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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
52/69

それぞれの因縁

雲井の部屋にあった謎の日本人形。それが意味することとは…

ーー今夜、因縁の対決が始まる!

(……なんだこれは。頭がおかしくなりそうだ…)


人形の声を蜘蛛で塞ぎながら近づく。

黒霧島は喜多方のことを思い出している。


(喜多方…あいつ、酒が異常に強かったな…)

(喜多方…もうあいつの声も聞けないのか…)


黒霧島は拳に蜘蛛を纏わせた。


(喜多方…)


黒霧島はその場に膝から崩れ落ちた。


(………いかん。この人形を破壊しないと…)


黒霧島は必死に起き上がり、人形の頭部目掛けてゲンコツを喰らわした。


人形の頭は砕け散った。


(やった……)


…


人形の砕けた口から声がする。


ホホホ……ホホホ……ホホホ……ホホホ……ホホホ……


(くそ!まだか…)


黒霧島は蜘蛛を袖口から出し、散らばった破片を消滅させた。やっとこさ声がしなくなった。


(はあ……疲れた。寝るか。)


黒霧島はベッドへと向かった。


「ちょっとあんた!…なんでわたしんちにいんの!」


雲井は急に大声を張り上げた。


「ああ…?お前が連れてきたんだろ…」


黒霧島はそのままベッドで寝転がった。


「ちょっと!寝ないでよ!」


雲井は黒霧島を蹴り落とした。


「痛い…やめてくれ…」

「それはこっちのセリフよ!勝手に部屋に入ってきて!」

「お前…覚えてないのか?」

「覚えてるって…!?………あ。」


雲井はなにかを思い出した。


「思い出したか?じゃあ…」

「だからって無理!出てって!」


雲井は黒霧島を強引に玄関まで引っ張る。


「今夜は一緒にいてあげるって言ったのに…」

「たしかに言ったけど…!言ったけどさ!」

「じゃあ…」

「無理!ほんとにやめて!」


雲井は黒霧島を玄関から放り投げた。


「チッ…なんだってんだよあいつ。」


黒霧島は頭を掻いて立ち上がった。


「まあ、昔の雲井に戻ったって感じだな…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


警視庁


山形、五十嵐、柊哉の3人は長宗我部警部の元を訪ねていた。


「長宗我部警部、正岡さん、坂口さん、高島さんの事件の共通点を教えてください!」

「開口一番どうした?」


柊哉は大きく勢いをつけて長宗我部警部に迫った。


「俺たち、喜多方先輩の仇討ちをするんです!」

「わかったし、教えるから机にのるな。」

「はい。」


柊哉は机から膝を下ろしてしっかりと椅子に座り直した。


「……その3つの事件に共通することは、まず犯行が夜に行われたこと。次に刃物による傷で亡くなったこと。そして、マンション住民全員のアリバイがあることだ。」

「……つまり?」

「マンション住民以外の誰かが犯人だ。」

「……はい。」

「そんなことをしなくてもお前は霊跡とやらでわかるんじゃないのか?」

「いえ…確かにわかりますが、口裂け女に実際会ってみないとわかりません。」

「ああそうだな。」

「だから会う必要があるんです。」


柊哉は真剣な眼差しで答えた。


「…この事件の犯人が口裂け女だと仮定するなら、夜に犯行を行う。だから夜に行動しろ。」

「わかりました…!」

「仇、絶対討てよ!」

「はい!」


2人は固い握手を交わした。


…


警視庁を後にした3人は路頭に迷っていた。


「夜までどうしますか?」


現在時刻は18時半。夕方である。


「ここらで二手に分かれよう。」

「どう分けますか?」

「俺と山形、八尺瓊は憑依霊がいるから1人でいいか?」

「わかりました。では、口裂け女に出会ったら連絡ください。」

「OKだ。」


山形と五十嵐、柊哉としゃくちゃんで行動することにした。


「ねぇ柊哉。私たち、勝てるかな?」

「勝てるさ。俺たちだいぶ強くなっただろ?」

「そうかな…」

「そんなに心配してると負けちゃうよ?」

「…そうだよね。勝てるよね!」

「そうそう!その感じ!」


現在19時。あたりはもう少しで暗くなると言ったところである。


「………ねぇ、あれ。」

「ん…?あ!」


人影が沈みかけた太陽の光に照らし出されている。

その人影には見覚えがあった。それは雲井であった。


「雲井!なにしてるんだ?」

「相変わらずマヌケな面してるわね。」

「雲井ちゃん。黒霧島先輩は?」

「あいつなら追い出したわ。」

「え?あんなに心配してたのに!」

