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64 グループ研究は各自散会

最近の教育関係ではどうなっているか知らないが、必ずグループ研究では仕切り屋と提供屋と使いの3パターンに分かれる気がする。

仕切り屋は、文字通りリーダー格。提供屋は家など準備をするタイプ。使いは、文字通りパシリ。

どっかの踊っちゃうサラリーマン警察ではないが、ある意味未来的警察にあった様な Stand alone complex が理想ではないかなっと思う。とは言っても、前者と後者では全然意味合いが異なるのだがね。


「どっちに転んでも、俺一人で何か出来るとも思えないし……?」

 何より、秋水には恐らく学園都市同様に始終監視されているだろう。キャシー以外にも様々な手段で秋水を監視している目があるだろう事は、想像くらいは流石につく。

「秋水様に関しましては、私が委細責任を持ってお世話をさせていただきます。

 今回の件に関しましては、出来うる限り快適なご旅行を提案させていただくと言うのが前提となっておりますので、どうぞお気になさらずお過ごし下さい」

「いやいやいや、それは不味くない?

 あとさ、ラーカイル先生はサンプルとかで研究するとかして、レン・ブランドンとドーンの二人はどうするのさ?」

 何しろ、言ってはいないし向こうも勘違いしてるとは言ってもレインやイル=ス、親方達は秋水達全員が「ギルドの関係者」だと思っているだろう。レンに関しては流石に見抜かれたが、秋水の事を見抜いている様子はまだ見えない。仮に学園都市側から秋水の生態資料が流れているとしても、別の意味で監視の目が増えるだけだ。

「ドーン君は他にやる事も会う相手もいるから問題はありませんね……レン・ブランドン君は、この町の貴族達有力者を抑えに掛かってもらいます」

「掛かってもらうって……ラーカイル先生? 人の意見は無視?」

「遊び惚けて貰えば庁舎の方々のお仕事の邪魔になりますし、ドーン君と一緒に行動するとドーン君の迷惑になります。アインス君とは別の角度から別の人達へとアプローチして下さい」

 うむうむと頷くのは、キャシーとアインスだ。

 見ると、何故かショックを受けているので見えない所でドーンも賛成したのかも知れない。

 レン・ブランドンと言う人間が、ラーカイル医師ごときの言葉で衝撃を受けると言うのは何故だか、考えられないと秋水は思った。

 ある意味に置いては、失礼な台詞である。

「ラーカイル先生っ!」

「全く持ってその通りであると判断します」

「キャシーっ?」

「レン・ブランドン、お前は自分自身の顔を少しは自覚したほうがいいって……お前にとっては普通の日常でドーンに至っては諦めの境地だろうと思うから可哀想だけどさ、お前のせいで今日は何人の庁舎の人達が怪我をしたと思ってるんだ?」

「僕が何をしたって言うんだっ!」

 レンの言い分ももっともではあるだろうが、アインスの言い分ももっともである。

 何しろ、ほどほどに慣れてきた学園都市の住人達とは違い職人都市の人々はレンの事を知らない人も多い。その為、レンの将来性を彷彿とさせる美貌に関しては不慣れな人が多いのだ。おかげで、今日だけで何人の職員が不注意で怪我をしたりした事か。

「え、そんなにレン・ブランドンの周りってけが人多いの?」

「はい、秋水様。

 何しろ、あの通りのご両親様が現実逃避をなさるほどの無駄な美貌でございます。これで女性ならば、さぞかし傾国の美少女として近隣の助兵衛ジジイの皆様を掌の上でころころと転がして頂く事も出来たのでしょうが。何しろ縦にしても横にしても男の子でございますので……そう言う需要が皆無とは申しませんが……」

「ちょっとキャシー、やめてくんない? 北邦みたいな思考回路駄々漏れの恥ずかしい脳内発言」

「……失礼を致しました」


 まぢか、この女!


 全くの無表情なので誰一人確証はなかったが、どうやら大変珍しい事にキャシーは……照れたらしい。

 もしかして美少年愛好家なのかっ? と誰かが思ったりもしてみたが、そんな事を聞く勇気を持ち合わせた勇者がこの場に居たのだとすれば、こんな悲劇は起こらなかったのかも知れない、なんて事はないが。

「やはり、先ほどのお仕置きは手ぬるかった様でございます……」

「お仕置きって……」

「アインス様……いえ、どうぞお気になさらぬ様お願い申し上げます」


 すごい気になる、けど言えない!


