王の監禁先
王はブルカ・デ・ルボに軟禁されているようだ。昔、ギルドが使用していた移動浮遊島で、ジオ侯爵が購入した。
この船で行ければよいのだか、ハッチと砲台を壊してしまったので、あの高度まで上ると与圧されてない為、呼吸ができない問題がでる。
もっと問題があり、ジオによると、守備兵が50人もいるという話だ。
戦力をもって制圧するか。補給船を装い侵入するか。ジオを船首に括り付けて脅すか。
「何度か、寄港したことはある」
「与圧されてて、通路は狭い」
「そういえば、ヴァクー、詳しいだろ?あの島」
「まあね」
ヴァクーと初めて会った島だった。
「何か、攻略できる場所はある?」
「剣を振りまわしたりするのはきびしいぞ」
「国の管轄エリアに入ったことがあるが・・」
「クレーンを増設したとき、昔の船着き場を使った事がある。進入は難しいが島の最下部にあるから、夜だとみられる心配はないぞ」
「奇襲ができそうですな」
「いや、それでも死傷者は避けれないだろ」
「死は恐れませぬ」
「いや、恐れて!」
「空気抜くか?」
「王を殺す気か?」
「少しの間だけだ」
「大丈夫なのか?」
「わからん」
「バルブを少し、ひねるだけじゃ」
「ギルドの部屋の壁にあったと思う」
「非常用の空気瓶もあるじゃろ」
「無ければ帰ろう」
「投降してもらうのはダメ?」
「ジオを捕まえたし、兵士に従わないときは島の空気抜くぞ!と言えば良い」
結論は出なかった。
船に戻って、今の島の位置を計算しよう。
ジオ、帝国の光のフェストを船に移動させる。
フェストの船は騎士の中に動かせる男がいたので頼むことにした。
ジオ、フェストのお尻を押し上げてハッチへ押し込む。男のお尻を触るのは・・
フェストは船の中が気になるようでジロジロ見ている。
アンカー解放レバーを引くと船が解放され、お互いに離れていく。
ナルが舵を持ってくれているので現在位置と島の位置を計算する。
2回計算したら結果が異なっていた。
「ここ、計算違うぞ!」
地図に書き込んだ式を見ていた、フェストがつぶやく。
「お、正解だ!
やるねフェストくん」
「当たり前だ!そういうのは一回で済ますんだよ!」
好戦的な男だと忘れていた。忘れたい。
「ナル、様!」
いつものように呼び捨てにするところだ。シオンの目が光るのをみてしまった。
「方位34へ」
それを感じたのか、一瞬、笑顔になっていた。
船体が時々、上下するようになってきた。
船の至る所で何かが転がったり、金属同士の当たる音がする。
「この船、大丈夫?」
サーリャが心配している。
「大丈夫だ!」
ヴァクーは目を細くしている。
シオンはジオを連れてブリッジから出て行った。
フェストの顔色が悪い。シオンは尋問が楽しみだと言って出て行ったからだ。
「ジオとの仕事はいつから始めた?」
「勝負する少し前からだ」
「あぁ・・あの時ね」
「帝国でイザスって奴に紹介されたんだ」
ギルドを通さないで受ける仕事は訳ありな仕事が特に多いが、イザスって言う名前は聞いたことは無いな。
「知らん」
ヴァクーも知らないようだ。
早い船を探していて、フェストの船が最適だったってことか。
「ブルカを中心に、人の輸送をやる契約をした」
「俺のかわいいフェスティスが・・」
「王は乗せた?」
「王?乗せたことはない」
王を空中戦艦から、島へ運んだ船は別か。
ベグミアの山地で上昇気流を使って加速するので揺れることを伝える。
気流が乱れてきた、山地までまだ距離がある。砂漠で冷やされた風が一気に流れ込む風の回廊となっている。
発達した雲の内部はとても危険だ。周囲の気流をうまく使う必要がある。
翼を展開、速度を落として、島との接触を調整する。
シオンが戻ってきた。ジオは俺の部屋に監禁中だ。
王の監禁場所が分かった。
旧ギルド事務所があった場所の奥の独房。
シオンは島に接舷して、降伏勧告の手紙を渡し、反応を見る作戦で行くことを決定した。
ランタンが揺れるようになってきた。
ヴァクーはランタンの火を消す。
ブリッジは月明りのみとなる。
山が下方に広がりさらに気流が乱れてきた。
ナルと交代して準備する。
「290上空島影!」
フェストに発光灯を渡して、島の直前で信号を打ってもらう。
シオンはフェストの肩をしっかりつかんでいる。
