↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
専門学校編
7/67

実践演習【前編】

ついに始まった実践演習。みんなは霊を浄霊できるのか!?

「実践演習って言っても、どこでやるんだ?」

「そりゃこの上だろ。」

「上?ああ、大学病院ね。」

「でもまだ昼だぜ?」

「あ…」


教官の額に汗が現れた。


「教官?昼に還具を振り回すのか?」

「えー…お前ら一旦帰れ。そして夜になったらまたこい。」


教官は咳払いをして指示を出した。


「え…これから夜まで暇?」

「そうだな。」

「教官還具はどうしたらいいですか?」

「一旦預かる。」


皆はそれぞれ還具を手渡した。


「じゃあ一旦解散!」

「はーい…」


みんなは一斉に帰路に着いた。


「お前らちょっとまて。」

「なんですか。まだ何かあるんですか。」


柊哉が呆れた様子で聞き返す


「お前ら別々のエレベーターで帰れ。」

「なんでそんなめんどくさいことを。」

「この学校は隠匿されているんだ。同じ出口から一斉に6人が出てきたらバレるだろ。」

「確かに。じゃあしょうがないか…」


5人は別々のエレベーターに向かった。


「なんか暇になったな。これからどうする?」

「僕は家でゲームをしますよ。まだクリアしてないんです。」

「へぇ〜なんてゲームだ?」

「バケモンです。バケットモンスター。」

「あああれな。CMでやってるから知ってるぜ。俺も買おうかな。」

「面白いですよ。買いに行きます?」

「最近バイト代入ったし買いに行くか。」

「いいですね!行きましょう!」


予定ができた2人とは裏腹に、予定のない雲井はなんとかして予定を作ろうと模索していた。


「ねぇあんたなんか予定ないの?」

「ないな。」

「えぇ〜つまんないって…。」

「そんなの言われてもなぁ。」

「そう言えばあんた。北海道出身なんだよね?」

「そうだけど?」

「それなら私が東京を案内してあげる。」

「あー…そうだなー…」


正直霧峰はめんどくさかった。適当に家に帰って寝るはずなのに急に予定が入ってしまったせいだ。


「実は今日は予定が…」


霧峰の目が泳いでいるのを雲井は見逃さなかった。


「嘘ね。」

「ほんとだ。」

「じゃあその予定って?」

「い…家で寝る…」

「そんなのは予定って言わないの。じゃあ東京観光決定!」

「えぇ〜…」


霧峰は雲井に強引に連れてかれてしまった。


「俺たちはどうする?」

「適当にご飯食べて家に帰ろうよ。」

「それもそうだな。」


各々各自の予定を済ました後…夜10時ごろ、6人はもう一度学校に集まった。


「昼に来るのと夜来るのとじゃ雰囲気が違うわね。」

「お….おうそうだな…ところでこの袋もう置いていいか?」


両手に紙袋を持った霧峰が雲井に尋ねた。


「教室まで持って。地べたはやめて。」

「ちっ…わーったよ。持てばいいんだろ持てば。」

「物分かりがいい子ね。」

「おお…大荷物だな…少し持とうか?」


山形と竜飛が合流した。心配した山形が霧峰に助け舟を出す。


「いいのよ。こいつ、私のデート断ろうとしたんだから。」

「いやあれは急だから…俺にだって予定は…」

「あれは予定って言わないの!」


やれやれといった感じで山形と竜飛は見つめ合った。


「ちなみにその予定ってなんだったんだ?」

「家で寝ることだ。」

「いやそれは予定とは言わないんじゃないか?」

「やっぱそうよね!」

「僕らもそんなに変わらないのではないですか?」

「いや俺たちはゲームという娯楽をやっていただけで惰眠を貪ろうとしてた霧峰とは違うから。」

「起きてるだけこいつよりはマシよね?」

「おう霧峰、重そうだな。」

「八尺瓊…持ってくれないか?」


次に柊哉としゃくちゃんが合流した。柊哉は霧峰に助け舟を出す。


「ねぇ聞いてよしゃくちゃん。こいつ私のデートを断って家で惰眠を貪ろうとしてたのよ。」

