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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
専門学校編
9/68

力の代償

無事に実践練習を終わらせた6人。予想外の強敵の出現の件を教官に問い詰めにいく。

掃除用具入れの前まで来た6人はあの看護師について話していた。


「それにしても、なんだったんだあの看護師は。」

「さあな。でもよかった。お前らがいなかったらその内惨殺されてただろうぜ。」

「なぁに〜そいつ。あんたたちそんな強そうな奴と戦ってたわけ〜?」

「寝てたやつは黙れ」


口を挟んだ雲井を霧峰が咎める。


「そいつについてだが、俺は教官を問い詰めるつもりだ。」

「え!?」

「ったりめぇだろ。あいつはあんなやつがいることを知っていやがったんだ。」

「い、いや。知らなかったかもしれないし…」


竜飛が反論する。しかし、山形は聞こうとしない。


「あんなやつがいてそれを知らなかった訳ねぇだろ!」

「まあまあ、落ち着いて。」


しゃくちゃんが止める


「無理だ!お前のおかげでやつは還ったが、もしいなかったら俺たち全員ケバブだぜ!」


そんなことを言っているとエレベーターが学校に着いた。エレベーター前には教官が立って待っていた。


「みんな。ご苦労だったな。」


みんなはバツが悪そうな顔をしながら下を向いている。山形が沈黙を破った。


「てめぇ!どういうことだ!」

「…………何がだ。」

「とぼけるな!なんなんだあいつは!」

「あいつとは?」

「知らなかったとは言わせねぇ。知ってたんだろ?ゾンビみてぇな看護師だよ!」


その言葉を聞いて、教官は顔を青く染めた。そして沈黙を決め込んだ。


「……………お前たち…あれに遭遇したのか?」

「正確にはこいつらが遭遇したんだ。」

「……………仕事ができた。お前らは隠れたとけ。」

「な…なんでだよ?」


山形が問いかける。


「お前たち、ここまで逃げてきたんだろ?ではこの場所がバレてしまった恐れがある。私がここでやつを還す。」

「いや…それが………その…」


柊哉は気まずそうに口にした。


「そいつはしゃくちゃんが……」

「なんだと…!お前!力を使ったのか?」

「いや?全然使ってないよ?ただ首を絞めてエネルギーを流し込んだだけ。」

「いや、使ってたじゃん。デカくなってたし。」


柊哉が訂正する。その訂正によって教官の顔がまた青く染まっていく。


「お前たち。悪かったな黙ってて。謝罪は後でしっかりと行う。八尺瓊、そして憑依霊。こっち来い。」

「え?」

「私も?」

「当たり前だ。」


柊哉としゃくちゃんは奥の方に連れて行かれた。


「お前、肩痛くないか?」

「………本当だ。痛い。」

「そして、寒気もする。」

「なんでそこまでわかるんですか?」

「憑依霊の力を使うと、身体に悪影響を及ぼす。エネルギーを流し込むだけならさほど変化はないが、力を使うと肩が凝る、寒気がするなどの代償が出る。」

「で…でもそのくらいなら…」


教官はさらに捲し立てる。


「短時間だからな。そんくらいの代償ですんだ。逆に言えば力を使って1分もしないうちに解除したとしたとしても代償がでるんだ。これより長い時間力を使ったらどうなるかわかるか?」

「……………」

「まあそういうことだ。憑依霊の力を使うのは控えるんだな。」


そういうと、教官は冷たい音を立てながら帰ってしまった。


「……………ごめんね?私がアイス奢るから…ね?」


柊哉は無言で教室に戻っていった。その後をしゃくちゃんは悲しげに着いていった。


「あ!やっときた!遅い!」

「うるさい。さっきまで寝てたくせに。」

「さっきまで寝てたから元気なの!」


教室に戻ると雲井がやかましく出迎えた。柊哉にはそれは有り難く、そしてうざく感じた。


「………どうしたんですか?」


竜飛は雰囲気の違いを指摘した。


「…………なんでもない…」


しゃくちゃんは終始黙っている。柊哉としゃくちゃんは席についた。それと同時に教官が入ってきた。教室の真ん中まで来て教官は服装を改めた。


「ほんとうに申し訳なかった!!」


教官は土下座をした。


「なんのつもりだ?」

「完全に私の責任だ。最近目撃情報がないからといって油断していたのだ。許してくれなんて自分勝手なことを言うつもりはない。だがこの謝罪だけは受け取ってほしい。」

「はぁ…………もういいっすよ。」


山形はため息をつきながら言った。


「俺たちもう許してますよ。」

「な………なんだって……」

「だってあんた…俺たちが遭遇したって言った時、ここに来ることを予感して守ろうとしてくれただろ?」

「もう私たちにはその気持ちが伝わってるのよ。教官にとっては無意識かもしれないけど、その行動が私たちを許したのよ。」


雲井も山形に同調するように言った。


「お前たち……!」

「ほら、早く頭を上げてください。僕は教官のそんな姿見たくないですよ。」

「はっ。言えてるな。」

「ありがとう…!私はいい生徒を持ったものだな。」


教官は頭を上げた。


「よし!じゃあ解散だ!」

「「「「ありがとうございました!」」」」


柊哉としゃくちゃんを除いたメンツが挨拶をした。

6人はそれぞれの道で家まで帰った。柊哉はその帰り、一言も話さなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日になった。