「私があんなのを心配するとでも?」

「なんだよそれ…まるで人が変わったみたいな。」


柊哉は不信感を覚えた。


「でも、昔の雲井ちゃんはこんな感じだったよね…」

「で?なんで俺たちのところに?」

「それはね…」


雲井は手のひらで印を結んだ。


「なんだよ…どうしたんだ…?」


雲井は印を解いた。そして、空からなにやら透明なものが降ってきた。それは人の形をしたものだった。


…


「あんたの首を刈るためよ!」


そういうと雲井の体は変化した。白いライダースーツが身を包み、首から上が消え去った。日本刀を携えたその姿は"首なしライダー"そのものだった。


「は……?」

「さあ!覚悟しなさい!」


…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方そのころ山形、五十嵐グループ。


「五十嵐先輩。口裂け女見つからないっすね。」

「ああ。てか、お前のメリーさん使わねぇの?」

「あ!確かに。メリーさん、口裂け女ってわかりますか?」


山形はフランス人形に話しかけた。


「そんくらい知ってるわよ。」

「そいつの場所ってわかりますか?」

「調べてみる?」

「お願いします!」

「わかったわ。」


フランス人形は目を閉じて俯いた。


「それっぽいやつは見つけたわ。赤い服にマスク、ボサボサの長髪の女よ。」

「それっぽい…!」

「で、どこにいるんだ?」

「……渋谷らへんかしら。」

「渋谷…とりあえず向かおう。」


…


2人は渋谷に向かっている。その時五十嵐にメールが届いた。


「おい山形。黒霧島が合流したいとよ。」

「合流?黒霧島先輩って帰ったんじゃ?」

「なんかよくわからないけど、とりあえず合流だ。」

「ふーん。で、どこでですか?」

「"ハチ公前"らしい。」

「あのワン公の像のあるところか。」

「健人言い方よ…」


メリーさんは呆れた顔をした。


「てことで山形。俺は八尺瓊のところに行くから、黒霧島と合流したらよろしく言ってくれ。」

「え?なんでですか?」


山形は困り顔でそう言った。


「黒霧島がな。八尺瓊の方にももう1人くらいいたほうがいいって。」

「ふーん…じゃあ仕方ないですね。」


山形は五十嵐と別れて1人でハチ公前に向かった。


…


「メリーさん。黒霧島先輩急にどうしたんですかね?」

「さあね。あいつの考えてることはずっとわかんないわよ。」

「そうですか…?俺はあの人結構好きですけどね。」

「え?どこがよ。血も涙もないやつじゃない。」

「いやいや。あの人は仲間のために涙を流せる人ですよ。喜多方先輩が死んだときも自分で全ての責任を抱え込んでて…」


山形は飄々とした態度でメリーさんと話しているが、内心ではあの時の様子を思い出し、心の傷が疼いていた。


「ここら辺かな…?」


ハチ公前。ここは待ち合わせスポットとしても有名である。

山形は忠犬ハチ公の像の前に立って黒霧島を待っている。


「まだかな…」


…


5分後。


「メリーさん。しりとりしません?」

「いいわよ。まず私から。しりとり。」

「リンパ節」

(リンパ節って…)

「綱引き」

「キス」

「///きす?」


フランス人形は顔を赤くした。


「すですよ?メリーさん。」

「す…数学…//」

「く…黒霧島先輩!」

「い?」

「いや。来ました!」

「え?」


山形の前から黒霧島がやってきた。


「悪い。遅くなった。」

「いいですよ。で、なんで俺だけにしたんですか?」

「ああ。実はお前に伝えたいことがあってな…」

「伝えたいこと…?」


山形は不思議そうに聞いた。


「実はなーー


黒霧島は何か嫌なものを感じ取った。


「山形!伏せろ!」

「え…?」


忠犬ハチ公像の首が刎ねられた。

黒霧島は山形の腕を掴み前に引っ張った。


…


ーーしかしそれも虚しく、山形の首は宙を舞った。


「は……?」


黒霧島の顔面に血飛沫が飛んだ。それは喜多方が死んだ時、またはそれ以上に黒霧島の心を抉った。

虚しい音がぽとっと小さく響く。少しの血溜まりが事態の深刻さを物語っている。

黒霧島は力を失い、引っ張っていたその体は情けない音を立てて地面に落っこちた。


首を刎ねられた忠犬ハチ公の像を挟んだ先に女性が立っていた。その女性は赤い服を着た。髪がボサボサの女性だった。そして、その口は痛々しく裂けていた。


「ねぇ…わたし、"キレイ"?」


「………なわけねーだろ、このブス!」

宣伝用のXアカウントを作る予定です。年末ぐらいにスマホを替えるのでその辺かなって感じです。

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