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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
滋賀編【前編】
62/67

山に隠された闇

悠悟とあやめに留守番を託された3人。

2人はどうせ依頼なんか来ないというが、案の定依頼が舞い込んできて…!

翌日、高島支部には案の定依頼が舞い込んできた。


「すんまへん。わしらでは手が負えんのですわ。」


そう言ったのは依頼人の臨海(りんかい)。山奥の寺の坊主である。


「和尚がなんとかしてはるんですけど、もう体が限界で…」


臨海は悔しそうに語った。


「わかりました。伺いましょう。」

「僕はどうしたらええん?」

「ついてきて。支部は…まあいいんじゃない?」

「わかった。」


4人はそのまま支部を出て、車に乗り込み寺に向かった。


朽木村。滋賀県最後の村。高島市に合併された後も朽木の名を廃れさせないでいようと現在も朽木という名前が各地につけられている。


「ここですか…」

「ええ。飯綱寺(いいずなでら)です。」

「失礼します…」


3人は寺に上がった。


そこには臨海とは比べ物にならないほど高潔そうな坊主と1人の少女がいた。


「こちらは?」

「あの方がこの寺の和尚でございます。」

「藤覚(とうかく)です。」

「よろしくお願いします。」

「あなた方の話はお聞きしております。なにやら浄霊を行うのだとか。」

「はい。霊を浄化します。」

「なるほど…"悪人正機"というやつですな。」

「悪人正機?」

「悪人こそ救われるべきという思想のことです。」

「霊が悪人…?」

「感情のコントロールができない奴は悪人です。」

「そんなことは…」

「悪人正機の思想で行われる行為なら私は反対しません。しかし、なんの思想もなしにバカの一つ覚えのように浄霊をしていてはそれは真に浄化されているとは言えません。」

「それはどういうことですか…?」

「何かを思って感情を滞留させているような奴がなんの考えもない奴なんかに一方的に浄化されるなんて酷い話だとは思いませんか?」

「確かに…」

「霊を浄化するという行為は適当にやってるだけではいけません。真摯に取り組まなければならないのです。」


3人は藤覚の説法を聞いて自分にはない何かを考えさせられた。


「和尚。本題をお願いします。」

「ああすまない。では本題に移る。」

「よろしくお願いします。」


3人は畳の上に正座をした。


「ここにいる少女。こいつにはある物の怪が憑いている。そいつは非常に厄介でな。我々では追い出すことしかできない。」

「そいつを浄化させるのが俺たちの仕事というわけですね?」

「その通り。」

「わかりました!」

「そいつは夜にしか現れない。準備する時間は山ほどある。万全の状態で行け。臨海。案内を。」

「はい。みなさんわしについてきてください。」


臨海に案内されるがままについて行った。


「さあ、こちらです。」


臨海は重い鉄扉を力一杯あけた。

その先には大量の銃火器が並んでいた。


「これは…?」

「対物の怪用の銃火器です。よかったら使ってください。」

「ありがとうございます!」


柊哉は目を輝かせながら入って行った。


「これとかどうかな?」

「いいんじゃない?」


柊哉はアサルトライフルを手に取った。


「うーん。私はこれがいいと思うなぁ…」


しゃくちゃんはRPGを指さした。


「ああいいんじゃない?こっちの方が楽に終わりそうだし。」


柊哉はRPGを手に取った。


「すみませんこれ貸してください。」

「いいですよ。でも、このまま持って帰るつもりですか?」

「ああ…そうか…じゃあ予約って感じでお願いします。」

「はーい。」

「八尺瓊君。朽木には温泉があるんやけどさ。いかん?」

「温泉?いいねいこう!しゃくちゃんも行くよね?」

「もちろん!」


3人は温泉に向かった。

…


「じゃあ、俺らはこれで帰りますわ。」

「おう。またな?」


2人に見送られながら悠悟とあやめは高島支部に帰っていった。


「2人元気にしてるかなぁ…」

「どうやろうね。多分依頼は来てないから暇にしてるんちゃう?」


2人は支部についた。


「あれ?おらんやん。」

「どうしたんやろね?」

「ちょっと聞いてみるわ。」


「"どこいったん?"」


「ねえゆーくん。久しぶりに2人きりじゃない?」

「そうやね。」

「じゃあさ、ここ座って?」


悠悟はあやめのなすままソファに座らされた。

その時メールがきた。


「"今任務中です。"」


「任務中やって。」

「へぇ〜珍しいやん。」

「な。…てことはここ空やったん?まじか…」

「まあ盗られるようなもんおいてへんしええんちゃう?」

「確かに…」





ーーー(あぶね〜…!まじでバレるとこやった!)


