本は知識
一人で外に出る。外は薄暗く、ジメジメした空気が流れている。
桟橋を渡り、周囲を見る。大きく口を開けた洞窟に荷物や道具、馬車がそのまま置かれている。
木の枠組みで出来た家の残骸や壁をくり抜いて作った倉庫など、
誰かがいた形跡はある。
「おーい」
洞窟に声が木霊するが返事がない・・
「ロイック・レスタール!!レイラン!!」
返事がない・・
だが、息遣いがする。
「パルマ・アーベナ?」
物陰から人の頭がひょっこり出て、びっくりしたが、見覚えのある顔だ。
「おいおい!何年振りか?」
よいっしょと男が立ち上がった。全身毛皮を纏った男だ。
「お邪魔して大丈夫か?」
「ここまで、くる奴なんてもういない」
「少し、物資を持ってきたが必要だったら」
「悪いが今、金が無い」
「代わりに、しばらく、ここにいてもいいか?」
「厄介ごと起こさなければな」
周囲から人の姿が。
「人少なくなったな。レイランは?」
「村に戻っている。ここに住んでいた多く者が、産まれた街や村が心配で帰った。
今、この国、やばいからな〜」
「今では密輸するもんなんて、ここに回ってこなくなっちまったぜ。
小さい村だが、残った者を俺がまとめている」
桟橋を渡りながら、
「この船に、まさか、会えるとは思ってなかったぜ。
相変わらず、焦げ臭い船だな」
「高いところ飛んできたからね」
ブリッジハッチを開けてなかに入る。
サーリャと目が合ったようだ。
ロイックの顔が赤くなり振り返る。
「畜生!パルマ!お前、けっ結婚したのか!?」
肩を強く掴まれて揺さぶる。
ゼネル、ナル、セイン。
「いやいや!なぜそうなる!」
「パルマ?」
サーリャが服を引っ張って聞いてくる。
「ここでは、パルマっていう名前なの?」
ナルも顔を覗き込んでくる。
「あれ?パルマ・アーベナじゃなかったけ?まあ、いいけど・・
悪い!悪いな!こいつ、長耳好きだからつい!」
余計なことを言わなくていい。
「長耳好きなの?」
ナルはサーリャとゼネルを見る。
物資を見せると、
「ここ最近、魚と獣だけで食い繋いできた。野菜はありがたい」
「種子はと肉は近くの村に配るよ」
住人達が崖沿いの道を通ってやってきた。
セインは貨物室から物資をクレーンを使って運び出している。
ロイックとゼネルは話し合っている。首都ヴィデへの行き方を知りたいようだ。
「おや、パルマさんじゃないかい」
この村で書店を営んでいるお婆さんだ。
「元気そうでよかった」
サーリャを見て、
「ついに結婚したのかい?」
「まだ」
「あの本はもういらないか・・・」
寂しそうに呟く。
「本?」
あっ、あれか!
「お婆さ・・・お姉さん、ちょっと・・・」
「なんじゃ?」
二人で少し遠いところに移動する。
周りを確認して、
「もしかして、世界長耳美人?」
「そう!しかも・・・記念100号じゃ!」
「買います!」
「そうくると思って、わざわざ歩いてきたんじゃよ」
「待ってて、お金持ってくるよ。王国鱗、金貨どっちがいい?」
「鱗でいいよ。街道でつかまえた行商人が最近、鱗の価値が高くなったって言ってたから」
「船から持ってくるから、待ってて!!あっ、魔法の本って知らない?」
「魔法?知らないねえ」
サーリャ達に書店に行ってくると言って、船に戻り財布を取りに戻った。
「私たちも、行くよ」
ナルとサーリャもいくことになった。
「お姉さん・・あの・・」
「わかっておる!包んで渡すよ!」
さすが!わかってくれている。
桟橋のある広場から離れた崖っぷちのくりぬいた道をしばらく進むと、谷を跨いで橋の上に住居が並ぶ。橋は木材でできている。
入り口は藁でドアが作られていて山からの乾燥した風が入ってくるので中はカラッとしていた。
壁に大量の本がある。
ナルとサーリャはいろんな本に目を奪われている。
例の本を手に取り中身を確認する。
「いい本だろう?」
黒鱗をそっと一枚置く。
「これは貰いすぎじゃ!」
「今度、またいつ来れるかわからないから、その時用で!」
「わかった」
包んでいる間に他の本を眺める。
「此れは!?」
世界尻尾美人40号!!!!
「こ・・れも」
「あんな可愛い子がいるのに必要なのかい?」
「いいから!!」
「わかったよ!急がせんといてよ」
これ、欲しいです!
どれどれ?サーリャは・・
基礎護身術
顔を赤くして、
「みんなに喜んでもらいたいし・・」
どれどれ?ナルは・・・
安心育児
顔を赤くして、
「ぱ・トュリスにいいなと思って」
お婆さんが
「お代はパルマから貰った黒鱗で十分だよ」
サーリャとナルは他に並んでいる本を見ている。
本を受け取り袋に入れてお婆さんにお礼を言って書店から出た。
崖の間から日が差し込み、暖かい。
船の前には物資が下されていて、馬車に積み込みも始まっていた。
しまった・・・どの本がどれだっけ・・・
大きさが同じだった。確率は二分の一・・・




