村長の息子
クレバーはしばらく俯いていたが顔をあげ、目を細め、少し震えた口調で
「誰に、殺すように命じられた?ガーランドか?教王か?」
クレバーの周囲にいた手下は咄嗟に武器を構え殺気立つが、クレバーはやめるように手を伸ばした。
ゼネルは立ち上がり、スカートについた土をはらい落とし、俺の前に立ち以外にもムッとした表情を見せた。
クレバーとの戦いで地面に叩きつけられたことがこたえたのだろうか。唇を噛み締めている。
耳にかかった髪を後ろに流して撫でて整えてあげる。
「大丈夫・・・だよな」
目を見て頷く。
ゼネルはクレバーの方へ振り返り、
「殺しの依頼は受けていないし、あの女も関係ない」
続けて、
「探していた男がこんなに弱いとは、正直がっかりした」
手下達はボスがコケにされて殺気だつが、ボスは少し間を置いてから豪快に笑い出す。
「そうだな、お嬢ちゃんは片手での勝負だったからな。
その時点で、俺の負けだ」
手下はゼネルから距離を取るように離れる。
ゼネルはスカートを押さえながら戦っていた。
「そっちの兄貴の太刀さばきに油断し対応できなかった。歳は取りたくはないぜ」
クレバーは空を見上げ、深くため息をつき、
「それで、俺に何の用だ?」
「教王の行動や警備について知りたい。仕官したと聞くが」
「そんなのを知ってどうする」
「決まっているだろ?」
ゼネルは扇子を勢いよく閉じ、神殿の方向を指す。
「頂く」
まじか!そんなことに俺を巻き込むな。
クレバーと手下達はお互いに顔を合わせ、
「本気か!?」
ゼネルは扇子を広げ口を隠し、
「同じことは2度も言わない。対象の行動がわかれば、無駄足は防げる」
一瞬、周囲が暗くなった。警備船とそれを追う船が高速で上空を通過し風が吹き抜け、ゼネルのスカートを巻き上げた。
急いでスカートを押さえたが間に合わなかったようだ。
「ピンク色・・・」
クレバー達はつぶやいた。
神殿から発砲音が連続して響いた。
しばらく続き、遠いところで、船の落ちた音がした。
さらに発砲音が継続して、頭上を弾が空を裂くような音を出しながら抜けていく。
「ガーランドのやつめ!」
ガーランドは警備船を落とし、空を支配し、地上輸送を牛耳っている。
アジトかどうか分からなかったが、あの拠点にあったものは落とした船の残骸だったのか。
クレバーは煙が上がる空を見ながら、
「ガーランドが暴れるから、教王は神殿要塞の中に引きこもって出てこれない。警備は250ってところだ」
「砲台は?」
「神殿全周囲に沢山あり、全て対空用だが地上に目がけて発射もできる
奴らは見える範囲はどこでも狙えるってことだ」
「どんな人物か知りたいなら、明後日の夕べの神殿前集会に参加すればいい」
ゼネルの耳がピクリと反応した。
「集会とは?」
「行ったことはないが、教王のありがたいお言葉というものが聴けるらしい」
「それは、楽しみだ」
ゼネルは振り向き、来た道を戻ろうとした。
「なぜ、俺を探した?」
「カイ爺を知っているか・・」
「父さん・・・?
父にあったのか」
あの村長の息子か。
父親のことを思い出したのだろうか。真っ直ぐゼネルの方を見ている。
「パンド村と関わることがあってな、
領主によって、竜石が掘り起こされ、作物が育たなくなり、周りの村のように消滅しそうな状況だった。
爺さんは言っていた。誓いを忘れるな」
クレバーは少しよろけたように壁にもたれかかる。
「なんてこった・・俺は・・
ん?お前ら、運び屋か?船は来てないはずだが?」
「船は少し遠いところにある」
「確かに、騎士団に所属していた。
国王が亡くなられた後、息子のクラバールが改宗して教王となった時に、騎士団は解散したがな
それ以来、街の隅でコソコソやっていたら、今では、奴隷商人。堕ちたものだと自分でもわかっているが」
ゼネルはスカートの裾を持ち、軽く腰を落とす。
「では、失礼させていただきます。明後日の夕方、楽しみにしているが良い」
そのまま、ゼネルは来た道を引き返し歩き出す。
「神殿に突っ込んでも死ぬだけだぞ!」
クレバーは強い口調で声を張り上げた。
帰り道、僧兵の一団が急いで外へ向かって行った。墜落した船を捜索に行くのだろうか。
風呂屋に立ち寄り、男女別の風呂に入る。
ゼネルは渋ったが、ゆったりとして考えをまとめたいので男湯へ駆け込んだ。
湯船には葉っぱが浮かんでいていい匂いがする。
このまま行くと、ゼネルは本気で教王の座を狙いに行く。
砲弾の雨の中、兵士250人を突破して。
結局、何も、考えが浮かばなかった。
風呂屋から出ると、ゼネルはすでに風呂から上がり、マナの兄と話していた。
「遅いぞ!さあ、早く帰るぞ」
駆け寄ってきて腕を引っ張られる。
夜、ベットにゼネルが潜り込んできた。
「今日こそ愛し合おう」
「え?」
「もう一回言わせるのか」
布団の中で向き合ったゼネルが真面目な顔をしている。
「私の未は奪われたのだ!」
「え?」
「耳を何度も触らせただろ?」
「まだ、言わすか!」
ゼネルは俺の右腕を胸に当てる。
「暖かい。感じるぞ」
ゼネルは震えている?ゼネルの眼を見つめる。吸い込まれていくような綺麗な瞳だ。
この国に来てからゼネルの様子がおかしい。
くっそ、可愛い・・・ゴクリっ




