神殿へ
ガーランドは昼食を食べ、やっと、宿から出ていった。
手下達が宿に押し寄せてきたのでゼネルが鬱陶しいと一括して追い払った。
結局、ゼネルとの濃厚な関係を持つことは出来なかったが耳を触らせてくれたことは嬉しいことだ。
扇子を手入れしているゼネルを見ていると不思議だ。小さな体から、放たれる力と素早さ。
扇子に見えるが、薄い刃物を何本も重ねているだけで投げることもできるし、鞭のようにつなげることもできるようだ。
ここに来る時に着ていた、干してある黒いローブを手に取り匂いを嗅いでいる。
臭かったようで着るのを諦めたようだ。
「そろそろ、神殿とやらにいってみるか!」
やっぱり行くのか・・
教王とやらはどんな人物か見てみないと分からないからいい機会だと自分に言い聞かせる。
一階に降りるとマナが床掃除していたので出かけることを伝え宿から出た。
通りには人が多く歩いていて、ほとんどの人は神殿方向へ進んでいた。
子供達も歩いていて、
なんで行くの?
行きたくない
と親に対して愚痴をこぼしていた。
「当番だからしょうがないんだ」
親も申し訳なさげに子供に言う。大人の都合で子供を巻き込むとは・・
神殿の上空には見えている範囲で警備船が四隻いる。
ゼネルの手をとり逸れないように進まなければいけないほどの人の多さになってきた。
城門は開かれていて、入り口に長い列が伸びている。持ち物を入り口で確認しているようで大混雑だ。
前に並んでいるお母さんに抱っこされた子供がゼネルの方に手を伸ばしてくる。ゼネルは手を握ったりして相手をしたり周りの子供達と睨み合いしたり時間を潰している。
ようやく順番が回ってきた頃、神殿の影に入り周囲は暗くなった。
兵士はお金を催促しているがほとんどの人は無視をして手荷物検査だけ受けている。
俺も、ゼネルも手ぶらなので渡すものがない。
「チッ」
兵士は諦めて俺たちをそのまま通す。
城門をくぐると奥には立派な神殿がそびえ手前には広い広場がある。
広場は奥に行くほど低くなっていて奥には大きな扉があり、扉の上にはテラスがあって色のついたガラスで装飾されている。
ここは、ちょうどいい位置でテラスの奥も見える場所だ。
神殿の鐘楼から不気味な鐘の音が長いこと響き渡る。
城壁上部には松明が揺れているので一定間隔で兵士が立ち並んでいるのだろうか。
「鎮まれ!!我が僕たち!!」
男の声が響き渡ると、人たちは皆同じように見上げてテラスを注目した。
テラスには篝火が炊かれていて、灰色のローブの男が手を広げていた。
周囲のざわめきが落ち着くまで、その手は下さない。
「これより、教王様のありがたいお言葉がある!!」
男は場所を開け少し後ろへ下がる。
人影がゆっくりと現れ、赤色のローブを纏い、白い髭がわずかに見え、周囲をゆっくりと見渡した。
銀色の杖の先端には翼のような飾りがついていて黄色の宝石が両羽で包んでいる。
杖を振るうと、風が周囲に発生して、篝火を消し、城壁の松明も消えてしまい、周囲は真っ暗になった。
周囲の人々は、風に飛ばさられないように身を屈めた。
城壁の上部で明かりが動いていて、徐々に周囲が明るくなっていく。
「神は、我に道をさし示した。
この苦難が続くこの時だからこそ、我と共に歩み、光ある未来を掴め!
そのためには、苦行となるが竜石を捧げよと・・」
杖を上に上げると、前列にいたローブの者達が讃える歌を歌い出した。
不気味な歌だったが途中で止まった。
突然のことで、いきなりローブの者達が神殿へ駆け込んでいった。
兵士達の動きも慌ただしくなった時、テラスからローブの男が広場へ落下した。
前列からどよめきが湧き起こる。
「異教徒が侵入したぞ!」
付近の兵士が騒いでいる。
また、テラスから二人落下した。
「何やつ?」
教王の手前を守る僧兵が剣を抜くが、叩き折られてテラスから落下。
長耳の・・ゼネルだ・・・