 一同の心がぴたりと重なった瞬間である、何しろラーカイル医師ですら好奇心が浮かべた瞳をしてじっとキャシーを見ているのだ。眼鏡越しで。

 と言うより、逆にラーカイル医師は何を考えているのだろうか……そちらの方が怖いかも知れない。

「デジカメが欲しい……」

 ぽつりと呟いた秋水の言葉に反応するアインスのおかげで、強固に固められた空気が緩んだのは幸いだ。

「でじかめ?」

「携帯でもいい」

「けーたい?」

 何だか、幼子が大人の言葉を繰り返しているかの様ではあるが、この世界に存在しない物体に対しては上手く翻訳機能の様な何かが働いていないかも知れないと、ラーカイル医師の仮説は聞いた事がある。

「俺の世界の持ち運びが出来る保存できる……なんて言うんだろう、データ? 動画? ファイル?」

「記録機能、でいいんじゃないかな?」

「ああ、それ! ……て言うか、なんでアインス判ったの?」

「前にドーンが研究してたから」

「へえ、そうなんだ」

 秋水は、そこで起きていた問題に気が付かなかった。

 口にした本人は流石に気づいたらしく、たらりと背中を流れる汗を感じながら周囲を見回して悲鳴を飲み込む。

「な……なんで、そんな顔をしてるんですか!」

「ほう……そんな顔とは、どんな顔かな?」

「お手数ではございますが、ご説明をいただけませんでしょうか?」

 確かに、ラーカイル医師もキャシーも特に表情には変化らしい変化はない。

 ただ。

「そんな暗雲背負って迫ってきたら、顔なんて動かなくても無駄かつ無意味でしょうがっ!」

 悲鳴交じりの絶叫は、普通ならば上げれば人が何事かと飛び込んできてもおかしくはない。

 特に、通常ならば客人として迎えられている以上は護衛と言う名の監視が二重にも三重にもついているのが常識と言っても良いだろう。実際、呼べば使用人は直ぐに「お呼びでしょうか?」と現れるがキャシーに言わせれば「あの程度は三流のズルでございます」と言葉は非常に刺々しい。

 どうやら、今の契約さえなければ徹底的に庁舎内の使用人達を叩きのめし……もとい、鍛え直したい衝動にかられているそうだが「協会にチクる程度で我慢させていただきます。心の底から残念としか言葉がございません」と言う恐ろしい台詞を吐き出し、職人都市のトップ二人の顔面を蒼白にさせていたりした。

「いやだなあ、アインス君……私の一体何がそんなに恐ろしいのかな?」

「アインス様……それは想像上の産物であり実在する私に当てはめられるのはいかがなものかと……」

 しかし、そんな台詞を吐く二人とも目が笑っていないのだから言うだけ嘘八百と言うものだ。

「それはそれとして、じゃあ実際の所を言うと俺はどうしたらいいのさ?」


 ぴたり。


 キャシーとラーカイル医師の行動が止まって、アインスは心の中で「ありがとう、親友!」と勝手に思っていたりするが表情にすら出さないようにするのは仲々骨が折れる様だ。

「この建物から出ちゃいけない? 今なら動けるのに? このままだと、先生の言っていたように後どれくらいで動けなくなるか判らないんじゃない?」

「とは申されましても、私のメイドとしての矜持が不確定な物体を秋水様の口に入れると言うのは些かの抵抗がございます。まずは、確保の上でラーカイル様に検査をしていただき、しかるべき処理の後に提供させていただいた方が……」

「いや、それならばシュースイ君はドーン君と組ませてはいかがだろう?」

 文字通り、爆弾発言が投下された瞬間だった。

「俺とドーン? 別にいいけど?」

 更なる爆弾が投下された、瞬間だった。

「絶対反対!」

「どうしてだい、レン・ブランドン君?」

「ドーンの足を引っ張るような奴を組ませたくない!」

 あまりと言えばあまりだが、確かにレンの言う事はもっともだ。

 秋水には実感がまるでないが、ドーンが一緒にいると言う事はハイリスクでありハイリターンだったりする。

「ああ、その間にキャシーはこの建物の人達を躾直すってのはどうだろう?」

「それは良い提案ですね、シュースイ君」

「ちょっと待ったぁっ!」

 白衣の教師ラーカイルと、今は普通のシャツとズボンに身を包んだ秋水が話を進めようとすると、普段の冷静なきらきらと何かが飛んでそうな笑顔を振りまいている筈のレンは今。


 鬼だ、悪魔が居る。


「何か言った、アインス?」


 いい加減にしておかないと……「また」お仕置きされたい?


