしたヒトの姿になった。

俺は斧槍を構えた。

目の前のヒトが、敵の可能性もあるからだ。

「人の名前を聞くときは、まず名乗るように言われなかったか?」

まあ、目の前のヒトは、人ではないかもしれないけどさ。

俺の睨まれている状況の中、ヒトは笑った。

「クックック。まさか、あの方と同じ事を言うとはな」

この野郎。俺なんざ眼中にないってか?

俺は視線に少し殺気を混ぜた。

「そんなに怒るでない。我とて、貴様のような化物と闘るつもりはないのだ」

俺以上の殺気を逆にぶつけられてしまった。

俺が、恐怖しているだと!?

反射的に下がろうとした足を、何とか踏みとどめた。

久しぶりの感覚に、俺の頬を冷や汗が一筋流れる。

「我は、貴様ら人間で言うところの妖精だ。もっとも力はそれなりに持っているが」

ヒトは殺気を収めた。

俺の膝が崩れそうになったが、気合で持ちこたえる。

「つまり、お前がさっきのスカルドラゴンを集めていたのか?」

ヒトは鼻で笑った。

俺の的外れな意見を笑っているんだろうが、俺からすれば、必死に保っている感情笑われた気がした。

「彼奴らは、我では干渉する事は出来んよ。お前らの方こそ、心当たりはないの?」

気がつけば、俺はいつの間にか人間代表のような立場になっていたらしい。

だが、俺の知識に奴らに干渉する方法はない。

つまり、少なくとも魔法では、操る事が出来ないという事だ。

「俺は知らない。てっきり、お前が操っているのかと思っていたよ」

俺は、かろうじて保っていた構えを解く。

これ以上は保つ事が出来そうになかったからだ。

「ククッ、お前如きなら、我だけでもお釣りが来るわ」

ヒトはまた笑いだした。

どうも、コイツは苦手だ。

心をすべて見透かされているような感覚に陥ってしまう。

あ。

「そうだ。お前、妖精なんだろ?だったら、美酒を分けてくれないか?」

すっかり、忘れていた。

依頼書の中に、妖精の美酒の採取があった事を。

でもまあ、さすがに難しいかな?

美酒目当てだと分かった瞬間に、態度を変える可能性があるからだ。

現に、ヒトの笑いは止まっていた。

最初から、達成できる依頼と思っていないから別にいいけどさ。

「別にいいぞ」

ほらな、やっぱえ?

「いいのか?」

「お前から訊いてきたんだろうが。お前は面白いからな、今回は特別だぞ」

俺は、頭を下げた。

やっぱり、日本の文化だよね、DO・GE・ZA・☆

余談だが、俺の頭はヒトに踏まれて、土に減り込む事になった。



その後、俺はあっさりキマイラを倒し、今はスラム街にいた。

討伐系の依頼は、ギルドカードにカウントされていくが、採取系の依頼はそうはいかない。

基本的には、ギルドから依頼主に採取されたものが渡されるが、依頼主の指定があれば直接手渡しを行う場合もあるからだ。

俺が受けていた妖精の美酒の採取も、依頼主が手渡しを指定していたらしい。

手渡しだと知っていたら、この依頼を受ける事はなかったのに。

高ランクの採取系は、手渡しが指定されている場合が多い。

そうすれば、実力者と会う事が出来るからだ。

実力者と話をする事が出来れば、自分の部下になるように勧誘も出来る。

おもに、貴族がそれを目的にしているから、高ランクの依頼は手渡しが増えていった。

俺も、以前一度だけ勧誘された事があったが、その時はすごく面倒だった。

なにより、しつこいのだ。

あまりにしつこかったから、ついその家は潰してしまったほどだ。

それ以来、俺は出来る限り手渡し指定の依頼を避けていた。

「ここ・・・か」

俺は依頼書に書かれていた、引き渡し場所に来た。

すごくボロい家なんだが、見かけは信用出来ない。

そこから、さらに別の場所に移動する事もあるからだ。

あぁ~、今から帰ってすぐに寝たい。

俺は、深く深いため息をついて、戸を開けた。

家の中には、布団が一式あるだけだった。

そこに、寝かされている人はいるが、まさかこの人が依頼主か?

「もう、借金は明日まで待ってくださいって言ってるでしょ!」

後ろから、誰かに殴られた。

振り返ると、俺よりも5~6歳年下であろう、少女が立っていた。

「あれ?もしかして、人違いだった?」

少女は、顔を少し青くしていた。



「ごめんなさい!」

俺は部屋に通された。

目の前で頭を下げているのは、さっき俺を殴ってくれた少女だ。

「別にいいよ。気付かなかった俺も悪いしな。それより、依頼主を知らないか?」

俺は、依頼書を少女に差し出す。

早く帰って寝たいんだ。依頼主を早く探さなければならんのだよ。

少女は、俺から依頼書を受け取り、内容を確認した。

「これ・・・あたしのだ」

そう、早く依頼主である少女を見つける必要がえ?

これ、お前が出した依頼だったのか?