船の翼が上昇気流をとらえ、雲の側面すれすれに、高度を上げていく。
窓に水滴や氷が当たることもある。
雲頂を越えても上昇は続く。推進音は大きくなっていく。船首を徐々に下げていくと黒い島影が目の前に現れた。
島のすぐ手前まで到達した。
フェストに渡した発光灯は、カシャカシャうるさいが、音でも何を発信しているのかすぐ分かる。
「接舷許可が下りればいいのだが・・」
暗くて何の船かわからないだろう。
しばらくすると島から接舷許可の返信を受けた。軍用の船着き場を指定される。
ここからは、うまくいくことを願おう。ブリッジは俺一人だけになった。
王が囚われている場所を確認することが出来る位置だ。
固定アームで完全に船が固定され、ブリッジ横に接続橋がつながった。
気圧調整される音がする。
音が止まると、ハッチを叩く音が数回した。
ハッチを開けると兵士五人が船に乗り込んできた。
「こんな時間に入港するとは」
なぜか怒っている。
「王国から、手紙を預かっておりますので」
「補給物資ではないのか?」
先頭の兵士に手紙を手渡す。
ジオは失敗し、ジオは我々の手にある。
王都にナル姫は帰還された。
この反乱は、意味はない。
王を開放し、速やかに武装を解除。
明け渡さなければ、攻撃する。
期限は日の出前まで。
近衛騎士団隊長シオン・フェリーアレス
「返事を頂きたいのですが」
「将軍に、これを知らせる」
「お前たち、ここでこいつを見張れ!」
二人は急いで船から出て行った。
「渡し物を届けたので帰らせてもらってもいいですか?」
ダメ元で聞いてみる。
「ダメだ!」
俺を軽く突き飛ばす。
「次の仕事があるんだよ!早くしてくれよ!」
服を掃う。
地図を片付けて、単眼鏡で周囲を見る。
「君たちはこれから大変だね」
兵士たちの方を見て窓に寄りかかる。
「何が大変なんだ!」
と返してきたので、後ろを指さす。
三人の兵士はシオンに飛ばされ、伸びてしまった。
ヴァクーは三人を縛り上げ、シオンと騎士たちは船から出て行った。
ジオとフェストを閉じ込めている俺の部屋に三人を追加で放り込んだ。
サーリャがドアと壁を木の板をはめて開かなくした。
「返事を待つのが作戦じゃなかった?」
シオン達はギルドだったドアの入り口まで到達している。
船を出て接続橋を渡って通路に出る。
等間隔に明かりがついている。
通路の幅は二人が並んで歩けるかの広さだ。
空気は薄いし寒い。
「この先の突き当りの右側にバルブがあるはずじゃ。
そこをちっと回せば」
ヴァクはー壁を叩きながら歩いている。子供か・・
丸い窓の外は暗い。明かりがついている場所はこの通路だけか。
通路が分かれる所についた。少しだけ通路が広くなっている。シオン達はここを右に曲がっていった。静かだ。無事だろうか。
「バルブないぞ?」
「はて?」
シオンの向かった反対方向から30人以上の重装備の兵士が歩いてくる。
これは、やばいかも。
「王国の使者の者だ!そこで、とまれ!
返事を頂こう!」
先頭の髭の男は止まる。
「我らの返事は・・・これだ!」
やばい!剣を抜いた!!!逃げろ!!
くっそ!船まで遠すぎる。振り返りながら矢を放つが鎧に弾かれる。
振り返り剣を構える。
「ヴァクーすまない・・脱出してくれ!」
接続橋を破壊できれば、ここの空気は外に放出される。
髭の男は剣をつく構えだ。
「走れ!パッチ!」
ヴァクーの声が遠ざかる。
腕が少し上がった。首を狙うつもりか。
剣を下から弾くように入れる。
男の剣が飛ばされ天井に刺さり、男の左脇に剣が入り血が出る。
体を蹴り後ろの兵士に覆いかぶさるように倒れる。
天井に刺さった剣を取る。
兵士は盾で防御陣を作って髭の男を引き込む。
盾の隙間から兵士と目が合った。
この窓を壊すか。
足が重い・・目の前が霞む。
そのとき、窓の外から明るい光が射しこんできた。
兵士たちの足が止まる。
王の空中戦艦だ。砲台がこっちを狙い、閃光が走る。頭上を弾が空気を切り裂いていく。
多くの兵士が流れ込んで来る。島にいた兵士は戦意喪失して剣を捨て後退していく。
昔の船着き場から進入してきたのだろう。
「助かったのか・・」
剣を床に置いて、座り込む。
「パッチ!!」
サーリャの声が・・聞こえる。




