最初の講義
無事浄霊師専門学校に入学できた柊哉としゃくちゃん。
自己紹介も済まし、最初の講義が始まる…!
休憩時間が終わり、教官が部屋に入ってきた。
「まずお前らにこの学校について説明する。この学校の全校生徒は5人。お前らのことだ。そして、教官が1人。これは俺のことだな。」
「全校生徒5人ってマジ?」
あまりに衝撃だったため霧峰に聞いた。
「ああ、マジだ。お前聞いてないのか?この学校は隠されてあるって。」
「隠すにしても限度があるだろ。5人て」
「じゃあ次は浄霊師としての基本的なことを話す。喋らずによく聞けよ。これから難しい話をするからな。
遠回しに注意された気がした。これから難しい話をするという情報に柊哉は一気に気分が下がった。
「まず、私たちには生のエネルギーがあり、霊には死のエネルギーがある。そして、死というのはそれらのエネルギーが完全になくなることだ。つまり、0の状態を指す。そして霊というのは一回死、つまり0を経由して成る存在という訳だ。ここまではわかるか?」
「しゃくちゃんわかった?」
「うーん…ちょっと難しいかも…」
「なかなか難しいだろう。最初は皆そんなもんだ。」
教室が疑問符で埋めつくされた。そんな様子を見かねた教官がわかりやすく話してくれるらしい。
「これは一回数直線に例えるとわかりやすい。0、つまり死を真ん中に置き、マイナス、つまり死のエネルギーを左側、プラス、つまり生のエネルギーを右側におく。人間や生きているものには生のエネルギーがある。それが時間によって0に近づく。死に近づくという訳だ。死というものは全てが無くなる。それこそ0になる。だが強すぎる感情は時に0になれない。恨み、嫉妬、愛…………そんな残留物が0から死のエネルギー、つまりマイナス側に変化する。それが霊だ。」
「つまり…?」
柊哉が霧峰に聞いた。霧峰が答えるよりも先に教官が答えた。
「つまり、生物が死ぬ時には全てが0になるが、0になれなかった強すぎる感情が死のエネルギーに変質する。これが霊の正体だ。」
「なるほど?」
「しっかりメモ取っとけよ。」
生徒は必死にメモを取っている。柊哉は正直あんまりピンと来ていないが、あとで聞けばいいやと内心思っていた。
「次は霊の体、霊体についてだ。例年ならみんなが1番苦戦するところなんだがな。今年は霊がいるからな。わかりやすく説明ができるぞ。」
「あんたのことじゃない?」
雲井はニヤつきながらしゃくちゃんに話しかける。
「じゃあそこの憑依霊。前に来い。」
「いってらっしゃい憑依霊ちゃん。」
揶揄われながらしゃくちゃんは前に出た。
「さっき死のエネルギーが霊だと言ったな。しかし、エネルギーだけじゃ形を形成できない。」
「じゃあさっきの嘘じゃん。」
「嘘じゃないぞ。人間には生のエネルギーがあると言ったな。人間とか生物という器の中に生のエネルギーが入っているっていう方が正しいがな。」
「でも霊は感情だから器ないじゃん。」
「そうだ。良いところに気づくな山形。その観察眼は浄霊師に取ってすごく重要だと私は思うぞ。」
「ありがとうございます!!」
山形は色々なところに気がつける人のようだ。
「では、この憑依霊は死のエネルギーの塊なのかというとそうではない。八尺瓊。お前はこいつに触ったことがあるか?」
「当たり前だろ。」
「そうだよな。実際こいつは霊なのには触れることができる。しかしエネルギーは実体を持たないので触れられない。じゃあなんで実体があるのか。ところで八尺瓊。こいつがどういう霊か知ってるか。」
「そりゃ知ってるさ。」
「それをどこで知った。」
「祖父から聞いた。」
