影との戦い
氷の中だよな・・
暗くてよくわからないが自分自身の反射する姿が壁の中や天井に写っているようだ。
月明かりもどれが本物なのかわからない。
テラスが崩れ滑り落ちた先には空間があった。ここは広場の下にある場所だ。
目が慣れてきて足元の床にどこかで見たような星図が描かれている。
二つの光星の周りを回る双子星とその外を回る星。
テ・・ラ・・ン星系と書かれている。
氷の壁の奥にも星図はあるようだが暗くて見えない。
黒い影が周囲を彷徨う。とても冷たく感じる。
近づいては遠ざかりこっちの出方を探っている感じがする。
「どうやら、本当に魔素の取り込める者がいるとは。何者?・・」
黒い影が氷の中から近づいてくる。
「あなたは?」
「私が見えるのか・・私など無に等しい存在だ」
俺の周囲の氷の中を高速で駆け抜け時々こちらを観察するかのように止まる。
「君は何処から来た・・」
するりと影が自分と重なる。
「記憶の封印がされているのか・・」
「ぐわっ!」
俺の手のひらから影に向けて教王の放った氷の槍の術のようなものが放たれ、影を串刺しにした。
「痛いじゃないか・・・どうやら、君の中にいるラーテは僕を嫌っているようだ」
氷の槍は煙のように蒸発して消えていった。
「どうして、僕のすることに対して嫌な顔をするんだい?ラーテ・・
久しぶりに会えたのに悲しいなぁ」
俺の腕に触ろうとした影に体が反応して一歩後ろに下がる。
影の手には氷の刃が握られていた。
「クックク・・腕を切り落としてラーナに見せればラーナの悲しむ顔を見れたのに」
不気味な笑い声が氷の至る所から聞こえてくる。
「あぁ・・君たちは無力すぎる。あの星のように壊れていくんだ」
黒い影は空の月明かりを見上げる。
氷にヒビが入り周囲の氷が崩れだす。
「ふふ・・時間がきたようだね。残念だけど、ここでお別れ」
声だけ残して影は消えていった。
神殿の氷塊に亀裂が走っていく。ものすごい音を立てながら・・
==ゼネル視点==
「おい!!何の音だ??」
突然の轟音が
「すぐに!脱出だ!!」
トンネルの側面にヒビが入り氷が落下してくる。
中にいた全員が出口へ駆け出す。
20mほど掘削したのですぐに全員退避することができたが、トンネルはすぐに塞がってしまった。
神殿の上部からの氷の塊の落下が激しくなったので街中まで下がり様子を見る。
神殿が崩れ始めると氷の隙間から青白い光が吹き出してきた。光は強くなり氷を飲み込む。
光は神殿を飲み込み空へ上がっていった。
周囲は悲鳴や地面に伏せるものが多かった。
光の柱が消えると、神殿はなかった。一瞬で氷塊も神殿も城壁も何もなくなってしまって周囲の人たちは呆然と立ち尽くしていた。
城門のあったところを通り神殿のあった場所は瓦礫すらないまっさらな状態だったが中央部に穴が空いておりそこには大の字で倒れているパッチがいた。
星図が描かれた床の上に血を流した状態で倒れていた。
急いで駆け降りパッチを揺さぶる。
心臓は動いているようだ。顔を殴って気合いを入れる。
「い・・痛い」
「パッチ!」
生きていた。
穴の淵には気が付けば大勢の人たちが見下ろしている。
「生きているぞ!」
声を出していた。嬉しい。




