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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
滋賀編【前編】
65/68

出現

3つのグループに分かれて調査することになった柊哉たち。それぞれの場所で七不思議が牙を向く…!

気がつくと2人は畳の上にいた。


「「…………うわあああああああ!!」」

「あれ?どこやここ?」

「さあ?」


その時2人の脳内に音声が流れた。


("目の前で寝ているこのおっさんはこの城の城主です。今から敵が攻めてきます。このおっさんが30分間殺されないようにしてください。手段は問いません。")


「今の聞こえた?」

「聞こえた。なんやろうな。」


また声が響く。


("それでは始めます。")


「ちょちょちょまて!」


声が聞こえなくなると同時に武士が襖を突き破ってきた。


「天誅ー!!」

「くそっ!」


勅使河原はポケットを手探っている。


「ちょっと!ないん?」

「今探してる!」

「もう!」


千里は大幣をくるくると回転させて武士の顔面を貫いた。


「天誅ー!」

「もう!鬱陶しい!」


千里は襖を閉め、護符を貼り付けた。護符は爆発し、襖を吹き飛ばし武士達を薙ぎ倒した。


「覚悟!」


天井から忍び装束の男が飛び降りた。


「あ…!」


千里は振り返った。しかし、どうしても間に合いそうにない。忍びが城主の首元に刀を向けて落下した。


…


その時忍びの頭を銃弾が貫いた。


「あぶねーあったわ。」

「もう…!びっくりさせんでよね?」

「ああすまんな。」


銃声を最後に音が何一つとして鳴らなくなった。


「なんか…逆に怖いな。」

「ほんまにな。」


2人はゆっくりと後退していった。そのうち2人は背中をくっつけあい、背後を任しあった。


その時左右の襖が同時に開いた。


「「天誅ー!」」


((きたっ…!))


勅使河原は正確に武士の顔面に銃弾を当てていく。

千里は大幣を鎌状に変形させ、次々と武士の首を狩っていく。


2人は敵を倒し続けているはずなのに一向に武士は減らない。


「こんなんきりないで。」

「どうすんの?」

「どうもせん?ただここで30分間耐えるだけや。」

「はぁ…なんでこんなことになってん…」

「しらんがな。」


勅使河原は正面の武士の顔面を射抜く。そしてポケットからもう一丁の拳銃を取り出し、左手に持った。

勅使河原は両手の拳銃で確実に武士の顔面を射抜いた。


千里は護符を使用した。


「貫け…」


護符から無数の杭が現れ、武士の胸を貫いた。


「覚悟ー!」

「うざい。」


千里は振り下ろされた刀を大幣で受け止めて武士の体に護符を貼り付けた。そしてそのまま後ろに蹴り飛ばした。

貼り付けた護符は爆発して武士は後ろに吹き飛ばされた。そのまま後方の武士も一緒に薙ぎ倒した。


("5分が経過しました")

