エルディンへ
朝からバタバタしていると城から、シオンの部下の騎士がやってきた。
確か、ブラーノという名前だ。
突然、ジオが俺と話をしたいと、言い出したらしい。
できるだけ早くに、ジオが願い出ているので、セインに船を任せて一人でお城へ向かうことにした。
ヴァクー、オルド、ゼネルは酒に呑まれて二階で寝ている。
騎士の背中につかまって馬で城へ向かう。早朝だが、人通りは多い。
城門を駆け抜け、お城の周囲を回り込むように上り坂を進むと、小さな建物があった。
建物の傍には、とんがった、小型船が3隻並んでいて、シオンとその部下30人ほどが隊列を組んでいた。
「おは よう ございます・・」
シオンの目の周りが黒い。
「侯爵、朝から、申し訳ない・・」
騎士の案内で建物に入ると、地下へ降りる階段があり、足音が響く不気味な空間だ。空気がよどんでいて臭い。
手前の部屋にジオが閉じ込められていた。
鉄格子の向こうは窓が無く、ベットの上で丸くなっている男がいた。
ご飯が置かれているが、ジオは手を付けていないようだ。
目が合うとベットから飛び降りて、牢越しに対面する。
騎士に対して、ジオはゆっくりと、
「すまないな・・こんな、朝早くに、
二人だけにしてくれぬか」
シオンと騎士はお互いの目を確認し、
「わかった。声の届かない所まで下がる」
階段を昇って行った。
ガシャン!
上で扉が閉まる音がした。俺も囚人になった感覚で突然、不安になった。
「要件は?」
声が響いた。
ジオは鉄格子を挟んで、何度も階段の方を気にしている素振りを見せた。
かなり小さい声で、
「誰も信用できんが、
船乗りのお前は、王国の者ではないのでな・・・」
声が小さい。
「まだ、間に合うかもしれん。
奴らの仲間が、そこら中にいる」
「奴らとは?」
「いいか?知らないほうがマシなこともあるんだ。
だが、
俺のやったことで家族に迷惑をかけた。
俺の家族は何も知らない・・
家族だけは助けてほしい」
いきなり、そういう話をされても、困る。
「約束は、できないが、やれることはやる」
ジオの目を見て言う。
「そうしてほしい・・
彼を・・
レガスター卿を絶対に捕まえてほしい」
「それは誰」
「筆頭執事だ。政務も財政も軍も、すべて任せたのが間違いだった。
俺は政治には無関心だったのだ、とにかく急いでくれ!」
建物の外に出てシオンと話す。
「レガスター卿?ジオの執事だったか、それが関与しているのか」
シオンは少し考えブラーノを呼ぶ。
他の人からは距離をとり、
「レガスター卿をとらえるのだ。
捕らえたら、屋敷に付近を閉鎖し接近する人物・船がいたら、拘束しておけ」
小声で耳元に囁き、指示を出す。
ブラーノは全員にエルディンへ向かうと号令をかけ、各船に乗り込み、出発していった。
シオンは空を見上げ、つぶやく。
「間に合うのか・・
私も、フレイロアの船でエルディンへ同行する」
ん?一緒に行くってことか?
昨日、駅で見失った、背の高い男は見つからなく、一睡もしてないと。
後で、港に迎えに来てくれることになり、シオンと別れる。
帰りの馬車を用意してくれて、歩いて帰らなくて済んだのはうれしい。
港に泊まっていた船は、ほとんど出港して桟橋はガラガラだった。
セイン、トュリスは騎士と一緒に、船の下に資材が持ち込まれるのを監督している。
技師たちが図面を囲み、話し合っている。いつ用意した図面なんだ?。
二階の大部屋と三階の水浴びが出来る部屋を工事する予定。と聞いた。
部屋に入るとサーリャがベットから起き上がる。
「起こしてしまった?」
「起きてた。もう大丈夫。
いつもありがとうね」
「気にすんな!」
部屋の工事があることを伝えておく。
服を選んでいると
「どこか行くの?」
「フレイロアの船でエルディンに」
「侯爵になったんだったね」
「実感ない」
「見えない」
笑って言う。久しぶりに笑うのを見たような・・
「だよな」
サーリャは何か思いついたようだ。
「今度、服買いに行こうか」
「選んでくれるの?」
「似合うの選んであげる」
「楽しみにしている」
この中で、これが一番まともな服かな・・・
「それがいいと思うよ!」
サーリャもそう思うか・・やっぱり、この服だ。
「これで行くよ」
「うん、いってらっしゃい」
少しは元気になって良かった。




