ゼネルのお手製の飲み物の威力
そろそろ山に日が落ちる。
気がつけば横から日差しが差し込み眩しい。
夕日を見ると今日はいつも以上に悲しくなった。
ナルとサーリャは肩を寄せ合い、壁に背中をつけて寝ている。
セインはハンモックで静かに寝ていた。
ヴァクーと傭兵の二人はヤケ酒して床で寝ている。
正直、俺も眠い。ランタンに灯りを灯す。
船は位置固定になっていて風が強くなければ大体の位置は固定されるので、毛布を取りに部屋へ向かった。
少し、ドアが開いていたので中を覗くと、ベッドで寝ているシオンと机に、うつ伏せになって寝ているゼネルが見えた。
シオンの顔についていた血飛沫は綺麗に拭き取られていた。
そっと部屋に入り、畳んである毛布をゼネルにかけ、毛布を3枚持ってブリッジに向かった。
床に寝ているおっさん達に被せ、ナルとサーリャにもかけてあげ、操舵席に座り、毛布にくるまった。
少し、寒い。操舵席の下にある赤色のバルブを少しだけ開ける。
ブリッジ床下にある動力パイプの熱を迂回させる経路に蒸気が流れ部屋が温まってきた。
このまま、日が落ちて暗くなれば、逃げれる可能性があるかもしれない。が、レイを置き去りにしてロイックは怒るだろうな。
クレバー、ロイックは無事に逃げ出すことはできたのか。
昔はこうやってベッドより、ここで包まってよく寝たっけ・・・
今は一人じゃない。みんなの事を考えるようになった・・
逃げれるかと思ったが、要塞から投光器が照射され、これでは位置バレだ。
残っている船は、20隻ほどいるのでは。
要塞の明かりが消えた。
いや、前に船が来た。
みんなを起こすべきか・・・まあいいか・・・動けば起きるだろう。
=ついてきて=
強襲艇から発光信号だ。
ゆっくり、船を動かす。誰が一番早く起きるか楽しみだ。
船の淵が明るい。下から光が当てられている。
左にゆっくりと回っていく。城の外周を反時計回りで高度を下げるルートだ。
「パッチ・・」
「寝れた?」
「少しだけね・・
正直、怖い。この船が降りて、私たちがどうなるのか」
「俺も怖い・・ナルだけじゃないよ。
みんなは口に出さないけど、同じだと思う。寝ているふり飽きただろ?」
「え?
バレてたか」
「ヴァクーもだろ?」
「何じゃ?」
「いびきが出てないから」
「あれ!パッチの目の周りひどいね」
昨日の朝から起きている気がする。
「降ろされて、どこに連れて行かれるんだろうね」
「まさか、そのまま・・ってことにならないよね?」
サーリャはため息を深くつき、窓の外を見ている。
そうなる可能性の方が高い。
「この状況では彼方様の一存だな」
ゼネルはシオンと一緒にブリッジに入ってきた。
「シオン!」
ナルは飛びかかり抱きつき胸の谷間に顔を埋める。
「心配かけたな」
ナルを撫でているが痛みを堪えているのが顔に出ている。
「ごめん!折れてたんだったね。忘れてた」
強襲艇が船体を振る。船を傾けると赤いランタンが振られている。
ランタンを目印に降りろということか。
「これ作った。飲め。温まるぞ!」
地上用の足を降ろす準備していると、
いい香りのする飲み物を差し出してきた。
「美味しい」
「当たり前だ、特性だからな。よく味わえ」
ゼネルが作ってくれたんだ。
「ん?」
「ぁぁぁぁあああああ!!!!」
口の中が痛い。何を淹れてくれたんだ!!
「そうそう!あまり一気に飲むと喉が痛くなる」
それを先に言え!!
入港中なのになんてものを飲ませてくれるんだ!!
「ナル・・舵をお願い」
腕が震えて冷や汗が流れる。
「うぉぉぉぉ!!」
少し、呼吸が落ち着いてきた。
「どうだ?」
「ファル、かはろファンファンプネぃロッシ」
?
=ナル、赤いランタンの目印に降ろして=
声が・・まともに話せない。
「あーはユフィで」
サーリャ!ヴァクー!気がつけ!!
指信号を読め!!いや、指も震える。
「赤い・・何?」
「赤い・・え?」
サーリャ!!
「赤いパンツ下ろす?」
ヴァクー黙れ!!