「へ…へぇ〜そうなんだ?」

「だからこいつに全部持たせてんの。」

「ちなみにお前らはなにしてたんだ?」


山形が聞いてきた。2人は答えたくなかった。その答えを出すと霧峰と同じ目に遭うと思ったからだ。


「お、俺たちは…しゅ…趣味をしてたぜ…」

「へぇ〜。ちなみにどんな趣味?」

「え?気になる?」

「気になる」


雲井の探究心は抑えきれない。


「す、睡眠っていう趣味…」

「しゃくちゃんも?」

「え…えへへ…」


荷物持ちの職務はは柊哉としゃくちゃんに託された。


「なんで俺たちが…」

「寝てたんだからできるでしょ?」

「寝てたんだからできないだろ…」

「でも、もうすぐ着くから…」


柊哉としゃくちゃんは息を切らしながら教室にたどり着いた。


「どうしたお前ら。息を切らして。」

「な…なんもないです…」

「ではこれから実践練習の時間だ。武器をもう一度配り直す。」


雲井は短刀、霧峰はショットガン、竜飛は刀、山形は槍をそれぞれ手に持った。


「八尺瓊はないのか?」

「八尺瓊には憑依霊がいるからな。還具がなくても霊に立ち向かえる。」

「そうか…」

「では、今回はこの大学病院に出ると言われている霊を浄霊する。分布はこんなところだ。」


全員が息を呑む


「まずは地下一階の駐車場に一体。次に空き部屋の404号室と308号室に一体。そして小児科のフロアには子供の霊が多数目撃されている。」

「今回の場合、霊体を崩壊させるにはどうしたらいいんだ?」

「今回は霊体を持っていない霊しかいない。なのでシンプルに浄霊するだけだ。」

「わかった。」

「よし、では行こう!」

「ちょっと待て!」

「なんだまた待たせるのか!」


今日の教官はよく人を待たせる。


「それぞれの霊の情報をまとめた資料だ。」


教官は封筒を人数分手渡した。


「これは?」

「これがないと霊を浄霊できないだろ。では行こう。」

「押忍!」

「そういうノリなん?」

「違うのか?」

「違うと思う….」


6人はエレベーターで上に昇った。トイレに出た時雲井が話しかけた。


「実はわたしは降霊術を使うの。だから準備のためにここを動けないわ。」

「1人で大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。護身用の還具はあるから。」

「そうか…気をつけろよ…」


霧峰の心配もいらないようだった。


「さて、役割分担をどうするかだな。どうする?」

「持ってる武器は…槍、ショットガン、刀。」

「竜飛と山形で小児科に向え、おれは308号室の霊を浄霊しに行く。」


霧峰が仕切る。それに竜飛と山形は合わせた。


「八尺瓊としゃくちゃんは404号室に向かってくれ。わかったか?」

「おうよ!」

「任せて!」

「じゃあ、解散だ!」


6人はそれぞれの持ち場に向かった。


霧峰は308号室へと向かった。この大学病院病院は30N号室と40N号室が同じフロアにある。必然的に柊哉としゃくちゃんとは同行することになる。


「ここが308号室か…霊なんてどこにいるんだ?」


パッと見霊はいないようだ。霧峰は病室から出て308号室の霊の情報を確かめた。


(この霊は交通事故によって片足を失っていて、その恨みが霊になっているようだな…)


資料を読んでいると、病室の方から気配がした。ドアを少し開けて中を覗くと片足のない霊が病室にいた。


(いた…!)


霧峰は病室に入って霊の情報を話し出した。


「お前は交通事故で片足を失った!その恨みは死んでも消えずにこの病室に留まってるってわけだ!」

「……………アア………ナンダオマエ…………リョウアシガアルクセニ……………」


ノイズ混じりの声で霧峰に話しかける。部屋の温度が体感下がった気がした。


「オマエノ…………アシ……………ヨ………コ…………」


霊の体の原型がだんだんと崩れていく。部屋の温度が明らかに下がっている。


(いまか…?)


