専門学校
八尺様を憑霊させた柊哉。京平から送られてきた手紙をもとに浄霊師専門学校へと向かう。
1週間後…しゃくちゃんとの生活もだんだんと慣れてきた頃、家に勾一が来た。
「おう柊哉、元気か?」
「勾一か。元気だぜ。」
「今日はお前に渡したいものがあってな。」
「なんだ?」
勾一は懐から手紙を取り出した。
「京平からだ。」
「ありがとう。でもなんで勾一が渡しにきたんだ?」
「なにやら極秘情報らしい。よくわからんが、読んどいてくれ。」
「おう。わかった。」
それを済ますと勾一は帰ってしまった。
「柊哉。これなぁに?」
「なんか京平からの手紙らしい。」
「ヘぇ〜。中見てみようよ」
「うん。」
2人は京平からの手紙を開封した。そこには小さい紙切れが一つと便箋が一つ。紙切れには"草薙京平"と書いてある。確かに手紙の外側には名前が書いていなかった。外に書いとけよ。と思った。
肝心なのは便箋のほうだ。しゃくちゃんは便箋を手にとって読み出した。
「拝啓、八尺瓊柊哉様、しゃくちゃん様。」
「"しゃくちゃん様"はやばい。」
明らかな違和感に思わず口を挟みたくなった。
「まあしゃくちゃんが名前だからね。」
「確かに。さかなクン"様"みたいなもんか。」
「えーと….お久しぶりです。体の調子はどうですか?これから大切なことを話すからよく読んどいてね。」
柊哉の納得も受け流され、手紙の続きを読み出す。
「実は、浄霊師になる為には専門学校に通わないといけないんだ。でもその学校は特殊でね。一般人には知られてないんだ。」
「だから手紙でこっそり伝えようってわけね。」
柊哉はワクワクに胸を躍らせている。
「では早速学校の場所を…」
「お!」
「伝えようとしても伝えることができないんだ。教えてしまったら隠す意味がないからね。」
「はぁ〜?あの野郎今度あったらぶっ飛ばす!」
あまりにふざけた内容に柊哉は憤慨している。
「まあまあ落ち着いて柊哉。」
しゃくちゃんは慌てて柊哉をなだめようとする。どうしていいかわからないのでとりあえず抱きしめて頭を撫でておいた。柊哉は少し落ち着いたようだ。
「………まあいい。続きは?」
頭を撫でられながら柊哉は催促する。
「………まあ仕方ないさ。許してくれたまえ。ところで、柊哉はテストで酷い点数をとったことがあるか?そんなテストを隠す時、どこに隠すかな?俺だったら紙束の中かな。ほら、"木を隠すなら森の中"って言うだろ?」
「なんの話をしてるんだ?」
「さあ?続き読む?」
「まあ一応?」
「………専門学校ではな、幽霊を浄化する実技の時間もあるんだ。だから学校は霊の集まりやすいところにあるんだ。あ、これヒントね。あとのヒントはこの紙の中に書かれているから、探してね。それじゃ頑張って。………"草薙京平"…だって。」
「ここに名前書いてるんだったらあの紙切れまじでいらねぇじゃん。」
2人は専門学校の場所を探すべく、この手紙をくまなく読んだ。
「とりあえずヒントを書き出そう。まず、霊の集まりやすいところだな。」
「霊の集まりやすいところ?」
「うーん。例えば学校…あるいは病院とか。」
「なるほどね…他のヒントは?」
「そうだな…俺的には"木を隠すなら森の中"って言う言葉にも引っ掛かったな。」
「それはもう正直あからさまだよね。」
「つまり、霊を取り扱っている学校だから霊が多く出るところにあるってことか…?」
答えに一歩近づいた気がした。あくまで気がしただけだ。
「霊が多く出るところってなに?」
「さっきいった学校とか病院とかかな?」
「意外と墓地とかかもよ?」
「この文章に墓地の要素あるか?」
「そうなってくると学校の要素もないよね。」
「消去法でいくと病院…?」
2人は病院と言う結論に辿り着いた。
「病院っていってもいっぱいあるでしょ?」
「まあまずは大学病院にでもいってみよう。」
「ねぇ?この文字気づいた?」
しゃくちゃんはなんの意味もない紙切れを見せつけた
「どこに文字なんか…」
「ほらここ。ちょっと凹んでるのわかる?」
「うーん、わかるけど読めんなぁ。」
「こういうのはね。上から鉛筆で塗りつぶすと….」
軽く鉛筆をこすりつけると、凹み以外が色づき、凹んだところが白く浮かび上がった。
「おお!すげぇ!」
「えーと?掃除用具入れ?」
