母上との再会
ウインザード王国、王都ディグ
南大陸中央の最大の都市で交易の要衝となっている。
ウインザード山脈を超えて穀倉地帯を抜ければ王都となる。
城塞都市となっていて外郭は貿易区、中郭は住居区、内郭は城と聖堂がある。
上空には浮遊島があり都市に落ちる滝の水は全て霧となって消える。
建物が白く輝いている。帝国の船も見える。
「綺麗な都市ね、
いい?みんな、無理はしないのよ!特にナル!」
サーリャがナルのローブを綺麗に整える。
港に入港した。物資を運んだ馬車や車が往来して賑やかだ。
ここから、王女をお城まで連れていく。
サーリャはギルドへ停泊の手続きをやってくれる。
ナルが立ち止まり警備兵に声をかける。
「セクレン!」
「ん?」
「あれ?姫様!?」
ナルに驚いた兵士は茫然としている。
「元気?」
ちょっと・・良いですか?
セクレンという女兵士はナルと話をする。
王様が自ら捜索に出たが帰ってこないのでお城は大騒ぎとなって、
ジオが何度も捜索船を出したが手がかりが掴めないということだった。
「予定通り、私が帰ったという、噂を撒きましょう」
セクレンには城の門番にナルが返ってきたことの伝令をお願いする。
ナルはフードを脱いで、綺麗な髪を出した。
城まで歩いて行きます。
セクレンは王女が戻ってきたと、声を出しながら走って行った。
道には王女を見ようと多くの人が集まる。
港を抜けると、城まで続く大通りと合流する。
お城まで緩い上り坂が続き、通り沿いには様々な商品を扱うお店が軒を連ね人が多い。
乗合馬車からナルに手を振る子供もいた。
民衆と一緒にナルは城門近くまで辿り着く。
城門を守っていた守備兵は駆け寄ってくる。
「パゼルモ!帰ってきました」
「姫様!」
城門はすぐに開いた。
ついてきた民衆にお辞儀をする。
城から馬に乗った兵が
「姫様!」
飛び降り片膝をつく
「シオン!」
「帰ってきました」
ナルは民衆に手を振り城門は閉ざされた。
「姫様!こちらは?」
「私の命を救って下さった友です」
鎧で固められた兵士を近くで見たことがなく圧倒されるだけだった。
「急いで、お城へ!馬を!」
「いいえ!歩いて行きます」
ナルの周りには多くの兵士が集まり城へ向かうことになった。
丁度その時に、港に空中戦艦が入ってきた。オルドが操縦する船だ。予定より早く港へ入ってきた。
砲台にはセインが座りトュリスが周囲を警戒しているはず。
「おお!王の船!帰ってこられたのか」
シオンは船を見る。
「シオンという騎士、何もかも大きいのお」
ヴァクーが騎士をジロジロ見ている。
シオンの隣にはオルドと同じくらいの大柄な美女が同行していた。
鎧はつけてないので騎士ではないのか。
「ナル!!~」
城内から走ってくる綺麗な女性。ぞろぞろと騎士が付いてくる。
ナルの周りにいた騎士は膝をつく。
「母上!!」
ナルが走り出す。
王妃の目の前で止まり、抱擁を拒否する。
「母上!ジオはどこにおる?」
「ジオ侯爵かい?」
「この感動の再会を置いておいてかい?」
ナルの両肩に手を置いて揺さぶる。
「姫様が戻られる前に西門から城を出られました
急用との事です」
王妃の騎士が発言する。
「馬車をお願い」
「港へ急ぎジオの船を止めるのです」
「パッチ!お願い!」
シオンが来た、馬に乗れという。
シオンの前にヴァクーが乗り、後ろに俺・・
馬がでかい!
鎧が硬い!
ヴァクーの道具箱から工具が落ちていく。
「あの船には王は?」
シオンが聞いてきた。
「乗ってない」
それだけ答えた。
来た道を人をかき分けながら戻る。早い!
港のゲートを入ると
シオンが警備兵に聞く。
「ジオは?」
「あの船です」
警備兵は飛び立った船を指さした。
遅かったが、まだ、間に合う。
シオンに船の場所を教える。
ついてきた半分の兵士は別の方へ向かう。
シオンが指示を出したようだ。
「あれは、鼻水小僧の船か」
ヴァクーは飛び立った船を見て言う。
空中戦艦の砲塔の1つが回転する。逃走した船を狙う。
「あれで、当たれば奇跡だ!」
ヴァクーが叫ぶ。
なかなか発射しない。
船の階段横で馬から降りる。シオンは馬を連れて近くの兵士に馬を預けた。
馬車が着き、ナル、シオン、騎士たちが階段を昇ってくる。
ヴァクーは動力室へ、他はブリッジへ、サーリャは階段を収納する。
逃走した船を索敵する。相手の船が見えない。
ドドーン!
空中戦艦からの発砲だ。遠くの山に火が出るのが分かった。
「出発して大丈夫よ!」
サーリャがブリッジに入ってきた。
船の圧力が上がり浮上して、旋回する。空中戦艦の下をくぐり
火の方向へ向かう。
手元にランタンを置いて、地図を広げ空中戦艦と燃えている山を棒でつなぐ。行先はジオの領地ではない。
すでに日は沈み、燃える山の上を通過して上昇していく。
この方向に逃走していなかったら、見失う可能性がある。
ランタンを消して周囲を捜索する。
雲が出ているが静かな空だ。
ナルが左下方の雲の上に小さな光る点を見つける。船だ。
単眼鏡で確認すると例の船だ。
相手の船には砲塔がついてるので潰すしかない。
船の気圧を少しずつ下げていく。下部ハッチを開放する。
「この先、少しめまいするかも」
相手の船を押し付けて降下させて乗り移る作戦だ。
ナル、サーリャは操縦舵の横の手すりにつかまっている。
騎士たちにも掴まるように指示を出す。
「いくぞ!」
船軸が75度ほど左に傾き船首を下げる。そのまま視界が上下さかさまになる。足は床で踏ん張れる状態で降下している。
「まだだ」
船を視界に捕らえる。
「パッチ!」
ヴァクーが叫ぶ。
そのまま左回転で船軸を水平に戻し船首を上げ、速度減速翼を広げる。
ガツガツ!
船の上部に接触する音が続く。
ヴァクーは左前アンカーの照準を上部左砲塔に合わせ発射。左砲塔を貫通して船体に突き刺さる。
ナルに船を押し続けるように舵を渡す。
右前アンカーを右砲塔に発射した。右砲塔を破壊して船体に減り込む。
ヴァクーはアンカーを引き寄せるハンドルを回す。
「硬いわい・・」
俺も手伝うが、硬い。
手が伸びてくる。シオンの手だ。
「回せばいいのだな!?手伝う!」
クルクルと回り相手の船と固定することが出来た。
颯爽とシオンは階段を下りていく。
速度減速翼を閉じる。
下の方で相手の船の外壁が破壊される音がする。
騎士たちが進入していったのだろう。
ナルに船内を全て掌握したと報告が入った。
下部ハッチから梯子が下げられており、相手の船の見張り台のハッチが壊され、そこから進入したようだ。
一緒に鼻水小僧の船へ入っていく。相変わらず豪華な船だこと・・・
ブリッジにはナルと同じ白いローブを被った男と捕えられた兵士と鼻水小僧とその部下に縄がかけられていた。
ナルはやさしく一言
「ジオ・・ひさしぶりにお会いできましたね」
「姫・・」
ジオは震えている。
「落ちるか、話すか、選べ」
刺すような目でジオを見る。
ヴァクーも俺も、その声で固まった。