「赤いラント下ろす」
「フォフェ」
「赤いランタンの所に船下ろすんだね」
サーリャありがとう。うなづく。
「こんな時に何やってんのじゃ?」
「寝ていないだろうから、悪い。思った以上に効果があって」
「一体何を飲ませたんじゃ?」
「フチルノボだ」
「「「え?」」」
ヴァクー、クンガー、バリーは顔を合わせる。
「何それ?」
「サリィは知らんでいい」
「ゼネ・・それ、まだあるかい?」
「ある」
「後でほんの少しでいい。くれ!」
「生きて出られたらな」
「よっしゃぁぁ!生きて出るぞぃ」
体の方は落ち着いたが声が出ない。
全く、何考えているんだ。
ナルは船足を全部展開し上手く着陸した。
「狭くて手が震えちゃった」
「国境軍とやらと対面じゃな」
ヴァクーはハッチを開けに降りて行った。
船の動力を切らず、最低限に落とし、すぐに飛び立てるようにしておく。
階段を下ろし、臨検を受け入れる準備ができたが、
全然、兵士が登ってくる気配がない。
ガーランドとアルインの船が降りてきて、
船から飛び出て階段を駆け上ってくる。
ナルは駆け寄り、
「アルインさんどうした?」
「すごく、待たされての・・」
「我慢出来んで、その・・あれだ
貸して欲しい。ズボンを・・」
それは、きつかったと思う。
後ろにガーランドも静かに立っていた。
「ガーランド・・・」
ゼネルはそれ以上言わず、シオンと階段を登って行った。
ガーランドの顔色が真っ青だった。
何も聞かない・・
サーリャがついてきてくれて、ズボンを選ぶ。
アルインにズボンを渡して、水浴び部屋に入ろうとしたが使用中になっていた。ガーランドが使っているのだろう。
サーリャは中に入って行き、ガーランドの着替えを洗濯すると言っている。
あとは自分でなんとか出来るというので、一階に降り兵士がくるのを待つ。
「冷えるのぅ」
ヴァクーが息をはく度に白い雲ができる。
「まだ、声が出せんのか?」
=声は出せるけど=
「フェッチガーベンドターラフェ」
「わざとやってるじゃろ」
やってないって。
呆れた顔をして動力室へ入って行った。
「あいつら絶対に殺す」
シオンのズボンを履いたガーランドが降りてくる。
お尻がパッツパツで留め金はきちんとハマっていない。
ゼネルは扇子で口を隠しているが、ガーランドを見て笑っているのだろう。
アルインも降りてきた。
頭を下げてばかりで何も言わず、ガーランドの横に座り頭をかかえた。
シオンは通路の壁にもたれかり座っていた。
もたれかかるようにナルは頭を寄せ目を閉じている。
シオン・・・
「なんだ?」
「痛みはどうじゃ?」
動力室から出てきたヴァクーはシオンの横に座る。
「ああ、痛みは治って・・ないが、だいぶマシになった」
鎧を見ると、右脇に大きなヒビが入っている。
「鎧、修理しようか?」
「いや、大丈夫。奴の斧を防ぐことはできなかった」
「そうだな、だが、俺の相棒もこのザマだ」
斧の刃先がひしゃげて、丸太すら割ることができない。
「その嬢ちゃんを守りながら、よくやったよ」
「俺の斧が・・・」
呟き、肩を落として壁に背中をつける。
「馬車の音がする。2台」
ナルは起き上がり、ハッチへ進む。
やばい。魔光弾の直撃は避けれたが、
爆発した領主の船の残骸が直撃して火災が発生した。
主要な機関には火は映っていないので飛行はできるようだ。
クレバーは離脱するしかないと言い船を国境側に向ける。
何隻か追ってくれば相手の戦力を削ることになるので火は消さないように燃やし続けた。
「何隻追ってきた?」
小さいブリッジの背面にハシゴがあり上部が半球形の窓がある。
頭を出せば周囲を一望できるが、煙で後ろが見れない。
「煙で見えない。消火する」
どこだ!?消火バルブ・・
ないぞ・・・
「消火ってどうする?」
「わからん」
「雲の中に入る方がいいのか?あれ、水蒸気だろ?」
それいいかも。
「任せる!」
「あの雲に入るぞ」
・・・
周囲が白くなった。と思ったらすぐに抜けた。
「次はあれだ!!雲」
・・・
すぐに抜けた・・・
「前!!前!!」
思わず叫んでしまった。
雲を抜けると目の前に城が浮いていた。




