シオン星の歌
宿屋を見つけた。ここが、満室だったら、王都へ一旦戻るつもりだ。宿はここしか無いらしい。
「いらっしゃい!!」
可愛らしい姉さんだ。
「四人!?同部屋の素泊まりは黄4枚、夕、朝、付きで黄6枚」
「別部屋はできる?」
「ごめんなさい、部屋が少なくて空いてないの」
「わかったよ、では、素泊まりで」
シオンはカウンターに4枚を置く。
「美味しいお酒と料理を出してくれるお店はあるか?」
「宿を出てすぐ隣の食堂は人気だよ!」
お姉さんが進める。
「ありがとう」
シオンは丁寧にお辞儀をする。
シオンとライリスは着替えてくると言うので、
受付横の椅子に座って待つことにした。
「この街に帰ってくることになると思ってなかったです・・」
ケイラは呟く。
「嫌だった?」
ケイラは手を振り、嫌ではないが、驚くことが多すぎて頭が追いつかない。
「ジオ侯爵の屋敷の人たちを追い出して、学校を無くすのかと思っていたけど、
そうしなかった」
街を見て思ったことをケイラに伝える。
「うまく回っている所に、
何も知らない他人が入ると、
歯車が噛み合わないでしょ」
そんなことをすると、ケイラは仕事がしにくくなるだろう。
「わからないことは、わかる人に聞けばいい」
シオンが二階から呼んでいる。
宿が古く、3階建ての建物で全部で12部屋。
歩くたびに床がきしむ音がする。
オルドが飛び跳ねると床が抜けそうなくらいだ。
荷物を置いて、夜ご飯を食べに出る。
すぐ隣だ。
「いらっしゃい~」
「あ~ほんと、来てくれたんですね!」
受付のお姉さんだ。中は繋がっていたのだ。
店内は広くてお客も多い。人気店は嘘じゃなさそう。
カウンターに近いテーブル席に案内される。
「弱めの酒1つ、強め3つで!」
飯はおすすめ4つと取り皿をお願い。
赤8枚をテーブルに置く。
「まいどぉ!」
カウンターの端には楽器が置いてある。
壁には見やすく料理名と価格が記載されているのでわかりやすい。
「おまちぃ~」
グラスに入ったお酒が出てきた。弱いお酒には果物が添えられている。
ケイラは弱い酒を確保する。取られた。
シオンが始めてくれと言ってくるので、
「これからもよろしく!」
と言って、グラスを持ち上げる。
ライリスは豪快に酒を飲み干し、姉さんに、酒を追加する。
「まるで、ヴァクーみたいな飲み方だな・・・」
ライリスの飲みっぷりがヴァクーと重なる。
「ヴァクー?」
後ろの席から声がする。
「兄さん?ヴァクーを知ってんのかぁ」
ヴァクーと同じような兜を被った髭顔のおじいさんに、絡まれる。
「同じような兜を被って、ある酒を水のように飲むジジイさ」
「間違えねえな・・
ここで、ヴァクーの名前を聞けるとは思わなかったぜ」
「昔な・・」
「やっぱりやめ」
ライリスは男に酒瓶を渡す。
酒瓶を回しながら、連れの男がいう。
「どうした?グラーク?」
連れのコップに酒を注ぎ、
「いや、昔のことを思い出したんじゃ」
気になる。ヴァクーは昔のことはあまり話さない。
酒瓶から一気に飲む。
「あいつとは、若い頃、クルフェイノ造船都市の工房で一緒に働いていた」
ライリスは酒を2つ注文する。
「腕は、誰よりも良かった・・・
ある日、新型船が墜落したんだ」
「ヴァクーも製造に絡んでいて、責任を感じて工房を去った。
船を動かす者を見て仕事をしたいと言って」
「結局は・・俺たちも騙されていたんだがな・・」
「騙されたといえば、領主さんもだな」
「政治には無関心だったからなあ」
「あ〜いつか悪いやつに騙されると思っていたが
執事かよ」
「だな〜」
周りの人も頷く。
「新しい領主が来るってよ」
「素人らしいぞ!」
「ぱ・パットっていう名前だったか?」
「ムッチじゃなかった?」
「学校とかどうなるんだろ」
「みんな、あの学校で学んだんだぜ」
「言葉も、勉強も、遊びも・・・」
「ジオの婆さんに、よく怒られたよ」
「婆さんがもっと、長生きしてくれれば」
「騙された領主に乾杯!」
グラークの周囲は騒がしくなった。
シオンは楽器を手に持ち、椅子に座り奏で出した。
「星の歌か・・・やるか・・」
グラークが立ち上がりもう一つの楽器を奏で出す。
二人とも上手い。
「ん?誰も歌わないのか?」
ライリスは立ち上がり歌う。驚き!美声だ。
女性の恋人が悪人に利用されているのを知って
目覚めさせる為、行手を阻む。
邪魔と思った悪人が女性を槍で刺してしまう。
腕で眠る女性を抱えて我にかえる
悪人は男も槍で刺して殺してしまう。
やがて、二つの星となる。
寂しい話だ。
口ずさむ者や、目を閉じて聞いている者がいて、誰も邪魔はしなかった。
終わると拍手が湧き起こった。
「アリナ!酒樽一本!」
グラークは黒を1枚投げる。
「みんな!今日もやるぞ!」
食堂が盛り上がる。
アリナは樽を転がして持ってくる。
「あんた達!今日は店壊さないでよね!」
樽を立てて置いていった。
「ぉぃ美声年!!美乳娘!!も勝負じゃ!!」
参加者は樽の周りに集まりグラスを入れて酒をすくう。
「酒に呑まれるか飲むかの勝負じゃ!」




