教王戦
教王の術と槍技が素早く強い。
ゼネルの左肩から出血、メイド服は氷の刃でボロボロ。
俺も全身、擦り傷だらけになった。
囲まれるかと思っていたが二階は聖域らしく兵士の姿は無い。
氷の刃は一定方向へ発動する術のようでゼネルと俺で教王を挟み込む陣形になっている。
「おっさん!!」
声が周囲に響き渡る。
「おっさん?だと?」
教王の目元がピクピクと反射する。
「それは魔法か?」
「魔法?滅びた過去のものか。
そんな古いものと同じにするな!これは信仰による、真の神の力・・すなわち神の声なのだ」
手を強く握り天を仰ぐ。
「神の声を聞くことができるのか?」
「そうだ。君たちと見えているもの生きている世界が違うのだよ」
「確かに・・だから世界が荒れていくんだ」
ゼネルは肩にハンカチを当てているが赤くなっているので出血がひどいようだ。
杖先の宝石が一瞬輝く。
「あれは、真竜石だ・・少し、違うように見えるが」
ゼネルは呟く。
「ほお、流石、元皇帝・・・」
民衆からどよめきが湧き起こるのがわかった。
「まさか、あたりだとは幸運」
ゼネルは笑みを浮かべ飛び上がり壁を蹴って加速し教王に肉薄し、杖と扇子のかち合う金属音が響く。
「お前はこれを私から奪うつもりなのか?」
「今まで、幾つも破壊してきた。お前の石も壊す」
「石砕きがいると聞いていたが、お前のことか!」
教王はゼネルを睨みつけ、体から術を発動させた。
ゼネルは弾き飛ばされたが、踏ん張り扇子のいちまいを素早く投げ、教王の頬を掠めて、杖の先に刺さった。
頬の傷を触り手のひらについた血を見る。
「ふ、ふざけた奴め!どっちにしろここからは出られん!生きてな・・
神よ!こいつらを!!」
杖を振り上げる。
俺とゼネルの足元に氷が生成され足が固定された。
「動けまい」
上空に光が集まり、氷ができていく。
ぽろっ
その時、振り上げた杖から、宝石がころっと落ちて俺の足元に転がってきた。
氷の塊がだんだんと大きくなって止まらない。
「あれはどうなるんだ?」
すでに、警備船と同じ大きさまで成長している。
警備船は後退し氷の塊から遠ざかる。
「そ・・それを早く返せ!!」
教王は俺のそばにふらつきながら警戒心もなく来て手を伸ばした。
広場にいた人達はふと我に帰り、危険を感じ門の方へ逃げ出して収集がつかなくなっているようだ。
入り口の門付近には人が集まって身動きができない状態になっている。
宝石を返すと、ハメ直して杖を握り目をつぶる。
氷塊の成長は止まらない。
教王は次第に震え出して、地面に座り込み、杖が転がる。
「違う・・・俺ではない・・」
「何が違う?」
「俺の術では無い・・術が発動せん・・」
「あれを止める方法は?」
教王の胸元を掴み
「知らない・・」
ゼネルと目が合う。
「成長が止まらないってことか!?」
ドーン!
突然、振動と共に城壁に煙が上がる。
煙の中から城壁をこじ開けてきたのは前日城門にあった機械馬だ。
外から人が入ってきて神殿前にいた人々をこじ開けた穴へ誘導している。
氷の塊が神殿の壁に当たり、窓ガラスや外壁を破壊するようになった。
人がいなくなった広場に破片が落下し、
城壁の砲台から這い出るように兵士も逃げ出している。
「おっさん!!なんか無いのか!!」
すでに、力が抜け、放心状態になっていて、神を語っていた時とは別人のようになっていた。
「真竜石・・・あれの出どころは?」
ゼネルは教王の方を向いて叫んでいるが返事がない。
足が氷に食い込んで歩けない。ゼネルも扇子で氷を叩いているが同じように動けないみたいだ。
「おい!!何をやっている!!逃げるんだ!!」
兵士が来て肩をさする。
顔を見るとクレバーだった。
「ゼネルを頼む・・」
ドン!
下から突き上げる衝撃を受け足元が傾く。
眩しい光が目をくらました。金属の擦れると機械油の匂いがする。
機械馬がテラスの足を折ったのだった。傾き、床がひび割れて氷が割れる。
「早く!こっちだ!」
機械馬にはガーランドが乗っている。
クレバーはゼネルを抱えて機械馬に飛び移る。足元の氷が邪魔で飛ぶことができなかった。
俺と教王はそのままテラスごと地面に滑り落ちてしまった。
神殿の外壁が次々と降り注ぐ。
教王の腕が瓦礫から出ていて血が広がっていた。
空を見ると氷の塊が神殿を飲み込むくらいに成長している。
氷の塊の奥には壊れた月が見える。
神殿を飲み込みながらバキバキと破壊音が響き渡る。
すでに、テラスのあった場所が氷に飲み込まれていた。
機械馬に乗ったガーランドが見えるが氷で隔たれて、
このままだと、飲み込まれてしまう。
教王の杖が転がっている。
無意識に杖を掴んで氷を叩いていた。
割れるはずがない。次第に氷は白く曇ってきて松明の光も届かなく月の明かりがほんのりと照らすだけで、周囲は暗くなってしまった。