「そこが学校の入り口ってわけだ。いってみよう。」
2人はまずは近くの大学病院に向かった。
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ここは東都大学病院。日本最高峰の医療機関。所属する医師は数知れず。成功した手術、逆に亡くなった患者も多い。
「ここが東都大学病院か。」
「ここの掃除用具入れを探しましょう。」
この病院は4階建て。ワンフロアにつき四ヶ所部屋の塊がある。部屋の塊ずつに一つトイレがある感じだ。
一階には小児科、手術室、ICUなどがある。
二階には外科、内科がある。
三、四階には病室がある。
2人はそれぞれのフロアのトイレの掃除用具入れをくまなく調べた。時に不審がられようと、時に注意されようと、一生懸命調べた。そしてついに見つけた。それは医療機関とは無関係の、強いて言うなら病院内にあると言うだけのただのコンビニエンスストアだった。
「ついに見つけた…」
「まさか売店だとは思わなかったね…」
「さあ、はいろうぜ。」
掃除用具入れと書かれた扉を開けるとそこには小さい水道があった。
「……………これをどうするんだ?」
「多分….これをこう捻って…」
「え?なにしてんの」
しゃくちゃんは蛇口を捻った。蛇口の上の回すところではなく蛇口本体を捻った。すると小さい水道は下に収納された。そこに見えるのはこれまた小さいエレベーターだ。
「おお!すげぇなんかでてきた!」
ロマン溢れる登場に柊哉は胸が躍った。
2人はそのままエレベーターに乗った。
エレベーターが到着した先には1人の男性が立っていた。
「本日はどのようなご用件でしょうか。」
「ここに進学したくて…パンフレット的なのを貰えたらなと思いここまできました。」
「ああ。高校生でしたか。では、こちらの封筒をお受け取りください。」
紙が1枚くらいしか入っていないような薄い封筒を渡された。
「それを学校に持って行ってください。そこで入学の手続きを行なってください。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「では、きた道をお戻りください。」
見学とかはなく2人は帰らされた。
次の日、担任に封筒を渡した。
「浄霊師専門学校?ここに決めたの?」
「はい。ここに決めました。」
「でも、こんなこと知らないけど?」
「え?なんか書いてないですか?」
「ああ本当だ。…………ちょっと待ってて。いまパソコン持ってくるから。」
紙にはQRコードが印刷してあり、横には"読み込んでください"の一言が書かれてあった。
「お待たせ。ちょっと待ってね。」
担任がQRコードを読み込んだ。
「………………確かにあるようね。わかったわ。じゃあ、書類に記入しておきなさい。」
「わかりました。」
これで柊哉も進路が決まったようだ。
ちなみに浄霊師専門学校には試験の概念がなく、入学手続きの書類さえあれば誰でも入れるのだ。一部の人しか知らないのだからそれでも充分なのである。
翌年の4月1日、浄霊師専門学校の入学式が行われた。
一年生は5人。全校生徒は5人である。浄霊師専門学校では一つの学校につき一学年分しか受け付けない。それほど浄霊師の存在をひた隠しにしたいのだ。
一年生の名簿は以下の通り。
霧峰大輝
雲井幽依
竜飛大治郎
八尺瓊柊哉
山形健人
教室にはいると4人はもうすでに着席していた。扉が開いた音のした方向を4人は向いた。山形は不思議そうな顔をして小声で竜飛に聞いた。
「あれ?全校生徒って6人だったっけ?」
「いや?5人だったと思うけどなぁ。」
そんな2人には目もくれず、教官は席につけと指示を出した。柊哉の隣には霧峰が座っていた。
しゃくちゃんとは席がすこし遠くなってしまった。しゃくちゃんの隣には雲井が座っていた。雲井はその異様な存在を放つしゃくちゃんが気になっている。
「ねえあんた。一体何者なの?」
「わ、私?」
「そうよ。あんた以外に誰が居んのよ。」
「私は柊哉…あそこの男の子に憑依してる憑依霊よ」
「へぇ〜珍しいね。」
「そ、そうかな?」
「憑霊使い自体が珍しいんだわ。大抵の場合は憑霊させようとすると死んじまうからな。」
雲井の探究心は止まることを知らない。その探究心は柊哉にも向かう。
