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ドラゴンルート  作者: 56GEN


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夜間飛行

哨戒網の緩くなる時間帯、早朝に目的地に着くために夕方に出発することにした。

他の船長達も嫌がる国で、無理についてくる必要は無い。

最悪、拘束される可能性もあるので各自の判断に任せた。

馬車を呼んでジオの館へ向かう。

屋敷内は子供達の声で騒がしい。

「おかえりなさいませ」

執事のジェイクにケイラの部屋を案内してもらう。部屋の前にはライリスが椅子に座っていた。

ライリスと軽く挨拶を交わす。

「旦那様がお戻りになりました」

部屋をノックすると。

「どうぞ!」

中から、ケイラの声がする。

慣れない。

ライリスがドアを開けてくれて、中に入室する。

二人の女性が頭を下げている。

ケイラとアリナだった。

顔を上げたアリナは驚いた表情になった。

「話中だったね。ごめん!突然来てしまって・・」

二人に座ってもらう。

「いえいえ、朝の宿屋での話を、前向きに検討いただけると」

ケイラの隣に座る。

「それは、良かったよ。ありがとう」


「いえ・・いいお話だったもので」

俯き加減で目を合わす。

メイドさんが入ってきて飲み物を出してくれた。

「ありがとう」

口をつけると酸味のある美味しいものだった。

「妹さんにも相談した?」

「はい、交代時に、相談しまして、その・・早く伝えたくて・・」

緊張しているのかな。

「移転するのにも、人手が必要になるから、その時は、手伝うよ」

「何もかも、ありがとうございます」

真っ直ぐ目を見てお礼を言われる。


「話の途中でごめん、ギルドの要請で、

ちょっとの間、バルフェリアへ行ってくるよ」

「え?どういうことでしょうか」

ケイラは怒っているようだ。ギルドでの経緯をざっくり話す。

「事情はわかったのですが、いい?領主としての・・

・・・ないよね」

呆れた表情を見せる。

話を切り上げて、部屋から逃げるように、

「あ・・・」

声が聞こえたが、ドアを急いで閉めた。


ジェイクが待っていたので、バルフェリアに行ってくることを伝える。

目を丸くした。

ギルドの船が損害を受けたという話をしながら、馬車へ向かう。

「かしこまりました。費用については、ケイラ様とギルドと協議しておきます」

見送りに呼びそうだったので、そういうのは遠慮してもらった。


馬車の前にはシオンがいてドアを開けてくれた。

ジェイクとメイドさんにケイラを頼んで、出発する。


「二人だけの見送りは寂しいな」

貴族はそうなのか・・・ジェイクに悪いことをしたかな。

「二人の見送りで十分」

「ケイラに領主の自覚がないと怒られてきた」

「そりゃ、そうさ・・」

シオンは港を見ながら呟く。

ここからは、街を一望でき、船も見える。


港に入り、ギルド職員から積荷リストと依頼書をもらって確認する。


積荷がきちんと貨物室にあるかを確認する。

サーリャが手伝ってくれるので仕事が早い。

「大丈夫!積荷の数は合っているわよ」

箱を一つ一つ開けて数を確認していた。

「この酒樽、このまま、ここに置いておくと危険だよ」

確かにそうだな。



動力の状態はいい感じに動いてる。

「いつでも行けるぞ!」

「酒樽、あの場所は危険だから、他の場所にしよう」

「そうだな、考えておく」

「とりあえず、飲んで消せばいい」

ゼネルがヴァクーに詰め寄る。


ギルド職員に確認サインを書いて渡す。

「気をつけて!」


階段を上げて船に収納してハッチを閉じる。

船が早く飛びたそうな感じで震えている。


ナルが操縦を持つ。

シオンは辞めさせようとしているがナルは譲らない。


「アンカー格納!いつでもどうぞ!」

セインは、いつでも行けると言っている。


「ナルの判断で飛ばして」

「わかった」

シオンの顔がムッとなる。

船はゆっくりと上昇して、加速し始める。

「半島先端の灯台を通過後、方位240、高度3250」

半島の崎にある白い灯台を指差す。

日が落ちかけているので、航行ランタンを灯す。

セインとトュリスはナルの次に舵を持つので部屋に帰って寝る。

セインはどこで寝ているのか?まあ、いいか。

