臭い仲
首都ヴィデは平地にあり、複数の壁に囲まれた要塞都市だ。
中心部には趣味の悪そうな豪華な神殿が立っていた。
「ここで体を洗いな!」
ゼネルに川に放り投げられ、馬のアレを洗い落とす。
ついでに、水を飲む。縄も少しだけ余裕が出てきて、外せそう。
逃げ出すことを考えなければならないのに、空腹で、頭が回らない。
外城門に着くと入り口で積荷の確認をしているので、列が伸びている。
列の前後は以上に間隔が空いている。
「あいつら、臭い」
ようやく順番がやってくると、ゼネルは賄賂を渡す。
ここでも、兵士は近くによってこない。
確認は他の人よりかなり早く終わった。
真っ直ぐ伸びる石畳の道の先には立派な神殿が見える。
道沿いは綺麗な建物が多いが、歩いている人は少ない。
一つ隣の道は土埃が立つような場所で、こちらの方が歩いている人が多い。
ゼネルの足が速くなった。
広場に柵に入れられた獣人や男女、動物、魔獣などが並べられている。
あれが、奴隷市場か。少し変な匂いがするが、俺も同じだ。
路地に引き摺られながら入っていく。
曲がり角を曲がっていきなり、馬から降りたゼネルが飛びついてきて、唇を重ねる。かなり長い。
「許して・・」
縄は切られて、腕が自由になった。
ゼネルを突き離し、両肩を握る。
「何を?」
涙目になっている。
馬のアレまみれになり、涙を堪えてここまできた。
「今までのこと・・・
強引すぎたよね」
抱きついて離れない。臭い・・・・
泣いているのか?
「ずるいぞ!!」
突然のことだったので、言い返せなかった。
港が見えてきたが船の停泊場所は、ほとんど使われていない。数隻、警備船が泊まっているだけの状態だ。
港の周りには宿屋や風呂屋があるはずなので探す。
ゼネルは手を離そうとはしない。
ギルドの建物があるが、ドアが外れていて中は荒れていた。
広場に出ると、石造りで高い煙突から煙が出ている、風呂屋だ。
「あんたら、臭いな」
入り口にいる男は鼻をつまんで距離を取ろうとする。
「専用風呂にするか?男女別風呂にするか?」
「専用で!」
支払いはこの男に渡す仕組みのようで、一人銅貨三枚だという。
ゼネルは銅貨十枚を男に渡した。
「馬をお願いしたい」
「二階の二番風呂を使ってくれ!」
腰にかけた鍵を渡される。
馬を預け、階段を登る。
鍵を開けて入ると湯気の上がるお風呂が目の前にあった。天井から、水が雨のように流れる場所があるので馬のアレを流すことが出来そうだ。
ゼネルは服を脱いで風呂へ駆け込み、体を洗う。
バシャン!
お風呂に飛び込み、
「あ〜気持ちいい!」
浮かんで大の字になっている。
胸が・・あまり無い・・服を着ているゼネルは確か、膨らみはあったのだが・・。さては、この服・・・やっぱり。
「バレてしまったか、
だが、隠していたわけではない!盛っただけ!」
かがみながら体を洗う。デトウドの樹液の匂いがする。
ゼネルの隣に入る。葉っぱが浮いていて、いい香りがする。
「もう、あんなこと、しないでほしい。
ゼネルが何を考えているのか分からなかったし、
売られると本気に思った」
ゼネルは背中にくっつき、
「演技は、バレるもの・・・役者じゃないから・・」
腕を胸に持ってくる。
「そうかもしれないが・・」
「奴隷商として振る舞い、溶け込むのが確実だった」
縛られた縄の跡が赤くなっていて痛くて痒い。
ゼネルは顔を覗き込んできた。
「顔色悪いね」
そりゃ、何も食べてないし、歩かされてクタクタだからな。
「こっちは元気ね」
ゼネルは下を向いている。
耳をつまみ視線を変え目を見て、
「俺の、本!」
落とした本のことを聞いてみる。
「本?あぁ・・あの袋のことか?」
「どうした?」
「その場に置いてきた」
「なんだと!」
耳を引っ張り、
「俺の世界長耳美人100号が・・・」
グリグリ振り回す。いつもは、すぐに仕返しが来るはずだが、おとなしい。
「痛いよ・・やめろ!
本より、ここに美人いるだろ!本物を見ていいぞ」
腕を広げ胸を前に突き出して強調している。
ガーランドはありすぎだが、サーリャくらいが丁度いい大きさだ。
脱いだ服を桶に入れて洗濯する。
ゼネルのローブは触り心地が良い。いい生地を使っているのだろう。
さらに、触り心地の良いものが・・紫色の下着だ。
これは・・・紫大蛛の系。
浮遊島の断崖に生息する蛛で、縦糸だけを使って生地にしたものだ。
馬の匂いが消えたか確認してみる。
デトウドの香りの中に臭い匂いがまだする。
後ろから叩かれ、下着を取られた。
「匂いを嗅ぐな!」
顔を真っ赤にして怒っていた。
洗濯物を箱の中に入れて手で回すと、水が出てくる。
出てこなくなるまで回し続けて箱から取り出す。
湿っているがこれを着るしかない。
お互いに匂いを嗅ぎ合う。
「やっぱり臭い・・」
デトウドの香りの中に潜む馬のアレの匂い。