「まだ5分かいな…なっがいでほんまに。」

「なあ、気づいたことがあるんやけど言ってええか?」

「勝手にどうぞ?」

「この世界変やで。爆発したもんが復活しよった。」

「まあどう考えても異世界やし不思議じゃないやろ。」

「ああ、そうやな。」

「そうや。…まあ気付きは大切やな?」


勅使河原は唐突に後方に向かって銃弾を二発撃ち込んだ。畳の下から姿を現していた忍びが2人、頭から血を流して倒れていた。


「びびった…お前しばくで。」

「奇襲に気づいて対応した俺を褒めるべきやと思うけどなぁ。」

「いやぁすごいけど…一言言ってほしいわ。」

「それは俺が悪いわ。」

「じゃあチャラな。」

「しゃーなしか。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃悠悟とあやめは…


「ありがとうな。じゃあ俺らはこれで…」


悠悟はあやめの手を握り、トイレから出ようとする。


「ちょい待て。」


そんな2人を花子さんは強めの口調で呼び止める。


「なんやねん。」


悠悟はだるそうに振り向き、花子さんを睨み付ける。


「まさかタダで情報を得ようとは思ってないやろな?」

「え?思ってるけど?」


花子さんは舌打ちをし、ため息を吐いた。


「がめつい野郎やな。まあええ。情報をあげたんやから私の言うことも聞いてくれや。」

「ええ〜?めんどいしパスな。」


悠悟は再びドアの方に目線をやった。


「きけや…」

「めんどいなぁ…なんやねん。」


悠悟は舌打ちをして再度花子さんの方を向いた。


「いまからいう物を持ってきてほしいねん。」

「パシリやんけ。ふざけんなよガキ。」


年下にデカい態度を取られるのが嫌いな悠悟とってはかなりのストレスを与える言葉であった。


「情報をあげたんやからええやんけ。」

「あかんわ。なんでガキのパシリなんかされなあかんねん。」

「は?私が優しいうちにゆうこと聞いといた方がええぞ?」


悠悟はため息を吐き、あやめの腕を抱き寄せた。


「……やって。怖いなぁあやめ。」

「ね。こわいこわい。」


花子さんは肩をプルプルさせている。そのうち花子さんのオーラがどんどんと禍々しいものになっていくのを2人は感じ取った。


「うわ。正体表したな。」

「お前がいうこと聞かんからやろが…」


先ほどの年相応の声色ではなく、ドスのきいた、ヤクザのような声色になっていた。


「どうするあやめ?」

「えー…うち武器ないで?」

「じゃああいつは?」

「うーん…一回聞いてみる。」


あやめは目を閉じた。


「おいガキ!あやめさんが本気を出したらてめえなんか一発だかんな?あんま舐めんなよ?」


悠悟はもしかしたら自分たちが優勢になるかもしれないということを悟り、強気に出た。


「その強がり…いつまで保てるかな?」


花子さんのオーラは次第にドス黒いものになっていく。その時あやめが目を開けた。


「無理やって。」

「えーなんでなん。」


悠悟はひどく落胆した。


「普通にゆーくんが悪いからあかんって。」

「えーおれなん。」

「うーん…しょうがないしさ。聞いてあげようよ。」

「しゃーないな…何を持ってきてほしいんや?」


悠悟不服そうに問いかける。


「まずは水買ってきて。」

「なんでもええん?」

「おん。自販機で買えよ?」

「わかっとるわ。」


悠悟はあやめの手を握りながらトイレを出た。


「………………なああやめ、バックれへん?」


その時ドアが開いた。


「もしバックれたら殺すからな。」

「あーはいはいわかったから。」


悠悟は呆れた表情を浮かべて階段を下った。


「完全に読まれてたね。」

「もー…だるいわぁ…」


悠悟は昇降口から外に出て、自動販売機で水を買った。


「てか俺の金で買うんかよ。あんのクソガキ…」

「あはは…」


2人はトイレに戻ってきた。


「はい。じゃあ今度こそこれで。」

「終わるわけないよね?」

「…………次は?」


悠悟のストレスが結構溜まってきた。


「職員室にある卒業アルバムをもってこい。」

「は?それって泥棒やんか。」

「だからなんやねん。」

「そんなんするわけないやろボケ。」

「情報。」

「…………チッ。やればええんやろやれば。」


悠悟のストレスは限界に近づいてきている。


「バックれたら…わかってんな?」

「うるさいなぁ…黙れ。」


悠悟はあやめと共にトイレから出た。


「そういえば何年か聞いてないな。」


悠悟はトイレのドアを開けた。


「何年のやつ?」

「昭和25年。」

「古っ。そんなんあんの?」

「あるんちゃう。」

「あっそ。」


悠悟はトイレのドアを閉めた。


「クソガキ…」

「まあまあ。」


悠悟はイライラしながら職員室に向かった。


「ここって空いてんの?」

「さあ?」


悠悟は扉に手をかけた。


「空いてないやん。」

「えーどうすんの?」

「もうバックレるしかないやん。」


…


4人とわかれた柊哉としゃくちゃん、竜飛の3人は3階に向かった。


「出会うとしたらなんやろう。」

「人体模型じゃないか?この辺って確か生物・化学室あるだろ。」

「じゃあそこにいってみようよ。」

「せやね。」


3人は生物・化学室に向かった。


「ここな。」

「鍵はあんの?」

「あんで。」


竜飛は鍵を開けた。


「うわー…なんかいやな雰囲気。」

「やっぱそういうのわかるんや。」

「うーん…これはちょっと警戒した方がいいかもしれないなぁ…」


柊哉は部屋全体を見渡した。


「あれか?」


柊哉は人体模型を発見した。


「人体模型や…動くんですかね…」


竜飛のそのセリフで、柊哉はあることに気づいた。


「お前敬語使ってんの久々に聞いたわ。」

