自動で操縦
船を輸送船に密着させるように打ち込んだアンカーを固定するが風によって船が揺さぶられ、船体同士が擦れる音がひどい。
出来るだけ位置を固定しようとするが下が見えない分、操舵が難しい。
「機関は大丈夫だが動力パイプの劣化が早い」
ヴァクーがブリッジに戻ると小声で呟く。
「右側は絞った方がいい」
周囲を警戒しながら天窓を見上げる。
「もう少しの辛抱じゃ、守ってくれぃ」
クレバーの船が挟み込まれ追われている。
それを追うようにガーランドの派手な船が追走する。
火線が走る。遅れ出した敵船に命中して煙が吹き出した。
逃したもう一隻はアルイン爺さんが軽々と仕留める。
残敵は多くは無いだろう。
「これが終われば、島に戻って修理だ」
「あかい実を食べれるのか!?」
ヴァクーの顔が少し明るくなった気がした。
「あなた達大丈夫?」
どうやら戻ってきたようだ。サーリャがセインを引っ張りあげる声がする。
セインは何やらぶつぶつ呟いていて、シオンの声とナルの声もする。
ハッチを閉める音が通話機より聞こえ、ゼネルの声がする。誰と話している?
とにかく全員無事で安心した。
涙目になったナルがブリッジに飛び込んできて抱きついてきた。
ミウスの白いローブには汚れ、血の跡が見えた。
「・・・怖かった」
体の奥から震える感じがした。
「パッチ・・・傷だらけだね」
ん?そういえば、そうだった。
「ナルもだな」
サーリャがきて、ナルを抱きしめる。
「こんなに血だらけになって・・」
「どうせあなたなんでしょ?乗り込もうと言ったのは!!」
聞きにくいことをズバッと言うサーリャさん。
「確かめないとダメだったんだ」
サーリャとナルを見ていると、まるで親子だ。
「あったんだ。石が」
姫の暴走もあったが、ゼネルだ!あれが一番、暴走している。
「部屋に戻る?」
「みんながいるここがいい」
ナルはサーリャに抱えられ部屋の角に座り込む。
「姫の暴走は無駄ではなかったぞ」
「どうやら、各輸送船には大量の竜石が積まれている」
「意味することはわかるな」
「行き先はヴィデ・・」
部屋に入ってきたゼネルは早口だった。
「大量ってまさかアレか!!」
ぜネル以外は浮遊エルセンドラ、その場所にいた。
エルセンドラに起きた事は二度とごめんだ。
「あ〜・・・どこにいようが巻き込まれるって・・3度目は無いよなぁ」
ヴァクーは息を吐き兜を被り直す。
「捨てに行くかのぉ」
「ん?どうした捨てに行くんじゃ無いのか」
「アンカーでブリッジを潰せば簡単に落ちるのでは?」
「さすがパッチ!いい案じゃ!採用!!」
「そんなことをしなくても、下の船はすぐに落ちる」
扇子を下に指す。
「なんで?」
「自動操縦の設定を変えた」
「自動で操縦するじゃと?」
「ああ」
「便利だの。魔法ってやつじゃな?」
「見たことのないものを魔法とするな」
「何だ・・魔法じゃないんだ」
「魔法の定義がわからん」
「ゼネルは何でも知っておると思ってたがのぉ」
「私じゃない」
「傭兵にやらせた」
「傭兵?」
「二人拾った。あとで軽く尋問するつもりだ」
「ゼネルさん!その設定とやらは動いている?」
「当たり前だ」
やべえ、すでに船首が下がり湖に向けて降下している。
「それを、先に言ってくれ!!」
「ヴァクー!!!アンカー格納」
「パッチ!アンカーが動かねぇぞ」
船体に引っかかっているのだろう。
「もう一回、レバー下げて、上げて」
「動いた」
「どこへ?」
「見晴台」
扇子を叩きながらブリッジを出て行った。
ナルの行動は最悪の事態を防ぐ唯一の手段だったのだろうか。




