4.賑わい
夜--
息を吸うたび、肺の奥が痛むほどの冷たい空気だった。
見上げると砕けた月の光で灰色に照らされた空中戦艦が探照灯を周囲の雲や山肌をなぞって警戒している。
操舵のセインは筋肉痛で自室にこもって休むというのでヴァクーとこのエリアで唯一の酒場へ向かう。
客人を輸送する仕事だったら町の港に停泊でき、暖かい宿とおいしいごはんにもありつけたのだけど。
「出港する直前に離陸禁止になって稼ぎがなくなったぜ」
「はは・・」
すれ違う船員たちのボヤキがまた心に刺さる。
酒場の扉を開けると、暖気の塊と騒音が一気に溢れてきた。
奥の暖かそうな席は埋まっていたので、手前の風が吹き込む席に座ることにした。
店員と話をしている男が振り向く。
「パッチ!」
「俺にも聞かせろ!」
と大きな声をだしてやってきて俺の席の向かいに座って肩肘をついて顔を指で搔いている。
鉄の何をモチーフにしたわからない模様が入っている兜をいつもかぶっている同業者のオルドだ。
テーブルに酒が3つ置かれる。
「俺にも!」
「おい、席をつめてくれ」
様子を見ていた他の船乗りたちも席を囲む。
--どうやって回避した!?
--竜の動きは?
質問が飛び交う。
「まてまて!まずは、話を聞いてみようぜ!」
オルドが仕切りだす。
運としか言えないといいつつ、あったことを隠さずに他の船長に伝える。
話し終わるころにはテーブルの上のは食事がそろっていた。オルドが注文したのだろう。
「さすがパッチ・・・運だな」
「その呼び方はやめろ」
「今回も船壊したんだってな!わはは!」
よこからヴァクーが割り込む。
「修理代破産号だぜ」
笑いが爆発した。
「まだ、破産してねえよ」
「ヴァクー破産したら俺のところへ来い!」
「いつでも歓迎だぜ!わはは」
ヴァクーの頭を鷲掴みしてオルドは笑いながら元のテーブルへ戻っていった。
「バカ力め!・・・・壊れない船にいてもおもしろくねえ・・」
ヴァクーがチビチビのみながらつぶやく。
そのとき。
隣の席から女の声が。
「あんたたち、すごいわよ!」
ギルドの受付嬢だった。
椅子を引きずり、こっち向きにすわって飲んでいたグラスを俺の頬にぐいぐい押してくる。
よってんなこいつ・・
「はぐれに遭遇して無事だった船は無いわよ」
「もってきてくれたお酒が早速でまわってのんでまー」
少し間をおいて、彼女は首を傾ける。
「ところで、さっきのまほーってなに?」
俺はグラスの中を見つめた。
「・・・・俺にも解らないんだ・・」