「お兄さん、この依頼してくれたの!?」

少女は喜んでいた。

少女の母親らしい、さっきまで寝ていた女性は複雑な顔を浮かべた。

「やったよ、お母さん!これで、お母さんの病気を治せる!」

なるほどな。この女性は病気なのか。

確かに、妖精の美酒は万病の薬とまで言われるほどの名薬だ。

おおかた、この女性は不治の病にでもかかっていたのだろう。

でもさ、この依頼はオーバーランク指定されてるんだぞ?

この家にそんな金があるとは思えないんだけどな。

俺は、女性にさっきもらってきた美酒を渡す。

「これが依頼の品です。それで、報酬は?」

俺の言葉に表情が暗くなる女性。

少女も少しテンションが下がっていた。

俺の予想通りの結果になってしまった。やはり、この家にそんな金は存在していならしい。

なんと言われようとも、俺も仕事で来てるんだ。報酬は欲しいんだよ。

「ごめんなさい。お金はこの家に残っていないの」

少女は、俯いていた。

なんでだろう、俺よりレイトに変わったほうがいいと直感が訴えているんだ。

「だから、報酬はあたし自身。奴隷の如く働くし、奴隷市に売り払われる覚悟もあよ」

少女は、顔をあげた。

その目には、涙が溜まっていた。

女性の制止の声を振り払ってまでという事は、最初からそのつもりだったのか。

「あなたは、お母さんを助けてくれた。あなたのためにならどのような扱いでも構ないよ」

少女は笑顔だった。

一瞬誰かと面影が重なったが、俺には心辺りがない女性だった。

「嫌だよ」

俺は、そんな表情をしてもらう為に、ここにいる訳じゃない。

「なにより、気に入らないんだよ」

そんな事のために、血反吐を吐くように鍛えているわけじゃない。

「俺は、自分からハッピーエンドを投げだす奴が大っ嫌いなんだ」

俺は、俺が満足するために鍛えているんだ。

「お前が、そんな過酷な運命を受け入れるなよ!」

そんな表情をされても、俺は満足しない。するわけない。

「抗えよ!お前はまだ生きてんだ。これからならまだ挽回出来るだろ!?」

偽善だと嗤われても、嘘吐きと罵られても関係ない。

「そんな、最初から人生を諦めているから、こんな事になったんじゃないのか?」

俺は、俺だけの道を歩む。

「お金がない?知識がない?だから、どうした!!」

誰にも、邪魔をさせる気はないし、させはしない。

「最初の一歩を踏み出さなければ、出来る事も出来ないに決まってんだろう!!!」

それが、主人公の隣を歩いてきた、脇役の意思だ。

俺は肩で息をしていた。

久しぶりに、全力で説教をした。

俺の言葉は、親子の心に届いたのかな?

「よくそんな恥ずかしい事が言えるね」

なんで、お前がここにいるんだよ、カレン。

「ボクはこの人の使い魔だけど、貴女を養う気はないよ」

俺の冷たい視線を華麗なるスルースキルで無視する魔王。

「それに、ボク達はお金に困っているわけでもない。だから、君の事は正直必要なんだよね」

カレンの言うとおりだ。

確かに、俺の財布は少し冷えてはいるが、ギルドに依頼達成の報告をすれば、金もらえるしな。

家事は俺が出来るから、少女は俺たちにとって、ただの邪魔な存在でしかない。

「どうしても、ボク達と来たいというなら、それだけのナニカを手に入れてからだ」

未だに、理解出来ていないような表情を浮かべる少女に、カレンは告げた。

俺も、ほとんど同じ意見だが、カレンに全部言われてしまった。

「君は、お母さんを守っていればいいさ」

だから、これだけを言っておく。

俺は、母親を知らないからな。

せめて、肉親を捨てるような事はしないでほしい。

「・・・ありがとう、ございます」

少女は泣きだし、女性に抱きついた。

少女を抱きしめている女性も、目に涙が溜まっていた。

俺たちは、その光景に少し微笑み、文字通り音もなく去った。



「これで、依頼達成ですね、お疲れ様です」

机には、パンパンに膨れ上がったきんちゃく袋が置かれた。

中身は見るまでもなく、お金で詰まっている事だろう。

俺は、依頼の報酬金を受け取る。

「そうだ。忘れていたが、スカルドラゴンが群れをなしていたぞ」

殲滅したけどな。

俺の報告に、受付は少し顔をゆがめた。

俺が説明を求めると、受付は答えてくれた。

「最近、本来なら群れをなさない魔獣が、群れをなしていたという報告が相次いでるんです」

受付は、依然難しい顔をしていた。

なるほど、魔王フラグですね、わかります。

まあ、魔王は今頃、俺の部屋でポテチでも食っているだろうけどね。

だったら、誰の仕業だ?なんて考えない。

そういうのは、レイトの仕事だ。

間違っても、脇役である俺が解決する問題ではない。

「そうなのか~」

俺は、巻き込まれないように、逃げるように話を変えた。

その後も、受付と世間話をして帰った。

帰るとなぜかご立腹の魔王様の説教が待っていた。

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