遭遇
この先は河が入り組んでいて迷うということで
道案内に獣族の族長デュリスとトュリスがブリッジにいる。
親子だけど似ているとは言えない。
尖った黒い山が突き出た変わった地形に差し掛かる。
高度を取れれば簡単にたどり着くことができるが
今はこの高度が限界なので族長の案内に頼るしかない。
黒い崖の横を通過するときは上からデトウドが降ってこないかと心配したが
地面を這うので飛んだりすることはないようだ。
トュリスはまだ幼く、身の丈に合わない立派な武器を背負っている、ちょっと生意気な女の子だ。
ナルと並んで窓に身を乗り出して、外の景色を眺めている。
ズボンから青いしっぽがフラフラ揺れて可愛い。
ナルも白いローブの下から白いしっぽが出ている。
しっぽあったんだ。
「ぉぃ なにジロジロみてんだよ」
セインがつぶやく。
そんなに、見ていたか・・
お・おまえが言うか?
「こういう感じでね、しっぽを振ると男はいちころよ!」
ナルにそういうことを教えるな。
二人でフリフリしている。
セインは顔を赤くしている。
これは、ころされたな。と思った。
「そうなの?」
「そうそう」
なんて会話してんだ。
ナルはそういうことはしなくても、もう殺されているセインがいるぞ!
と教えてあげたい。
オルドは昼ご飯を食べると言って、鎧虫の足を持って見晴台へ上がっていた。
時々、船底をガサゴソしている。デトウドが引っ掛かっているのだろう。
光が上からさすようになってブリッジは暗くなった。
昼なので食事を取る。セインから舵を引き継ぎ、ブリッジにいる人は床に座って鎧虫の足や焼いた身にかぶりつく。すごくいい香りがする。
鉄板の上に山盛りになっている鎧虫の足と身を囲む。
「さっきまでいた、長耳の綺麗なおばちゃんは?」
トュリスが周りを見てナルに聞く。
「「」」
「おばちゃん?あぁ~~~~~~~」
「トュリス!!」
ナルはまじめな顔して
「おばちゃんに、おばちゃんっていったらダメだよ
ころされるから・・」
耳打ちする。
トュリスは周りをみて察したようだ。
「わかったわ」
「うんうん」
周りも頷く。
鎧虫の殻は洗って乾燥させれば薬や肥料にも使用することが出来るので
まとめて、箱に入れておく。
光が少し斜めにブリッジに入ってくるようになった。
河からはだいぶ離れてしまった。黒い尖った山と小高い丘が連続して続く地帯だ。
「あの丘を越えれば見えるだろう」
デュリスは槍を伸ばして行先を示す。
ドタドタドタ!
オルドが見晴台から転げ落ちてくる。
「ゆう! ゆう!!!」
何言っているのかわからない。
胸を叩きながら窓へ走る。
船首が下に下がる。
オルドが正面の窓で指を指す。
「「「竜か!」」」
正面の黒い尖った山の麓の古城壁の中に、黒い物体が丸まっているが、竜だ。
「右5」
セインは舵を風下へ進路を取る。
単眼鏡で見る。
「あの竜だ・・・」
にげ・・
「セイン!舵変わって!」
ナルはセインを押しのける。
「まって・・」
「大丈夫!私に任せて!」
ナルは竜の方に進路を戻す。
「ばか!なにしてんだ」
ヴァクーは舵を戻そうとするがセインが止める。
「俺は信じています!ついていきます!」
「静かに反転すれば逃げれるんじゃない?」
無理だろうな・・丘を越える前あたりで、竜は気づいているはず。
頭がこっちを向いている。攻撃はいつでも出来るってことか・・
それより、ナルだな。
いつでも、船を捨てれるようにするか。デトウドの森だ。逃げても危険だな。
バキバキバキッ
忘れていた・・デトウドがついているんだ・・
何体引っ掛かっているのかは分からない。
「すごい音ね」
サーリャが入ってきた。
目の周りが黒い。
ヴァクーが窓を隠すが低すぎる
両手で窓を覆いオルドが横に立つ
「なにしてんの?」
「掃除じゃ」
「ふーん」
「そんなよごれてたっけ」
「あと少しで湖だよね」
「まだ見えない?」
「まだじゃ」
「そっか」
「あ、」
「町長がお酒飲むか?って言ってたわよ。」
「わすれてたわい」
「あ」
ヴァクーがいた場所が空き部屋が明るくなる。
「あれ!竜よ!竜!」
ヴァクーの兜を掴んで揺さぶる。
「あ」
「わるい」
「叫ぶかとおもったわい。」
ガツン
ヴァクーの兜を上から叩く。
「叫んじゃだめな時もあるでしょ?」
「あんた達バカなの?なんで竜に向かってんの?
このボロ船なんて一撃よ!!」
「ナルが大丈夫だって」
サーリャはナルを見る。
「理由は?」
誰も答えない。
ナルは前を向いて、舵を強く握る。
「大事なことだよ、
みんなの命がかかっていることよ」
しばらくして、
「わからないと思うけど、竜の声がするの」
「なんてこった・・」
「竜の言葉わかるの?」
「ナルすごい!」
静かになってナルは続ける。
「いまは、聞こえない・・」
「だから、わしはいやだと言ったんだよ」
なにが?
「この子を助けるときすぐにわかったんじゃよ・・
ミウスだって」
だから、あの時、躊躇したのか・・
「ヴァクー、そこまでだ」
その話は後で聞くことにする。
「よし、このままいく」
「「「え!」」」
「ナル、わかったよ」
ナルの手をとり舵から放す。
セインがナルの手を取ろうとしたがサーリャにナルを任せる。
ナルの肩を抱いて後ろへ下がる。
セインはムッとした表情を見せてハンモックに乗ろうとしたが
ハンモックが無かったので床に寝転ぶ。
セインが寝るときは、大丈夫な状況が多いので、心に余裕ができた。
舵を握って前を向く。
「竜の前を通って奥の湖の浜辺に船を下ろす!
竜にビビッて漏らすなよ!
どうせ、逃げれないんだ」
「さすが船長」
「わかったよ」
「ちっ」
オルドと目が合う。
「そう言っているけど船長の足ガタガタ震えてるな」
足だけじゃない。全身震えていた。
「おう!震えない奴いないだろ?」
周りを見渡す。いないの?
「最後の酒のんでくるわい」
「酒の話、うそよ」
ヴァクーは座り込んだ。




