ラーナ・ラーテ
地下都市を煙で蒸している間、デトウドの木材を確保するために船で森の上空を彷徨う。
ヴァクーは酒造りで忙しい。
サーリャとナルは街の手伝い。
セインはトュリスに船の操舵を教えたり、一緒に窓の外を眺めたりしている。
オルドはブリッジの隅で欠伸をしている。昨日は、夜遅くに火を焚いたそうだ。
避難者は乗せていないので船の速度は、人間が走って追いつけないくらい出ている。
デュリスの村近くでトュリスが獣人の吠える音を聞いた。
若い獣人が木の上でこっちに向かって合図をしていたようだが、遠すぎて、まったくわからなかった。
村が二夜連続で魔獣グレファロに襲われたそうだ。
地域問わずどこにでもいる大型の肉食獣だ。鋭い牙は長くて突き刺す、突き上げる攻撃で相手を倒す。
大きいが故に小回りは苦手。夜行性。
船を丘の頂上に固定して村を訪問することにした。小川や茂みをかき分けて歩いていくとすぐに村が見えてきた。
太い木の上に小屋が沢山並んでいて木の上で生活している作り。
子供達はロープを使って木から木へ飛び移ったりして遊んでいる。
地面には手のひら二つほどの爪のある足跡が埋め尽くすようにあった。
船についているデトウドの幹で柵を強化することにして
セインは地面に頑丈なロープを埋めていく。
魔獣によって家畜の柵が破壊されて血だらけになっている。
一度狙われると何度も毎日のように襲ってくる。今日も、来るはずだ。
獣人の子供、女性は村のそれぞれの家に隠れる。
村の周囲は松明で明るく照らされどこから来てもわかる。日が沈むにはもう少し時間がある。
その時、黒い影が松明を横切る。
ズシズシと足を踏み込む音が大きくなってくる。二頭だ。
獣人たちは急いで木に駆け上った。夕方に動くとは大胆な奴だ。
口から何本もの牙が見え、涎を垂らしながら柵の中に入っていく。
時々、地面の匂いを嗅いでいる。大柄なオルドも子供に見えるくらいの巨体だ。
足が止まる。村の入り口に置いた餌の匂いを嗅いでいる。
口笛がなり響き、木の上からオルド、獣人の槍が降り注ぐ。
槍が何本も突き刺さるが動きは止まらず、獣人のいる木に向かって何度も突進をして落とそうとする。
太い木を支点にセインは縄を引き上げ魔獣の足を絡めとる。
片足を絡めることができたが魔獣の力が強く引きずられていく。
太い木に絡めることができた。魔獣は足を取られ地面に倒れ暴れている。
セインは縄を引き寄せるがもう一頭がセインの方に突進をする。
セインと魔獣の距離が詰まる。ちょうど、俺の正面だ。
弓を構え魔獣を捉えた。魔獣の左目に矢が刺さる。
魔獣は右にそれ、セインの横を通り過ぎ、木に衝突する。
倒れたところに懐に入り剣で喉を切ると血が吹き出して動かなくなった。
もう一頭も方も族長が頭に槍を突き刺している所だった。
獣族の戦士たちの勝利の叫びが湧き起こる。
牙は貴重なもので戦いに参加したものに公平に分配されるのが決まりとなっている。
セインだけが泥だらけで可哀想だが。
「汚れ仕事は嫌いだ」
と苦笑いする。
剣に着いた血を草でふき取っているとデュリスがやってきた。
「討伐の力添え感謝します」
深くお礼を言われ、身が引き締まる。
「その剣で、神殿への道を切り開いてほしい」
遥か昔より、神殿へ行く道が黒く細い幹の木で覆われていて、それを切ってほしいという依頼だった。
デュリスと二人で森の奥へ
少し険しい道を進んでいくと破壊された遺跡跡があり、抜けると、目の前には硬そうな幹に鉄のような枝、尖った葉の森が広がった。
竜石が周囲に積まれている。
「これは魔幹樹というものだ」
デュリスは木を握りしめ、
「この先に神殿があると云われてる」
木を見る
硬そうな木だ。
集中する。
剣を抜き振りかざす。
ガチン!
木は切れなかった。
「いや、失礼なことをした
もしやと思って試させてもらった」
魔法が消滅してからは魔力がある人が剣を持てば切ることができるらしいという言い伝えだけが残されたようだ。
「我らはこの地を守ってきた」
「いつの日か、ここを通れる者が現れることを信じて」
「そんな言い伝えがあるんだ・・」
木の幹を触って感触を確かめる。冷たい。
暑い?
体の中から溢れ出すものを感じる。
ハアハア
呼吸が早くなっていた。
木の幹が曲がって通路ができている。
自然に足が奥へ・・・
「船長・・・」
古い遺跡があり、中には星図がある。ミウス文字?ではない。
星図に手を当てると壁の文字が光だす。
天井に星空が現れる。
アルティナスタ・・・黒龍・・・
中心に光星があり最も内側を周回する星々が、二つの光る連星と三つの惑星、その一つは双子星と月、
外側に一つの星。
空を巡る竜の道。
右腕に光が集まる。
・・・
派手な服装の女が靄の中から現れる。
「あぁ!なん百年ぶり・・」
立ち止まり足元を見る。
「嬉しすぎて、死ぬところだったよ」
「私は、ラーナ、覚えてる?
覚えてないかぁ〜悲しいな」
女の足元には結界が見える。
「結界が見える?すごいね君!」
何が描かれているのかさっぱりで文字が揺らいでいる。
「どんな結界なのかはわからない」
「見えることに意味があるよ!
これは、私に対する結界さ」
「さ・・さっどうぞ!
入ってついてきてよ」
この女の言うことは信じていいのか・・・
「大丈夫よ!」
心を読むのか
「当たり!!」
「対面した者の心を読むことができるから、ある人にここに閉じ込められているんだ」
「それは?誰?」
「言えないよ!私は死ぬことになるの。あいつに殺されるのは嫌」
「ここから出すために呼んだ?」
「不正解!
ここから私を出さないと倒すべき者へ辿り着けない」
「おかえり、ラーテ」




