夜間活動
結局、ガーランドは宿に泊まり、俺たちの部屋、俺たちのベッドを占領する。
ゼネルは廊下に放り出すかと思っていたが、ベッドで寝ることを許したのだ。
酒が入っていたのか、襲われることは無く、すぐに夢の世界に入ったようで、ガーランドのイビキだけがする静かな夜だった。
同じ長耳のゼネルとガーランドは姉妹のように仲良く寝ている。壁には、ガーランドの武器の鞭が架けられている。
ガーランドはムクっと起き上がり、周囲を見渡して、布団を被る。
ガーランドの足が上がり、ゼネルのお腹あたりに振り落とされる。
「うげっ!!」
ゼネルのうめき声がした。
ゼネルは目をこすり、お腹をさすりガーランドの方を見て、
何か呟き、ビンタをする。
そのまま、布団に潜り、すぐに吐息が聞こえ出した。
こいつら、無意識にやっているのか、わざとやっているのか普通の俺には理解できない。
怖いので、床に寝ることにした。
朝になるまで、同じようなことが何度かあって熟睡することはできなかった。
目覚めると、部屋ではない・・廊下だ・・ガーランドが俺の足を引っ張って、連れ去ろうとしていた所をゼネルが止めたようだ。
立ち上がり、部屋に入る時に、
パンッ!パンッ!
振り返ると、ゼネルは笑いながらガーランドの頬を叩いている。
「もちもちして叩き心地が気持ちがいい」
これが、往復ビンタっていうやつか・・
ガーランドの目には涙が溜まり、頬は赤く腫れてきいた。
窓を開けると涼しい風が吹き込んできた。廊下でゼネルとガーランドの声がするが何を言っているのか分からない。
ベットに寝転び、窓の外の空を眺める。
セイン、ヴァクー、サーリャは今、何をしているのだろう・・・
俺は、こんなところで何をしているんだ・・・
空には、白く光る砕けた月が輝いていた。
カリカリと耳障りな音がする。目覚めると、昼頃か・・
目の前には目を瞑って寝ているゼネルの顔がある。
耳を・・・触っても・・いいのか・・
ゴクリっ・・・
右腕はゼネルに掴まれているので左手を伸ばして耳を触る。
この感触・・・たまらない・・
柔らかくて溶けそうな感触。
根本から先っちょまで手を滑らせる。
「うぐぐぐ・・・!」
ゼネルの後ろから物音がした。
体を起こすと、ガーランドが自分のムチで腕と体を柱に括られて縛られていた。
カリカリ音は机の足を使ってロープを削っている音だった。
外から、笛の音色や鐘の音がする。
窓から覗くと、神官のようなローブを羽織った20人ほどの一団が行進してくる。
ミウスのような白いローブでは無く、燻んだ灰色で裾は汚れている。
すれ違う人たちは目を合わせないようにして、道を開けて関わりたくないような空気だ。
そのまま、街中へゆっくりと行進し消えていった。
ここから神殿の屋根が建物の間から少しだけ見ることができ、黄色い旗が揺れている。
「気になるのかい?」
俺は宗教には全く興味がなく、信仰心を持っていない
「誰も、月壊しには耳を傾けないさ」
ガーランドが体を寄せてきた。拘束状態から抜け出すことができたんだ。
月壊しか・・・ヴァクーも同じようなことを言っていた。
向かいの建物に目を移すと、こっちを見てる人たちがいることに気がついた。
真正面の建物の窓辺にいるのは、見たことのある爺さん、あれは・・・ガーランドの子分?手下だ・・
ガーランドは手を振り、小声で
「チレ!チレ!」
と言いながら、追い払う仕草を見せる。
窓をバタバタ閉めて、
あいつらは、ずっと向かいの建物からここを監視していたのか。




