王の船
ウインザードへ向かう途中で、船の配管が破裂してしまった。
修理中にトュリスが浮遊等に隠された船を見つけた。
その船は、ナルがよく知っているものだった。
高度、速度を落として中層雲の下を飛んでいる。
最短でウインザードまで半日の距離。
周囲は海、所々に、島が見える。
ナルの操舵で飛んでいる。
サーリャ、オルド、セインとトュリスは周囲の監視だ。
ヴァクーと貨物室に入る。寒い。
「やっぱりここが破裂しているな」
地下都市にあった部品で修理した場所だった。気体が激しく放出されていてすぐに氷の粒になる。
バルブを閉じて、予備の配管を入れ替える。
船の進路が変わったようだ。取り外した配管が転がっていく。
ブリッジに入るとセインは単眼鏡で正面の浮遊島を見ている。
空中戦艦が雪の森の中に、隠されているのをトュリスが発見した。
よく見えたものだ。セインは頭をなでて褒めている。
墜落した形跡はない。大型船で墜落することは無く、多くは小型船だ。
遠くから旋回して近づいても何も反応が無い。
空中戦艦の甲板に船を降下させる。
誰も、いないのか?
「砲塔に注意ね」
こちらに照準を合わせる砲塔は一つもなく静かだ。
「着陸したい」
ナルが言うので着陸することにする。
「なぜ、あれが、ここにあるのでしょうか」
窓の外の広い甲板を見てつぶやく。知っている船なのか?
「俺と、ヴァクー、オルドは戦艦に入る。セイン!船に残って、何かあったらウインザードへ逃げてくれ」
「わかったよ」
甲板の上は冷たい。
ナルは先頭に立って先へ歩いていく。ナルの国の船だから構造は知っているのか。
甲板が終わる辺りで窪んだ場所があり、階段で降りるようになっている。階段は緩い傾斜だが長い。
下りた場所は広くなってハッチには家紋?のようなものが描かれていた。
ナルは階段の手前で振り返り、
「間違いありません。これは、父の船です」
階段を駆け下り、ハッチの前で涙をこらえるナルがいた。
「いったん、戻るか?」
「大丈夫」
ハッチを開ける。
「この匂いは・・」
「ナル・・」
「大丈夫・・行きましょう。
この先がブリッジだったと思います。」
天井には丸い窓が一定間隔に並んでいる。
だいぶ、歩いたと思う。
途中多くの兵士が死んでいる。
「切られている」
剣での刺し傷や、斧で鎧ごと割られた傷が目立つ。
立派な鎧を装備した兵士が剣を抜かずに死んでいる。
ブリッジは大きな窓が並び明るく視界が良い。
階段を下り、操舵席の後ろに出た。
操舵席から血の跡が引きずられたように続いて、壁に寄りかかるように亡くなっている。
「クレイドーラ・・・ネスカル・・」
船長席にも座席にもたれたまま亡くなっている人や、床に倒れた人など、ブリッジには多くの人が死んでいる。
床には血の跡がひどく残っていた。
「これが砲台か」
オルドは座席に座る。
「まて、オルド!」
ヴァクーがオルドの頭を叩く。
「動かすと、ここにアンカー打ち込まれるぞ!トュリスの目は良いんだ」
船長席の後ろには豪華な模様が入ったドアがあり半分開いていた。
中に入ると通路が横切り、また、豪華な模様のドアがあり、そのドアは閉まっていた。
ナルは息を吞んでそのドアに手をかけた。
中に入ると、真っ暗だった。
「暗いな・・窓のない部屋」
前にいたナルに体がぶつかった。
「これはね」
カチッ!
ナルが壁のボタンを押すと天井が明るくなった。
「なにこれ!!」
「電気よ」
また、ボタンを押すと消える。なにこれ!すごい。
大型船や城、人の集まる施設に使われていることがあるという。
部屋は広く正面に綺麗な絵がかけられていた。人がいた形跡はない。
壁に杖がかけられている。ナルは杖を手に取り、
「ミウスの杖。王の持ち物です」
ナルの身長よりも長い杖を握り、
「船に乗っていたことは間違いないようです」
悲しい顔をする。
船内は9階層になっていて船全体を捜索したが生存者は誰もいない。
脱出艇は使われていなく、ブリッジから甲板への間に死者が12名もいた。
セインを呼び寄せ、船室へ死者を運び入れる。
ナルは一人一人確認していき、祈りを捧げていた。
ナルの父は死んだ者の中にはいなかった。
亡くなった兵士は王の周囲の者だったという。
ナルが祈りを捧げている間、部屋の机の日誌を手に取って見てみた。
こまめに日誌をつけているが、あの日以降の日誌には何も書かれていない。
急いで、出発したか、時間がなかったのではないかと考える。
日誌を閉じ机に戻す。
貨物室に入ると真っ暗だった。たしか、壁に、ボタンがあった。
天井が明るく光り、広い貨物室は空っぽ、物資も積み込まれていなく外への扉は固く閉ざされていた。
天井には移動できるクレーンが3基並んでいる。ここに船も格納できそうだ。
ブリッジに集まり
セインは窓の外をみる。
「このままナルを連れて帰ると危ないだろ引き返すか?」
セインの言葉に少し驚いたような表情をする。
「慎重じゃな」
「殺された兵士をみたら慎重になるさ」
「空中戦艦を襲撃する奴なんているのか」
「襲撃はできる、
これは、内部の一部がやったことだと思う」
「一部?」
「確かにな。兵士が抵抗した形跡が全くない」
「船が乗っ取られたってことか?」
「操舵手以外は一撃に近い殺され方をされている」
「王はそいつらに連れていかれたと?」
「たぶんね」
と、なると、あらかじめ準備をしていた?
しばらく、誰も口を開かなかった。
「それでも、私は帰ります」
強い決意を感じる。
「ナル!」
「なんでしょう」
なんていえばいいのかわからなかったが、言葉を並べてみた。
「失礼なことかと、王様に何かあった場合、王位継承とかいうものは姫様が国をまとめるのですか?」
悲しい表情を見せたが、前を向き直して答えた。
「・・・はい」
「オルド!」
「なんだ?」
「この船、飛ばせる?」
「昔から、いつか飛ばしたいと思っていた。わはは!」
作戦を考えたんだけど乗る?