「え?僕敬語使ってませんでした?」


竜飛が目を丸くして驚いた。


「使ってなかったけど?」

「ええ嘘ん。まじかー…」

「ほら今も。」

「ああ…もうええかな…」

「キャラ付けのためには使った方がいいと思うな…」

「しゃくちゃん?」

「なあに?」

「あんまそういうこと言わないで?」


そういうことを言われると困るのは私である。


「ごめんなさい…」


反省しているなら私はそれ以上咎めるつもりはない。


「で、これどう動かすんですかね?」


竜飛は人体模型の顔面をべたべたと触り出した。


「ばかお前…あんま触んなよ…」


その時人体模型の目が竜飛の方を向いた。


「へ…?」


人体模型は竜飛の腹部を思いっきり殴りつけた。


「竜飛!!」


飛んできた竜飛を柊哉は受け止めた。

人体模型はゆっくりと歩き出した。


「あ…どうしましょう…」

「逃げるぞ…俺が合図したら一斉に部屋から出るんだ。」


空気が止まった。息を呑む音だけが鮮明に聞こえてくる。


「…………………今だっ!!」


柊哉は合図を出した。そして3人は一斉に部屋から出た。


「……笑止。」


人体模型は屈み、足を伸ばして踏み込んだ。それはまさにクラウチングスタートであった。


…


3人は階段のほうに向かった。


「2階にいくぞ!」

「うん!」


3人は階段を素早く降りた。それを見ていた人体模型も階段に向かった。


「音聞こえるよ!」

「やつめ。追ってきたか…」


3人は体育館の方に曲がった。そしてまた右に曲がる。


「どっちだ…?」

「今度も右に行ってみよう。」


3人は右に曲がった。その先は職員室。悠悟とあやめもいた。


「あれ?なにしてん?」

「どいてください!」

「は?」


その時大きな音を立てて角を曲がる何かが見えた。それは人体模型であった。


「見つけたぞ。イタズラ小僧めが…」


人体模型はさらに加速する。


「なんやねんあいつ!」

「七不思議の一つですよ!」

「うわっ!!こっちくるやんけ!」


悠悟はあやめを抱き寄せて咄嗟に左の方に逃げた。

スピードを上げていた人体模型は止まるとことができず、そのまま職員室のドアに突っ込んだ。

ガラス製のそのドアは猛スピードで突進してくる人体模型の勢いに耐えきれず破壊された。


「ナイスすぎる!」

「先輩…!やつは?」

「職員室に突進してった。」

「なんですかそれ…」

「ほら。みてみ。」


柊哉たちは言われるがまま覗き込んだ。


「ほんとうですね…」

「やろ?…で、どうすんの?」

「もちろん、戦いますよ。」

「いって〜…職員室あんの忘れてたわ…」


ガラス片が身体中に突き刺さった人体模型はまるで尻餅をついたときのような軽い反応をして起き上がった。

その隙に悠悟とあやめは職員室に侵入した。


「まじでだるいて。職員室あるんやったら言えや。」

「言っても止まらなかったでしょ。」

「それはそうやな。」


そういうと、人体模型は柊哉の目の前に現れた。

そして柊哉の腹部に拳を入れた。


「いっ…!」

「不親切な奴はこういう目に遭うんやぞ。」


さらに人体模型は回し蹴りで竜飛を吹っ飛ばした。


「ぐわぁっ…!」

「悪いなさっきから狙って。」

「無理やろ…」

「で、君は…霊やな。じゃあ殴れへんやん。」

「え?わたし?」

「そや。他に誰がおんねんな。」

「くそ…この野郎…」


柊哉が体を震わせながら立ち上がった。


「おおまだ立つか。すごいやん。」


人体模型と柊哉が対話している隙に竜飛はトイレの中に入った。

柊哉は震えた足でしゃくちゃんの前に行った。


「しゃくちゃんに手を出すな…!」

「いや出さへんよ。ていうか、出せへんよ。」

「ほんとうか…?」

「ほんま。」



人体模型は柊哉の背後に周り、背中から殴りかかった。柊哉は吹き飛ばされ、前面から倒れ込んだ。


「柊哉!!」

「このまま痛み苦しむのも可哀想やし殺したるか…」


人体模型は柊哉に飛び乗り、首に手を掛ける。


「ぐっ…」

「柊哉から離れて!!」


しゃくちゃんは人体模型の手を掴んだ。


「邪魔すんなよ。」


人体模型はしゃくちゃんの手を振り払い、押し倒した。


「きゃっ…!」


そして再度柊哉の首を締め出した。


「ぐっ…!」

「柊哉…!!」


しゃくちゃんは再度人体模型の腕を振り払おうとする。人体模型はしゃくちゃんの抵抗を気にすることもなく柊哉の首を締め続ける。


「柊哉!!」


柊哉の顔色は次第にピンクを帯びていき、口からは唾液が垂れてきている。


その時人体模型の背中にラバーカップが張り付いた。


「引っ張り出せ!!」


竜飛はラバーカップを全力で引っ張った。

人体模型の中の霊がラバーカップに引っ張られて出てきた。


「………あれ?どうなったん?」

「引っ張り出したんや。君をな。」


柊哉の首を締めていた力が解かれ、柊哉の肺に一気に空気が流れ込んだ。


「はあ…!はあ…!はあ…!」

「柊哉大丈夫?」

「ちょっと限界…」


柊哉が横たわっているなか、竜飛は霊と相対していた。


「どうすんの?霊体がない君はもうあかんで?」

「そうっぽいな。だんだんと体が崩壊していくわ。」

「はあ〜…なんか話すことあるかなって思ったけどなんもないわ。ばいばい。」


霊の体の崩壊はもうすでに首まで来ていた。


「別に大したことをされたわけちゃうから何もないし、はよ消えたいわ。」


そう言い残すと霊は消滅した。

竜飛は消えゆく霊に対して何一つとして言葉をかけることができなかった。

この体験は竜飛の心に残る出来事となった。

ルイージマンションやん。

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