赤い男はロッカーの中に咄嗟に隠れた。


(ここからでんと…はよ向こうの部屋行ってくれ…)


「ゆーくん疲れた?」

「疲れた…」


悠悟はソファに寝転んだ。

あやめはその上に寝転び、悠悟の唇を舐めた。


(まってくれ…こいつら今からおっぱじめんの?)


赤い男は落胆した。

あやめと悠悟は口付けを交わし合い、互いの舌を絡ませあった。部屋中にリップ音が響き渡る。赤い男にとってその音は絶望の音でしかなかった。


(終わったんやけど…長いやつやん…)


…


温泉から帰ってきた。時刻は夕方である。


「では今から物の怪を追い出す儀式を行う。」


藤覚はお経を読み始めた。


数十分後、空気が重苦しくなった。

少女の肩から白いものが見え始めた。


(なにこれ…?)


白いものはだんだんと形が露わになっていく。


(なんだこいつは…?)


少女の肩から白い化け物が現れた。首がなく、肩の横に顔がついており、口元はニタニタと笑っていた。


その化け物は山奥へと逃げて行った。


「今のは?」

「今のが例の物の怪、通称"ヤマノケ"です。」

「ヤマノケ…」

「和尚さん。」

「はい。なんでしょう。」

「この辺って間引きの文化があったんじゃないですか?」

「間引き?」

「昔、いらん子供を山に捨てるっていう文化があってん。農民とかは自分らが生きていくのがやっとやからって食いぶちを減らして収入を安定させるため行われてたんや。」

「そんなことが…」

「……そうだ。一見ひどい行為だが、後世までその血を継ぐことができる。しかし、1人犠牲になる。ガキ1人に情けをかけて一族が滅ぶか犠牲にして後世まで血を残すかの選択を常に迫られてたんだ。」

「トロッコ問題と似たような感じやな。5人を犠牲にして1人助けるか、レバーを動かして1人の方にトロッコを走らせて5人を助けるか…」

「…………」


柊哉は現実に苦しんだ。このようなことがこの国で行われていたという現実によるショックである。


「で、それがどうした?」

「ヤマノケってその怨念の集合体なんじゃないかなって…」

「なるほど…」

「つまり、霊体があるんですよ。」

「てことは、崩すことができれば…!」

「そう。浄化することができる。」

「作戦は思いついたか?」

「はい…一応。」

「よし。時間もいい頃だな。いこう。」


3人は車に乗り込んだ。


「臨海さん。運転お願いします。」

「任せてくれ。」


臨海はヤマノケが逃げた方向へ車を走らせた。


「で、作戦って?」


柊哉が竜飛に質問した。


「君の憑依霊…しゃくちゃんだっけ?…の力を使うんや。」

「私の力?」

「そうや。君の力って多分見た目を変える力やろ?だから女児になってもらおうおもて。」

「それで?なにするんだ?」

「ヤマノケを騙すんや。女児やおもてヤマノケが近づくやろ?そうして誘き寄せたところを浄化させる。これや。」

「一回やってみよう。」

「うん…」

(不安だな…)


臨海は車を走らせている。


「臨海さん。この辺で止めて。」

「あいよ。」


臨海は車を止めた。あたりは森に囲まれている。静かなこの森からは風の音くらいしかきこえない。


「しゃくちゃん。お願い。」

「うん。」


しゃくちゃんは力を使い、女児の姿に変貌させた。


「おお…」

「で、これでヤマノケが来たらええんやけど…」


数十分後、後ろの方から草が揺れる音が聞こえた。


(これ?)

(わからん…一旦期待してみよ。)


草の揺れる音はだんだんと近づいてくる。


(もうそろかな?)


竜飛は窓の外を見た。そこにはヤマノケの姿があった。


(きよったで…)


テン……ソウ……メツ……と呟きながら車の横を通り過ぎていく。


助手席に座っているしゃくちゃんの横を呟きながら通り過ぎて行った。


(あれ?どっか行きよった…)

(失敗?)

(え〜ここまできて?)

(帰りますか?)