「ナンデモアリマセン」


 カンベンシテクダサイ


「まず、シュースイはギルドの職員ではありません」

 視線と言葉でアインスと会話をしたレンは、ラーカイル医師に向き合う。

「レン・ブランドン君もそうだろう?」

 報告でもあったのか、ラーカイル医師は平然とした顔で続ける。

「職人都市の親方にも臨時職員扱いを受けてるって、言われていたじゃないですか」

「シュースイはいつ倒れるか判らない状態です。そんな状態でドーンと一緒に行動して、何かあったらどうするつもりですか」

「何か起きる前に、次の得物が見つかるのを期待するしかないね」

「しかも、キャシーをここにおいていくつもりですかっ!」

 確かに秋水にとって、目覚めてからこれまで。それこそ、おはようからおやすみまで共に居てくれた相手だ。キャシーは「仕事ですから」とにべもないが、だからと言って世話をして貰ったと言う事実を前に感謝の念くらい秋水は持っている。

 それこそ、親に甘える雛の気持ちが理解出来そうな気がするくらいだ。

 幸か不幸か、正面からそれを秋水がキャシーに言葉として伝えたことはないのだが。

「はい」

「正気かっ?」

「当然です」

 あっさり言われてしまい、レンは流石に怒りを通り越して唖然呆然としている自分自身を発見して二度驚く。

「ラーカイル先生、流石にそれはまずくないですか?」

「どういう意味ですか、アインス君?」

「いや、別にドーンの実力は多少知っているから何か問題が起きてもいつもと同じ様に飄々とトラブルを回避するより解決させて無言で去っていくのはいつもの事ですけど」

「いつもの事っ?」

 目を丸くして驚いたのは秋水だけだが、それは他の面子にしてみれば「本当にいつもの事」なので何を驚く事があるのかと逆に問いかけたくなりそうになって、全員が内側で自己完結をしてみた。

 よって、秋水は一人で置いてきぼりを食らう事になる。

「そうですね……今回、ドーン君にはシュースイ君に連れて行っていただきたい所があるんですよ」

 キャシーは気づいていたが、今のラーカイル医師は十分に発言に気をつけている。

 一言でもレンの琴線に触れるような単語を出ない様な、細心の注意を払っているのだが笑顔無表情の為にアインスや秋水にはまったくもって理解は出来ない。

 下手な事を言えば、今すぐレンはドーンを連れて学園都市へ帰ってしまう……くらいならまだしも、ドーンを連れて実家に行ってしまうか、下手をすれば逃亡してしまうかも知れない。

 通常ならば、そこまで気をつけなくても大丈夫だろう。相手は色々な意味で事情を知っているラーカイル医師だし、お互いの会話の9割は本気で1割は冗談だが10割が有限実行だ。矛盾はない。

 もし、うっかり「ドーン君にはシュースイ君を連れ込んで欲しい所があるんです」なんて茶目っ気たっぷりに言った日には公爵家の権限をフル稼働でレンはドーンを連れて姿を消すかラーカイル医師の社会的抹殺に乗り出すだろう……何故だろうか、ラーカイル医師には簡単に想像する事が出来ていた。

 内容は同じ事の筈だと言うのに、これほど気を使わなければならないのだから面倒くさいとも言う。

「連れて行って欲しい所ね……僕も同行しよう」

「止めてください、レン・ブランドン君みたいな派手な人間が出入りするような所ではありません。如何わしい方々に警戒されてしまうではありませんか」

「イカガワシイ……!」

「あ、間違えました。如何わしいではなく後ろ暗いです」

 それは、一体全体どちらがマシなのだろうかとアインスが遠い目をしたくなったとしても。同情はしても、蔑みの目で見てあげる必要はないのではないかと思われる。


実際の所を言えば、ドーンは基本トラブル・メーカーです。しかも本人は超無口で周囲に事情を説明しない上に己で基本は全て解決できてしまうと言う、まさに周囲にしてみれば「いっそ天災じゃね?」と言う扱いで、それは学園都市でも職人都市でも変わりません。

いやさ、ドーンが以前に職人都市に来た時なんてね……(検閲?)


と言うわけで、次回予告。

「あれ、これってデートなんじゃね? とツッコミ不在なボケ二人。しかも片方は超無口だけど主人公って有り?ねえ有り?の割りに行き着く先は食べ物屋で新キャラ登場します。って、あんた誰?」

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