「そう、人から聞いた。つまり人々の噂だ。こいつの体のような霊体は噂から発生する。つまり、強すぎる感情が変質した死のエネルギーを噂という器に入れて実体化している。これが霊体だ。」
「ちょっと板書してくれないとわからないよな。」
山形が竜飛に愚痴を漏らす。教官はそれに対して答える。
「確かにそうだな。でもこの話は板書が難しくてな。ちょっと勘弁してほしい。」
「えぇ〜でも少しくらいは書かないとわかんないっすよ〜。
「うーん…じゃあ今の説明をすごくわかりやすく書こう。」
教官は大きく式を書いた。
死のエネルギー➕噂=霊
「どうだ?すごく簡単にいえばこうだ。死のエネルギーに噂という器が合わさって霊になる。ところで、お前はなんという霊なんだ?」
「私ですか?」
「他に誰がいるんだ。」
「私は八尺様らしいです。」
「おお!それはすごい!」
「何がですか?」
「みんな、八尺様という名前は一度は聞いたことがあるだろう。」
「あるぜ流石に。」
「私も聞いたことが….」
「北海道でも有名だ。」
「え?俺知らなかったんだけどそんなに有名なの?」
みんなが驚愕の目を柊哉に向ける。
「まあ、認知度は90%ってところか。お前は多分めっちゃ強い霊だぞ。霊というのは噂が広まっているほど強い。お前のような有名な霊は強いんだ。」
「わたし、ちょっと調子乗っちゃおうかな?」
しゃくちゃんはふざけだした。待ってましたと言わんばかりに教官は次の説明を始める。
「と、浄霊師になるとこういう輩が出てくるので先ほど伝えた3つの言葉について教える。戻れ。」
釘を刺されたしゃくちゃんは顔を赤らめながら席についた。
「まず一つ目の言葉。勇気を持って立ち向かう。霊を舐めるな。舐めたやつから死ぬ。常に勇気を持て。そういう意図がある。いいか?真の勇気とは相手をみくびらず、自分を過信せず、出来るだけのことを全力で行なうことだ。そんな意味が込められている。」
「ちょっと省略しすぎじゃない?」
「長いからしょうがない。短い方がまとまりがいいからな。黙って受け入れろ。」
霧峰が思わずツッコんだ。教官もこれに関してはこうとしかいえないらしい。
「次に二つ目の言葉。秘密は死守する。これはさっきの霊の話と繋がってくる。霊というのは噂や言い伝え、伝承などによって広まり強くなっていく。逆にいえば話を知る人が少なければ霊は弱くなるという訳だ。浄霊師がところ構わず情報を話しては情報を知る人が増え、それが霊に関することだったらその分だけ霊が強くなる。だから秘密は死守しなければならない。これがなんやかんや1番大切だ。」
「お前、情報をあんま喋んなよ?」
「僕はコミュ障なんで大丈夫ですよ…」
コミュ障がこれほど心強いと思ったことはないだろう
「最後に三つ目の言葉。驕らず謙虚に振る舞う。これは一つ目のやつに若干被るけど、人というものは力に溺れて驕ったものから死ぬ。さらに自分を過信すると失敗した時に自信を失う。自分を信じられなくなる。そんなやつが浄霊師の仕事をしても犬死にするだけだ。だから最初から驕ることをやめるようにするんだ。常に自分を疑え。そして態度で示せ。これがこの言葉が伝えたかったことだ。」
「すげぇ!感動したぜ!」
「そうだろうそうだろう!この言葉を胸に刻め!」
「今ちょっと驕ったよね。」
大治郎が小声で挟む。
「おい今いい感じだったのに。」
「すみません。」
教室に充満してた緊張感が緩みみんなから笑いが込み上げるようになった。
「今日の講義はここまでだ。次回は武器の説明から始めるぞ。」
放課後が始まった。柊哉は早速わからなかったところをクラスメイトに聞きに行った。
2話目でした。一応次回から戦闘が出てきます。




