サーリャ誘拐される
近衛騎士団長シオンが迎えにきた。
「王が待っておられますのでついてきてください」
部屋から出ると、騎士が待っていてシオンに続くようにと。
後に続くが、最後尾にも騎士がついて逃げれない。
シオンに国王・女王に何て言えば失礼ではないのかを聞いてみる。
廊下を進むと通路の幅が広くなり、通路が交差している場所に出た。
右を向くと豪華な造りのドアの前に騎士がいた。
騎士の方に進むとドアを開けてくれた。
中に入ると、前王、前王妃、王女が並んで立っていた。
シオンに続いて、膝をつく。
「お待ちください、膝をつく必要はありません」
「エルミウス様に認められた、あなたにこそ、私たちの方が膝をつかなければなりません!」
いやいや・・・とりあえずシオンに教えてもらった感謝の言葉を。
「この度は、ご配慮いただきまして、・・・」
手袋に書いた文字が汚くて読めない。
シオンが軽く咳ばらいをする。
王妃、いや女王と目が合い、お互いに笑ってしまった。
ナルは不機嫌そうに、他に目を移す。
まだ正式ではないが、ミベニール侯爵領と隣国バルフェリアとの紛争を解決するのが元国王に与えられた課題だ。
本人の、王位には興味がないような発言が続くので、女王はかなりイラついている。
「あなたが、しっかり構えてなければ、このような事態にはならなかった!」
全く、その通りだ。
「しかし、のお」
「あなたを守るために何人の命が犠牲になったと思っているの!
私は国王として、騎士の家族に謝罪するのです。もちろん、あなたもですよ!」
前の王のお尻を蹴とばす。
死んだ、騎士は帰ってこない。
女王陛下は強いな。ナルもあんな感じに、なっていくのだろうか。旦那はかわいそうだ。
二人は退出していった。
ナルは夜、城へ来てほしいというので、船に荷物を取りに戻ることにした。軽い食事会をしたいと。
港へ戻った。
「パッチ、船、どうした?変えた?いや、同じ船だよな」
セインとオルドは船を見て驚いていた。
「水平だ・・・」
「家で修理してきた」
「家で修理できたんだ!」
セインは手をクイクイしている。あ~あれが欲しいってことだな。
以前、セインに赤い実を食べられたことがあって、それ以来、帰ると多めに持ってくるようにしていた。
セインはトュリスの手を引っ張りブリッジへ上がっていた。
「ギルドに夕方迎えに来てね」
「ナルにあげるんだから!全部食べちゃだめよ!」
分かったって!みんなに言っておくよ!
サーリャは帳簿を抱えてギルドへ向かった。
ブリッジに行くとセインは赤い実をナイフで半分に切ってトュリスと分け合っていた。
「一人一つだけだぞ!」
もっと持ってくればよかったか。
サーリャ、ギルドへ行く。
船が治って階段が少し急になり、降りることが怖かった。
港にいる船は、侯爵や男爵の船でパッチの船と比べて豪華。
ウインザードのギルドに着いた。港から近い。
ギルド内で男同士が喧嘩している。
仕事の分け前を巡ってのトラブルのようだ。
受付のトリアは無関心だ、上を向いて欠伸している。
勝手に暴れてろ!!
「トリア、久しぶりね」
「あれぇ~サーリャじゃない
センドラにいたんじゃなかった?」
すこし、話すことに。
「大冒険だね!ねぇ?
そのパッチって男、いい男?」
その話は無!気が付いたら時間がたってた。
調べものをしないと。パッチが迎えに来る。
トリアに奥の事務所を貸してもらう。
「おっ、サーリャちゃん、無事だったのか!」
支部長のドエルだ。昔から、女性には「ちゃん」をつける変態だ。
パッチは耳を引っ張る変態、ヴァクー、オルドは丸裸な大変態、セインは幼女好きだったが、
初めて会った時から、こいつは胸しか見てこない。
「それは?」
「センドラ寄港帳簿から竜石の流れを見ようと」
「仕事できるのね。何か、分かったら教えてね」
うぇ~投げチュウしてきた。きっも・・
これは、細かくて、わからないなぁ。
トリアは使えないし、誰かいないかな。
ガタン!
覆面をした男達が入ってきた。
「誰?」
いきなり、目の前が真っ暗になって、手足が動かせなくなった。
え?なに?え?
男たちの声がする。
「これか」
「たぶんな」
「よし、こいつも持っていくぞ」
「誰!やめて!放して!」
「うるさい!」
叩かれた。痛い。
「あんた達誰!!」
トリアの声がする。
「ドケー!!」
男たちの怒鳴り声がひどい。
椅子が倒れる音がする。
足がいろんなものに当たる。
臭い。
馬の蹄の音が響いている。
動きが止まった。
「馬、水あげときな」
「へい」
「俺、こいつ運ぶな」
「まかせた」
「これが、例の物か。
楽な仕事だぜ」
何かをめくる音がする。
こっちは?ギルドの女だ。
「なに?攫ってきたのか」
明るくなった。室内だ・・酒場・・・とても臭いにおいがする。
男が数人見える。カウンターの奥には女がいる。手足が痛い。
「かわいい女じゃねえか」
首を掴まれる。くるしい。
首筋に生暖かい息がかかる。きもい。全身に寒気が走る。
「これを、渡してからだ」
「我慢できねえ、二階行く」
私を抱えて昇っていく。いやだ。
バンッ!
入り口のドアが外れている。
「パッチ・・・」
3人の男がパッチを取り囲んでいる。
「ここをどこだと思って・・」
周りにいた男たちが一瞬で倒れる。
テーブルに頭から突っ込み、椅子で顔を打たれ、拳で飛ぶ。
椅子に座っていた男たちが立ち上がり剣や斧を持つ。
次々と切られて血が飛ぶ。
剣をよけ、斧をかわして確実に、
階段下の男の腕を取り腹部に一撃、相手の剣を取り、投げる。
私は床に落とされ、男は、背中の剣を抜きパッチの方へ駆け下りる。
叫び声がする。
剣を持つ腕が胴体から離れていく。パッチは男を蹴り飛ばして階段下へ落下して動かなくなった。
「ごめん、遅くなった」
パッチの優しい声だ。
縄を切ってもらう。
縄の跡をパッチがさすっている。とっても、暖かい手だ。
パッチの頬から血が垂れてきたので手で拭う。
「ケガしてる・・」
震える指に血がつく。
「こわかった・・・」
「もう大丈夫だ」
「叩かれた・・」
頬が痛い。
「大丈夫だ、もう誰もいない」
「耳さわられた・・」
「ここを?」
「・・そう・・」
パッチのグローブが硬い。
・・・・
・・・・
「いつまで触ってんの」
うめき声がかすかに聞こえるだけになった酒場。
酒場の女が震えている。腕に剣が刺さっている。
トュリス?が入り口から顔を出した。酒場の中をみて口を塞いだ。
トュリスの顔を見た瞬間、涙があふれてきた。
パッチを突き飛ばして、階段を駆け下り、トュリスを抱きしめる。
騒ぎをききつけた騎士がやってきた。野次馬も酒場の周りに集まっている。
「ん?サーリャさん?」
港にいた騎士だった。名前は忘れた。
「あなたがやったの?」
こんなことできるわけがない。やったのはパッチだよ。
パッチを指さす。
酒場にいた者達を壁側に並べて、取り調べをしている。
パッチに事情をきいている。
「気が付いたら、みんなケガしていた」
お前がやったんだろ!と言いたかった。
体がまだ震えていて、声を出なかった。