霧峰はショットガンを打つタイミングを見計らっている。


「アシアシアシアシアシアシ……………!!!」


原型を保っていない霊が襲いかかってきた。霧峰の指はかじかみと恐怖で震えている。


「今だ!!!」


霧峰はショットガンの引き金を引き霊に命中させた。


「アアアアアアアア……………」

「安らかに還れ…」


霧峰は霊との戦闘を終えた。その頃、雲井の降霊術の準備も完了していた。


「おいでください…。」

「あー…あれ?幽依ちゃんじゃん。どしたん?」

「ちょっと力を貸して欲しくてさ。」


雲井は結構フラットに霊と話す感じらしい。


「俺はなにしたらいいの?」

「実は私浄霊師になりたくて。今は実際に浄霊しようっていう講義なんだ。」

「へぇ〜。なるほどね。で、俺の力が欲しいわけだ。」


この霊は物分かりがいいようだ。


「そうそう。お願いできる?」

「いいよ。じゃあなんかぬいぐるみとかある?」

「え?ないけど…」

「ええ〜困るよそれは。」

「そうなの?ごめんね?」


雲井まさかの失態。本当は0に還っている霊を降ろすのが降霊術なので、霊を入れる器を人工的に作らないといけない。それが降霊術のルールなのだ。


「あ〜忘れてたわ…どうしよう。じゃあさ、この還具に憑依するってのは?」

「いいよ。でも接続時間が短くなるから、ここぞというタイミングで呼んでね。」

「わかった、ありがとう。」


降霊させた霊をトイレに置いて雲井は駐車場へと向かった。襲ってきたら霊を呼び出して力を借りるという算段だ。


「あれが霊ね…どんな霊なのかしら…」


雲井は資料を読んだ。


(この霊は医者。看護師と不倫関係にあった…そんな関係を続けていくうちに妻より看護師の方が好きになっていった。そして、不倫を知った妻にここで殺された。その看護師への恋が霊体。)

(厄介なのが、妻も自殺しているところね。この医者を浄霊しようとしたところに妻の霊が来る可能性もある。夫に対する怒りが霊体となって現る可能性もあるという点…そこが懸念点ね…)

「ビビったって始まらない。いくわよ雲井幽依!」


雲井は覚悟を決めて地下駐車場へと向かった。霊の前へと飛び出して正体を見破った。


「あなたは昔ここの医者だった。そんなあなたはある看護師と関係を持ってしまった。その看護師への愛は妻に対するものよりも大きくなった。しかし、それを知った妻によって殺されてしまった。死後もその看護師を思う気持ちが消えないまま霊になってしまった。そうでしょう?」

「……………そうだな………私は妻がいるのにシホに恋をしてしまった………そんな男死んで当然だな………」


霊ははっきりとした口調でそういった。 雲井は内心困惑していた。その霊は襲いかかってくるどころか反省のようなものを始めたからだ。


「ありがとう………自分の愚かさが再認識できたよ………」


霊は消えてしまった。雲井は呆気に取られた。


「幽依ちゃん!前!前見て!」

「え?」

「あんた………………私の夫をどこへヤッタ!!!」


包丁を持って霊が襲いかかってくる。さっき言っていた妻の霊だ。


「あぶな!!」


間一髪で包丁を躱すが霊はずっと雲井を狙ってくる。


「どうする?」

「まずは霊体を崩壊させる!」


切先を向けて突撃する霊を躱しながら霊に話しかけた。


「あんたに話がある!」

「オットヲカエセエエエエエエエエエエ……」

「あんた、ほんとは気づいていたんじゃない?夫が不倫してるって。」

「ダマレクソガキガ!ワタシニタテツクナ!」


霊は取り乱しているが、雲井は落ち着いて話す。


「でも裁判沙汰にはしたくなかった。それはなぜか。不倫していてもなお夫を愛していたからよ。だからあなたは夫を殺して自分も殺した。」

「ダカラナンダ!アイツハサイテイナヤツダ!」

「じゃあなんで今私を殺そうとしているの?夫を消した私がどうして憎いの?」

「ウルサイウルサイウルサイ!」

「あなたは優しい人だから夫を傷つけたくなかった。だから看護師を殺さなかった。違う?」


「チガウチガウチガウ!」


霊の言葉にノイズがかかり出した。形も不安定になってきている。


「あなたは死後の世界で夫と一緒に暮らしたかっただけなんだよね。」

「ダマレ!シッタヨウナクチヲ!」


霊が少し怯んだ。その隙に雲井は今降ろしている霊を還して、降霊術の準備を進める。


「ワタシガヤサシイ…ソンナハズハナイ…」


ノイズ混じりの声で自問自答をしている。雲井の降霊術がもう少しで終わりそうだ。


「そう、あなたは優しい人なんだよ。」

「ウルサイ!ダマレエエエエエエ!」


霊は取り乱しながら包丁をこちらに向けて突撃する。

そんな霊の腕を掴み、包丁を振り落としてから雲井は霊に抱きついた。それと同時に降霊術が完了した。雲井が下ろした霊はさっき浄霊した医者の霊だった。


「ごめんな…俺のせいで…」


妻の霊はその声ではっきりとした感情が戻り、涙を流しながら雲井を抱き返した。


「…あなた…いいのよ…これからはずっと一緒だから…」


雲井の上半身に走る感覚は消えかかっている。それと同じく、降霊術の効果も切れかかっている。


「お前はほんと優しいな…」


雲井は妻の霊の頭を撫でた。上半身に走る感覚はもう消えていた。それと同時に降霊術の効果も切れた。


妻の霊を浄霊した雲井はどっと疲れが来た。


「はあ…疲れた。こんなんだったら家で寝とけばよかった…」


雲井はそのまま眠りについた。

雲井に最初に呼ばれた霊が不憫で仕方ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。