帝国の魔光弾
河口を越えて、バルフェリアの領土から抜け出した。
前方にある雲の間の海上に、航行灯が見える。
単眼鏡で確認してみると、見たことのない形だ。周囲にも大型船が集まっているが中心にいる船は巨大だ。
「バルフェリアの水上船?」
船に詳しい、セインに単眼鏡を渡して聞いてみる。
「見たことのない船だ」
ゼネルも覗き込む。
「珍しい・・・・帝国の船がいるとは」
倍率のつまみを回しながら、
「あれには、気をつけた方がいい。暗くて見えにくいが、見かけは輸送船、だが重武装で、空中戦艦ほどの火力がある」
「そんなものが、ここにいるのか。近づかない方がいいか」
セインは頷いている。
「こっちに気がついたみたいだ」
航行灯が消えた。
進路を変えて距離をとる。
「航行灯を消すってことは、見られたくないという意思があるんだろ」
「密輸?」
密輸組織だと、化け物がいる海での取引はしないはずで、もっとコソコソするから違うと思うが。
「帝国船から何かが発進したよ」
トュリスが指を刺している。こんなに暗いのによく見える。
ゼネルは単眼鏡で細部を見ていた。
「バルフェリアの警備船に見える。左後から上がってくる。二隻だ」
ヴァクーは見晴台へ走る。
「こっちの方が高度は高い、有利」
「とは、言えん!」
「もう同じ高度に到達した!」
「なんで!」
動力のレバーを押し込む。時間を稼ぐ。
「エネルギーを与えることで、船を加速して射出する装置がついている」
「船に詳しいな。ゼネルさん!」
「それって!反則!」
左に舵をとり、回避運動に入る。
船体の右を火薬弾の火線が走る。
「危ない」
翼を少し広げ、左旋回しながら急減速をすると、
敵は追い抜いていき、左右に分かれる。
加速して右の船の後方につけ、追尾する。敵は左方向へ逃げに入る。
「武器は?」
ゼネルはブリッジを見渡す。
「体当たりか、煙幕しか・・」
「アンカーで狙える?」
「動きが速い無理!!」
セインは首を振る。
前の船はこっちの速度を落とそうと旋回をきつくしている。
「左後ろの船が後方に回り込もうとしているぞ!」
右に舵を切って海面向けて降下する。
左後ろの船は諦めたようで引き返していった。
もう一隻の方は、まだ速度を維持していて、一撃の機会を探っている状態だが徐々に引き離している。
見晴台からの通話機で声が響く。
「おいおいおい!!青い光るものが二つ接近!」
「魔光弾だ!」
「「「魔光弾!?」」」
「追尾する砲弾だ」
「そんなの!!反則!」
「船まで1000!!どんどん近寄ってくるぞい!」
見晴台のヴァクーは叫ぶ!
「どこかにつかまっていてくれ!」
左前に浮遊島があったはず、進路を変える。
「逃げる」
「700くらいじゃ!何とかせい!」
「鳴煙幕!!」
セインはボタンを押す。
「目が痛くなるけど我慢して!」
船の後方に煙幕が展開された。
「い・今は、青い光は見えない」
煙幕の放出は止まった。
「「「目が痒い・・」」」
青い光が煙幕を避けて影から飛び出してきた。
「うお!まだ、いた!!!」
「ご500!!船まで500!!」
「もう一つの動力は、まだか?」
ヴァクーは焦っている。
「敵船から見れない、あの島影へ!」
ゼネルは浮島を指さす。
「ザザザ300くらいだ!弾!早いぞ!?」
島の岩肌や木が側面を流れていく。
敵から見えない影部分に逃げ込むと、追跡していた弾は光を失い海上へ落ちていった。
「あれは、何なんだ?一体!」
「対竜戦用の武器だからな。竜より速いはずだ」
帝国の技術はどの国よりも進んでいるのか?
発射した敵は、追跡を諦めたようだ。
「あの弾、空中戦艦から発射されたものに似ていたの」
ブリッジに戻ってきたヴァクーは髭を触りながら呟く。セインも頷いている。
「あれは、帝国の兵器だ。ウインザードには無いものだぞ!」
「実際に俺たち見ているからのぅ」
ゼネルは首を傾け考え込む。
「今回は、バルフェリア船からの発射だぜ」
単眼鏡で周囲を見ながらシオンは話す。
「空中戦艦の武装は、管理する侯爵によって勝手に変更できないことになっているはず。
あのような武器を搭載したという報告はない」
「私も、魔光弾を初めて見ました」
外を見ていたナルは振り返る。
ん?ランタンに照らされたナル・・シオンの目が赤いぞ?
セインはトュリスの顔を覗き込む。
「大丈夫かい?・・・」
「痒い・・」
四人はブリッジを出ていった。
計器が動き出す。もう一つの動力が始動した。
「やれやれだぜ」
ヴァクーは見晴台へ戻って行った。
島陰に潜んでいるかもしれない。船を大きく蛇行させながら高度を上げて、注意する。
「これ以上、高度上げると酒が・・」
見晴台からぼやきが聞こえる。




