ゼネルの頼み事2
眼下の渓谷を流れる川を三日、下ると首都ヴィデがある。
陸路だと二日、早馬だと一日の距離。
ゼネルは馬を借りて向かうつもりのようだ。
蔵を乗せているゼネルに近づく。
「荷物は?」
荷物は馬に乗せている長い縄しか見当たらない。
「自給自足するに決まっている。金貨は少し持っていくけど」
「何をしに行くのかわからないが・・気をつけて」
「ん?」
こっちを見ている。
「首都へ私と行くぞ!」
え?なんで?
ナルとサーリャも驚いている。
「え?一人で行くんじゃなかったの?」
ナルは驚いている。
「行くって話じゃなかったよね!」
サーリャが声を荒げる。
「パッチ・・パルマだけ来て欲しい」
「いやです」
嫌なことは、はっきりと断ろう。
「私、一人で行けというの?」
「一人で行った方が安全でしょう?」
「確かにそうだが」
扇子で口を隠す。
「わかった・・もう少し考えてみよう」
ゼネルは馬を引いて、洞窟の奥へ歩いていくが振り返り。
「そういえば、ロイックが今後のことを聞きたいと」
「忘れていた。まだ、話をしていなかった」
「パルマ兄!」
馬車から声がする。
「ん?宿屋のとこの・・・名前忘れた」
「オグだよ!悲しいぜ」
馬車から飛び降りた男が目の前に背伸びして立つ。
「あのチビがこんなに大きくな・・ってないな?」
「チビって言うなよ。いつか見下ろす日、楽しみだぜ」
「うぉ!
こちらのお姉さん達は?」
「お仲間ですか・・」
ナルに駆け寄り手を握り、
「私、上の村の宿屋の息子オグです!
来年、成人します」
「美人さんで・・・」
デレデレした顔。
ナルは突然のことでびっくりしている。
「オグ!女の子の手を握らない!」
オグは俺の後ろに隠れる。
馬車から女の子が降りてきた。
「お久しぶりです」
軽くスカートの裾を持ち上げてお辞儀をする。
「薬屋の娘さん?マイナ!」
「覚えていていただいて嬉しいです」
オグの腕を引き寄せ、足を踏む。
「チッ・・・女の名前は覚えているんだな」
「早く、水を汲んで戻らないと、また怒られるわよ!」
オグは馬車に引っ張られていく。
「そうそう!マーラ婆さんの店に本」
御者台からそっと呟く。
「驚くな!もうある」
袋を見せる。
「流石、仕事が早いぜ!!!」
「宿は、俺の所!よろしくだぜ!」
鞭を打って馬を走らせた。
マイナは荷台で手を振っていたので、振り返した。
「明るい方ですね」
「最初は、みんな、暗い顔をしていたんだけどね」
船の前でロイックが村人の前で話をしている。
「連絡路を使って、できるだけ遠い村へ干魚や干肉と一緒に種や石を届けてほしい」
「船を見れば分かるかと思うが、ここに立ち寄ってくれた、パルマだ!」
ほとんど、顔馴染みだ。
握手を交わす。
「これから物資を分けるので、各村で必要なものは申し出て欲しい」
「この粉はなんですか?」
女性が瓶に入った白い粉を見てロイックに質問している。
「俺も初めて見るぜ」
「パルマ!これなんだ?」
「ごめん!俺も分からない!」
「それは、粉ミルク。赤ちゃんに飲ませるものよ」
ナルが答える。
「ミルク!?」
ロイックが胸を押える。
「動物から頂いたものを粉にしたものよ。
お湯と混ぜればミルクになるの」
サーリャが補足する
「最初は少しだけ、飲ませて、時間を空けて大丈夫だったら飲ませる」
「外の国には便利なものあるんだね。
乳が出ない時、助かるわ」
女性は興味があるように瓶を見つめている。
サーリャとナルは村人から
物資について質問を受けているのでゼネルを探す。
村の出口で馬の横で地図を広げている。
「どうする?」
「私を心配してくれて・・・、ついてきてくれるのか?」
「いや、人のこと言えないけど、もっと考えて行動しないと」
「今が、その時なんだ!」
「分かるように教えて欲しい」
「国が滅亡時に多くの国民が死ぬ。
まだ、安定を保っている今、変える最後の時なんだ」
「いくつかの国を滅ぼした私が言うのだぞ?」
皇帝をやっていたんだ。見抜く目を持っているのは間違いないと思うが。
「とにかく、私は行く」
村の外へ馬を引き始めたが、足を止め、
「少し、ここにいてほしい。忘れ物をした」
ゼネルは船へ走って行った。
村の外へ続く道は森の中へ消えていく。
稜線奥に見える山を越えれば首都ヴィデだ。
「お待たせ!」
振り返るとゼネルがいた。なぜか笑顔。
腹に一撃
油断した。
手に持っていた袋が床に落ちる・・