家に帰っても柊哉は終始無言だった。


「あの…なんか…ごめんね…?」

「うるさいなぁ…少し黙ってくれ。」


柊哉は冷たく言い放つ。そんな中予想外の来訪者が現れる。そいつの声は2階まで響き渡った。


「おひさー!」

「あらびっくりした!藍里ちゃんじゃない!」


母が対応している。八咫藍里。地元の友達だ。


「何しにきたの?」

「たまたま近くを通りかかってさ。てか、柊哉は?」

「それが…昨日から元気がなくて…」

「ふーん。ちょっと行ってくる。」


挨拶とは比較にならない小声で宣言する。階段を登る音が聞こえる。扉の前でしゃくちゃんと会った。


「あんた誰?」

「え?………まあ幼馴染かな?」


そういえば、しゃくちゃんと藍里は面識がない。しゃくちゃんは気まずそうに答える。


「ふーん…まあいいや。柊哉ー?入っていい?」

「え?…藍里…?なんで来たんだ?」

「そんなのどうでもいいでしょ。てか、入っていい?」

「入ってくんな。」

「あっそ…じゃあ扉越しにでも話すから。」


藍里は扉前で座り込んだ。扉の奥の柊哉と同じ姿勢で。


「珍しいじゃん。あんたがそんなになってるなんて。」

「…………自分で自分の感情がコントロールできないんだよ。」

「ふーん…」

「………藍里はさ、どうしようもなく自分が嫌いになったことはある?」


柊哉は心中を吐露した。


「うーん…ないかなあ…」

「はぁ〜….駄目だな…」


柊哉はため息をついた。


「なによ。生意気言って。」

「俺は最低なんだ。自分と一心同体のしゃくちゃんに嫌悪感を抱いてしまった。」

「しゃくちゃんってあんた?」

「……うん。」


藍里は確認した。今しゃくちゃんの存在を確認した。


「今覚えば軽い気持ちで浄霊師になった。だから少しのことでしゃくちゃんに恐怖するし、嫌になる…そんな自分が嫌になっちゃってさ。」

「そう…あんたさ。昨日から部屋に籠りきりなんでしょ?」

「そうだけど?」

「じゃあそのしゃくちゃんには会ってないわけだ。」

「………今は会いたくない。」


しゃくちゃんの心にはなにかくるものがあった。そんな様子を藍里は感じ取った。


「じゃあさ、しゃくちゃんに会ってみたら?」

「………嫌だよ。」

「嫌って言っても会わせる。」

「話聞けよ…。」


藍里は無理やり扉をこじ開けようとする。


「どけ!」

「どかない!」

「ふーん…じゃあいいわ。」


藍里は予想以上に早く諦めた。そう思っていた。


「おばさん。今から柊哉の部屋に入る。」

「でも、あの子が入れてくれないんじゃない?」

「無理やり入るの。だから先に謝っておく。」

「え?どうやって入るの?」


なにやら藍里には企みがあるようだ。柊哉は藍里がいなくなって安心している。そんな自分にも嫌気がさす。自分を説得にしにきた藍里を追い返してしまったのだ。


そんなことを考えてる時、窓の方から大きな音がした。


「は?何してんの?」

「あんたが入れてくれないって言うことなら私が入るまでよ!」


藍里はベランダに登り、石でガラスを破壊した。真っ暗な柊哉の部屋に一筋の光が差し込む。藍里が窓から柊哉の部屋に侵入する。


「よいしょ…ほら、入ったわよ。」

「何してんだよ!これ…」

「おばさんには許可とったわよ。」

「そう言う問題じゃなくて…」

「まあまあ、じゃあ、しゃくちゃんと会ってきなさい。」


そういうと部屋の入り口の扉を開けた。そこにはしゃくちゃんがいた。藍里は扉から出て2人の様子を見守った。


「あ…あの…昨日は!」

「俺に近づくな!」


柊哉は声を荒げて言った。その後、長い間が空いた。その間、柊哉は深い自己嫌悪に苛まれる。


「……………だから会いたくなかったんだよ…俺だってこんな態度とりたくない………」

「………あの時は、私も怒りで自分を取り乱してた….だから力を使っちゃった…怖かったよね…ごめんね…」


しゃくちゃんは柊哉を抱き寄せる。


「離せ…俺はそんなことされるべき人間じゃじゃないんだ…」

「私はそうは思わない。ほら、私はもともと霊でしょ?だから怖がられるのは当然だよ。だからそう自分を責めないで….?」


抵抗する柊哉を抱きしめて抑えつける。柊哉は観念して抱擁を受け入れた。


「私の気持ち….受け止めて…?」

「……………うん」

「ああ…よかった…」


しゃくちゃんは柊哉の頭を撫でる。しゃくちゃんの肩には水分が付着した跡ができた。藍里は嬉しそうに帰っていった。


「じゃあ、私はこれで、じゃあね。」

「おい、ちょっと待て。」

「なに?」

「ガラスどうすんだよ。」

「あ…おばさんに聞いて」


藍里は逃げるように帰っていった。それを追うように柊哉は部屋から出た。


そうですね。もうすぐ卒業ですかね。

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