(うーん…一旦帰りましょう)


臨海はレバーに手をかけた。そしてしゃくちゃんに声をかけようとした。


ーーその時ヤマノケは窓越しにしゃくちゃんを覗き込んでいた。


口元は相変わらずニヤついていた。


「うわぁっ!!」

「どうしました!!」

「ヤマノケが…!」


臨海は窓の外を指さした。しかし、もうすでにヤマノケは消えていた。


「いないじゃないですか。」

「え…?いやさっき確かに…」


テン……ソウ……メツ……


どこからともなく聞こえてきた。


「ほらいるじゃないですか!」

「どこだ….!」


その時しゃくちゃんの口がゆっくりと開いた。


「ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ」


…


しゃくちゃんは狂ったように同じ言葉を連呼している。その声はしゃくちゃんのものではなかった。


「しゃくちゃん…?」


しゃくちゃんは急に静かになった。


…


「デテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケデテイケ」


しゃくちゃんはまた狂ったように大声を張り上げた。

今度はしゃくちゃんの声で大声を張り上げた。


その時しゃくちゃんの肩からヤマノケが出てきた。


「うわっ!」


ヤマノケは窓をすり抜けて車の外に出た。


「臨海さん窓!」

「え?」


臨海は窓を開けた。それと同時にしゃくちゃんは元の姿に戻った。


「覚悟しなさい!」


しゃくちゃんは狙撃銃のスコープを覗き込み、逃げていくヤマノケに照準を合わせた。


しゃくちゃんはヤマノケに銃弾を撃ち込んだ。

ヤマノケは車の後ろ側で倒れ込んだ。


「やった…!」

「なにをしたの…?」

「ヤマノケを撃ったの。」

「撃ったの?」

「うん。」

「すっご…」


その時後ろ側からとんでもないオーラを感じ取った。


「え?」


しゃくちゃんが後ろを見ると、そこには巨大化したヤマノケの姿があった。


「柊哉!やばい!ヤマノケが…!」

「撃ったんじゃないの?」


柊哉は窓から覗き込んだ。


「げっ!なんだありゃ!」


巨大なヤマノケは腕を車に伸ばした。


「臨海さんエンジンかけて!」

「はい!」


臨海は急いでエンジンをかけ車を走らせた。

ヤマノケは両腕で這いながら車を追いかけている。


「どうする?」

「まず先に霊体を崩しましょう!」

「そうだな…!」


柊哉は車の屋根の上に上がった。


「おいヤマノケ!あんたはこの山に捨てられた子供の怨霊だ。食糧難が原因で間引きされこの山に捨てられた子供の恨みだよ!」


ヤマノケの霊体が揺らいだ。輪郭が少しぼんやりしてきた。

ヤマノケは腕を柊哉の方に伸ばしてきた。


「あぶな!」


とっさに車内に戻った。


「しゃくちゃん。お願いがあるんだけど。」

「なあに?」


…


柊哉は作戦をしゃくちゃんに伝えた。


「おっけー任せて。」


しゃくちゃんは竜飛の目を見た。


「…?」

「おっけー。はいこれ。」

「ありがとう。」


しゃくちゃんは浄槍を受け取り、窓から飛び出した。


「どこにいくん?」

「まあ見とけって。」


柊哉はアサルトライフルを手に取って屋根に上がった。


「覚悟しろよ…?」


柊哉はヤマノケに向かってアサルトライフルを乱射した。


ヤマノケの動きが少し止まった。


「臨海さん車とめて。」

「え?」


臨海はブレーキを踏んだ。車は徐々に止まっていく。


「竜飛!RPG!」

「はいっ!」


柊哉はRPGを受け取った。

ヤマノケが手を伸ばして柊哉に襲い掛かろうとする。


「食いやがれ!」


柊哉はヤマノケに向かってRPGをぶっ放した。

爆発音と共に煙が上がった。


ヤマノケは地面に這いつくばりながらも、柊哉に襲いかかる。


「いまだ!」


その時上からしゃくちゃんが降ってきた。しかも6人で。6人に分裂したしゃくちゃんがヤマノケをそれぞれ浄槍で貫いた。


6人に分裂したしゃくちゃんは1人に戻り、槍が突き刺さったヤマノケを抱きしめた。


「ごめんね…辛かったよね…」


ヤマノケの体は徐々に崩壊していく。

崩壊した塵は天に昇って行った。

崩壊したヤマノケが力無くしゃくちゃんから崩れ落ちていく。

しゃくちゃんには塵の感触しか残らなかった。


「終わったか…」

「今日はもう遅いですし寺に泊まりますか?」

「そうしましょう。」


3人は寺に戻って一晩を過ごした。


…


(やっと寝やがったか…)


それと同じくらいの時刻、悠悟とあやめはソファの上で疲れ果てて寝ていた。


(早いうちにでなな。)


赤い男性は静かにロッカーを開け、扉から出た。

そして、支部を後にした。


「もう夜やんけ…」

「どうやった?」

「あんま探せんかったわ。」

「は?今まで何してたん?」

「俺が聞きたいわそんなん…」

「まあ言い訳はアジトでゆっくり聞いたるからな。」


2人は裂け目の中へと消えて行った。


ぜんっぜん本編も関係ないけど、俺はショタおねとかガキ犯がだいっきらいです。全然関係ないけどね。まずガキが嫌いやしね。全然関係ないけどね。

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