バランス
寒い・・・
吹雪がやむ気配はない
金属で出来ている船だ
燃やすものなんてない。
雪山に閉じ込められ2日目
竜石を囲んで身を寄せて暖を取る人たち。
使用しない箇所の動力パイプを切断し
修理箇所に繋ぎ合わせる。
応急処置。
やらないよりまだましだ。
問題はそれだけではない。
船には排泄物を肥料にする装置があるが、限界量を超えて溢れている。
「どうする?」
「見て見ぬふりは・・・」
船首のハッチを開けると岩肌が見える。
ロープに結び目をつけて降りる。
セインが先行して雪壁に穴を掘りながら下っていく。
岩の裂け目を見つける。ここは風が吹き込まない。
鉄の受け皿と瓶を置いておく。
「なんとかなるな」
三日目、ようやく吹雪がやみ、雲一つない空となった。
ハッチは固く閉ざされ開けることができない。
見晴らし台を開くと冷たい風が吹き込む。
両翼が閉じられていて
欠けた島の残骸が浮いている。
竜石の結晶体があるのだろう。
外れた部品、バランサーの場所は雪で埋もれてわからない。
探す気もしない・・
空を見上げると白い鳥がゆっくり飛んでいる。
こんな過酷な環境でも生きている生物がいるんだ。
「寒いと思ったらここが開くんだ」
サーリャが耳をおさえて登ってくる。
周囲の山を見て
「うわっ、ここ高いねっ」
奥の山脈の頂上は雲で隠れている。
「あれは・・、ラナロ氷河監獄の端だと思う。ちょっと距離があるけど、山脈を回り込むとラナロゲートがあるわよ」
「そこまで、飛べる?」
船の後部は骨組みが露出している。
「・・無理そうね」
「ねねっ さっきのまほー?」
「え?」
「船が一瞬光ったわよ、見逃さないわ」
「だって、あんなところから落ちたら普通は助からないでしょ!」
顔が近い・・・
たしかに、そうかもしれない
「魔法っていう言葉は知っているけど、どういうものかは知らない・・」
「そっか・・・
あっ、この辺りラナロ氷河監獄には別名があって、ラナロ教ではラナロ氷河監獄魔法要塞と呼ばれているわ」
魔法とラナロ教か・・・
見晴台の窓を閉められる。
「それより、
こんなところでサボってないで修理!修理!」
「くるしいぃぃ」
首をつかまれて船内へ引きずられていく。
ヴァクー、セイン、オルド、ギルドの技師を総動員して修理をする。
サーリャは獣族の女の子や避難者の子供たちと遊んでいた。
おかげで作業が進む。
実に効率的に。
「いいぜ!」
オルドが合図を送る。
誰も船外に出ていない。
ヴァクーがレバーを押し込む。
機関が静かに唸りだす。
操舵を手前に引く。
船が浮き上がる。
いつもと違い、重い・・・
ん?なんか傾く。
「バランサーか・・・」
「とんでいったからな」
「ちょい左によって」
ヴァクーが移動する。
ちょっとだけ傾斜が戻る。
ダメだな・・・
セインも
オルドも
ダメだ・・
「ふね直ったんだね」
サーリャだ。
「最低限な!」
「傾いてない?」
「サーリャ」
「?」
「わしらのところくるのじゃ」
「?」
ヴァクーがサーリャを引っ張る。
船が水平になる。
オオオー!!スゲー!!
歓喜に包まれる。
ヴァクーが腕を組んで
「さすが、おもりが効いて、いい感じだわい」
長耳がピクンと反応する。
ーーボコボコボコパチン!ーー
「なんかわからないけど、むかついた」