「ねえあんた。憑霊使いなんだよな?」
「え?ま…まあそうかな?」
「ガチ?珍しっ!」
隣にいた霧峰も反応しだした。
「俺生まれて初めて憑霊使いみたぜ!」
「なぁ、俺たちってそんな珍しいのか?」
「「当たり前だろ!?」」
目を輝かせながら2人を見つめる雲井と霧峰をよこめに、教官は話し始めた。
「えーこれからお前らを担当する早乙女寛太だ。話は簡潔に話したい派なんでな。パッパと済ます。」
ハンカチで額の汗を拭いネクタイを締め直して話し始めた。
「お前らはこれから浄霊師になる。浄霊師と言うのは危険な仕事だと思っとけ。命を雑に扱うな。あっという間に死ぬぞ。」
「浄霊師って結構危険なのか?」
「ああ。俺の親父も浄霊師だが、任務中に亡くなったらしいからな。」
「げ…まじかよ…」
早速雑に決めた進路に対して後悔が出てきた。
「浄霊師として覚えておくべきことが三つある。最悪この三つの言葉さえ覚えといたら浄霊師になれる!」
「よく聞けよ!」
「一つ!!"勇気を持って立ち向かう"」
「二つ!!"秘密は死守する"」
「三つ!!"驕らず謙虚に振る舞う"」
「なんか暑苦しいノリだな…」
「警察学校とかでも大体こんな感じだししょうがないんじゃない?」
「お前ら!復唱だ!一つ!……………」
こうして柊哉としゃくちゃんの新生活が始まった。
「まずは自己紹介からだ。1番端のお前から、前に出て。」
一番端に座っていた霧峰がゆっくりと立ち上がり、足を凍らせながら歩き出す。前に上がる時には呼吸が若干浅くなっている。
「えー…っと、霧峰大輝です。北海道から来ました。趣味は映画鑑賞で、最近少しだけ運動しています。東京に憧れて引越してきました。よろしくお願いします。」
拍手と共に自分の席に戻った。まあ無難な挨拶だっただろう。他人も自分もそう思った。次に指名されるのは俺だろうなと思いながら教官の指示を待った。
「じゃあ次は…そこの。メガネのお前!」
まさかの変化球。端を当てた次に当てるのは隣でもなく対極に座っているやつでもなく1番中途半端なところに座っているやつだとは。これには彼もびっくりだろう。
「え?は…はい!」
緊張のあまり声が裏返ってしまったようだ。これには同情してしまうな。と柊哉は思った。おぼつかない足取りで前に出てきた。
「え….た…竜飛大治郎です!しゅ…趣味は家でゲームをすること、あとは漫画を読んだりすることです。
よ…よろしくお願いします!」
若干顔を赤くしながら拍手を浴びた。次は誰が指名されるのか…緊張が走る。
「じゃあ次は右端のお前!」
「いや〜つぎおれか〜」
お気楽そうなやつが出てきた。あくびをぶっこきながら前に上がった。
「俺は山形健人。趣味はスポーツ観戦で、高校の時はバスケ部だった。最近はゲームも少しハマってる。みんなよろしくな。」
見た目通り陽気な性格のようだ。人は見た目で判断してはいけないというが、見た目と中身がこんなにも一致している人は初めて見る。若干のアイスブレイクにもなったようだ。先ほどの緊張感が薄くなっているのを感じる。
「じゃあ次は碧髪のお前!」
「わたしね。ラストは任せたわ。」
ラストを押し付けられた柊哉。一気に緊張が走る。雲井は自信ありげに前に上がる。
「雲井幽依です。生まれも育ちも東京都。趣味は運動で特技はマラソン。実家では犬を飼っているわ。みんな、よろしくね。」
柊哉の番が回ってくる。帰ってきた雲井に
「面白いの期待してるから。」
と耳打ちされた。柊哉が緊張に包まれた。緊張の塊が前に上がった。
「………八尺瓊柊哉です。コンプレックスは名字で、テストのたびに自分だけ他の人よりも長く名前の書くのでハンデを1人だけ背負わされてました。あの白い服の人は俺が憑霊させた霊です。実体があるので仲良くしてあげてください。よろしくお願いします。」
拍手を浴びながら帰ってきた柊哉に雲井はまたもや耳打ちをした。
「結構やるじゃん君。」
「うるさいやい。」
「これで自己紹介は終わりだ。次からは本格的な授業に取り組む。それまで各自休憩だ。」
次のコマまで休憩になった。この休憩時間中は6人で集まっていろんなことを時間ギリギリまで話した。柊哉の新生活のスタートはいいものとなった。
やっとこさ本編。文書がなんかおもんないのは相変わらずですわ。




