パンドの村
ハッチを開いて、階段を下す。
歳を取った男が一人近づいてきた。
「わしは、このパンド村の長をやっているカイです」
「ギルドより物資と白蜘蛛の生地を交換する依頼を受けてやってきました」
握手をする。
依頼書は後で領主の者が持ってくるというので先に生地を搬入する。
船の貨物室の天井が開く音がする。船のクレーンで箱を下ろす。
「検査が終わったら、この中に、生地を入れてください」
サーリャが村人の前で説明する。
村人たちは次々とサーリャの前に生地を持ってくる。
品質を確認しながら、村人は箱の中に丁寧に入れていく。
村長が畑を見てほしいというのでゼネルを連れて向かう。
ここらは、王国時代に砂地だった場所に竜石を混ぜることで、作付ができるように改良した土地だったのだが、
宗教国家となった時に、畑の竜石を全て持っていかれた影響で、土地が痩せて、砂地に戻ろうとしている。
「この通り、実がなっていない」
村長は枯れかかっている植物を抜いて見せてくれた。
思いついたようにゼネルは雑草をむしりながら、
「芋はどう?」
「芋も試した、芽は出たが、全く成長しないのです」
「それは、困ったな」
土を握って感触を見ている。
「物資の中に、竜石が含まれていた。それを使えれば」
遠くに、砂埃が見える。
「あれは、領主の兵隊じゃ・・」
船に戻ることにした。
織物が入った箱をクレーンで吊り上げて船に搬入する。
規定量より少し多めの生地があった。
物資を貨物室から広場へ下ろす作業に入る。
その時、馬車5台と兵士7人がやってきた。
村人をかき分けて、船に乗り込もうとした。
シオンは兵士を止める。
ギルド依頼で来たことを伝える。
「そんなことは、わかっている」
依頼書に添付していた写しと照合させ、確認できたので、降ろした物資へ案内する。
「こんなに早く来やがって!朝から仕事させるな!!」
兵士が文句や舌打ちをして不機嫌さをひけらかす。
「積荷を馬車へ運べ」
村人を使って物資を馬車に乗せ換えている。
「竜石みつけたぜ」
兵士の一人が箱の中から竜石を手に取る。
こっちを見ていた村長が、兵士のすきをついて、
「やつらは・・」
「我々には、何も残してくれんのじゃ」
「こら!ジジイ!近寄るんじゃねぇ!」
村長を突き飛ばす。
ヴァクーは村長を支えて、
シオンが剣に手をかけるが、その手をおさえる。
「この箱が最後でございます」
兵隊たちは、馬車に積まれた物資を見て満足しているようだ。
馬車に最後の箱を乗せる。
馬車に乗り込む兵士に、書類の確認サインをもらいながら聞いてみる。
「全部持っていくのですか?この村には?」
兵隊たちは辺りを見渡して、
「その辺りの根でも食べてればいいだろ?」
笑いながら言う。
「竜石を少しでも、置いていけないのですか?」
「ダメだ!これは教王様によって管理されるものだ。それに高くう・」
「高く何ですか?」
面倒くさそうにサインする。書いてくれるだけまともと思いたい。
馬車の中で食料を食べている奴もいる。
「この村に用は無いだろ?済んだらさっさと早く帰りな!」
兵隊たちは笑いながら、住民には何も配らずに馬車を走らす。
「持ち込んでも、結局は上層部だけが潤うってことか」
悔しそうにシオンがつぶやく。
「抑えてくれて、助かったよ」
シオンの肩に手を置くと、剣から手を離した。
住民たちは落胆して各家に戻っていった。
「すまないね、この村、国は、この有様じゃ」
村長がすれ違う村人に挨拶をしながら呟いた。
「まあ、村長・・ついてきて」
船の2階の奥の部屋に案内してドアを開ける。
中には物資が詰まっている。竜石と種子と食料だ。馬車1台分あるかどうかだ。
長老は固まる。
「まだあるんだ」
「秘密ね!」
「なんで、あるの?」
驚いているのはサーリャだ。
「ちょっとした技を使った」
「少しずつ抜いたんじゃ」
ヴァクーは根っこを齧りながら箱の蓋を開ける。
「足りなくて戻ってこない?」
「あいつら、あの中から盗むから大丈夫でしょ?
サイン貰ったし」
サーリャに兵達のサインを見せる。
「あ〜わっるい人」
嬉しそうな表情で、おでこを突かれる。