机には地図とコンパスを置いておく。ここからは海上なので星が目印となる。

雲ひとつない空は風に流されやすいので時々、方位の修正が必要だ。


測位して地図に軌跡を書き込む。

「明日の朝には海岸線を越えれる」

夜間飛行は熟練者でも難しく避ける傾向がある。

暗い空が危険を呼んでしまう。

「侯爵!」

「姫に操船を教えて何をするつもりだ?」


「そ・・そうだな」

「私、やりたいの。

私!もう姫ではないのよ」


「シオンにも、操縦、教えてあげましょうよ!」

「いや、こういうのは苦手でさ・・」

「おっ、灯りだ」

シオンは話をそらした。

単眼鏡で左下の灯を見る。巨大な海上輸送船だった。

海獣が出るので大きな船でないと海は渡れない。

黄色の灯なので通常航行中ってことだ。

「方位260へ」

船が少し左に引っ張られる。左側に雲が見える。低気圧があるのか。



「疲れたでしょ?交代の時間だ」

「え?でも・・」

「夜飛行は思った以上に疲れるんだ。しっかり休んで、明日もお願いね」

ナルの腕は緊張していたようで張っていた。

「緊張して・・疲れた」

シオンは座って壁にもたれ下を向いている。

静かだと思ったら寝ていた。

ナルをセインのハンモックに寝かせる。

「頑張ったな」

「おやすみ」

毛布をかけてあげる。

すぐ吐息が聞こえた。疲れてたんだな。


シオンにも毛布を投げる。

「姫には優しく!私には雑だな!」

起きていたのか!

「シオンもありがとうね」

「なあに・・」


船を優しくゆすって、高度柱や速度柱の動作確認をする。

星の位置を測定して、現在地を書き込む。


「今ここにいるのが不思議な感じだよ」

突然、シオンが話し出した。

「駅で取り逃した男さ」

「あれで、上から、謹慎処分を命じられたの」

「え?そうだったの?」

「その時の結果で判断を下す人がいるのさ」

「厳しいな」

「姫のおかげで、護衛勤務をさせてもらっているが、どうなるやら・・」

ナルの毛布を丁寧に掛け直す。


小さい浮遊島が見えてきた。ほとんどの浮遊島は高度4000〜になるので、3000〜を飛行すると衝突する可能性は小さくなる。

船乗りたちは、向きによって高度をずらして飛行する。

海上に黄色い灯りが見える。灯台だ。

予定通りの航路を飛んでいる。


「お疲れ!!」

サーリャが顔を出す。暗くてよく見えないが、目の下が腫れている感じがする。

「眠れないの?」

「うん・・」

サーリャに毛布を渡す。

「ありがとう」

「月が綺麗ね」

海に壊れた月が反射して二つの月があるように見える。

後ろを通って、シオンの隣に座り、毛布にくるまる。

「あの二人、朝まで騒ぐ気?」

ヴァクーとゼネルの声が微かに聞こえてくる。

貨物室に置いてあるヴァクー製の酒樽の所で、試飲会をしているのだ。


「飲んだ方が眠れる?」

酒の力を勧めてみる。

「いいわ、ここにいる」


「夜も、普通に飛ばせるのね」

「速度は遅くなるけどね」

シオンにもたれかかり、安心したのか、すぐに寝息が聞こえた。


予定通り、次の空中灯台が見えてきた。

海上の中間地点だ。王国の管理区域はこの灯台までとなっている。

ここから先は少し、航路を外れ北寄りに変える。

少し経って、セインとトュリスがやってきた。仲が良いもんだ。

「船長、ごめん!遅くなった」

「いや、いいよ」

地図を見ながら、この先の航路を伝えておく。

セインは計器の確認をしている。

「予定通りだ」

トュリスが舵を持つようだ。

「後は任せた」

航行ランタンに油を補充してブリッジから出る。


貨物室に立ち寄ると、ヴァクーとゼネルが床で寝ている。

ゆすっても起きない。ここは寒いのに・・

叩くと二人は起きて、

「もう、ついたのか?」

「まだ、中間地点を過ぎた辺り」

「あっそう」

二人はすぐ寝るので、ゼネルを引っ張って貨物室から出す。

「引っ張るでない!お尻が痛いわ!」

ゼネルは起きてぶつぶつ文句を言いながら階段を登っていく。

ヴァクーを蹴飛ばして、無理やり起こす。

「え???」

目をぱっちりさせて周囲を見渡している。

「物資の一部の移動する」

「今から?」

「おう」

「まじか・・」


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