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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
51/69

自責

ディアスミール御徒町で起こった連続刺殺事件の被害者に共通点を見出した柊哉。同じものが喜多方にもついていたことを知る。

ーー残酷な運命に精神は崩壊する…!

「はぁ…紗希ちゃん…」


喜多方はビジネスホテルから出てきた。まだ高島の死を消化しきれず、思い出の詰まったあの部屋には戻れいない。


その足で支部へと向かっている。天気は大雨。傘に雨粒が当たる音で周りの音が聞こえずらい。


…


雨の中、傘も刺さずに佇んでいる女性を見つけた。


「あの、傘いりますか…?」


喜多方は問いかけた。


「ねぇ…わたし…"キレイ"…?」


女性は問いかけに対して問いかけで返した。


「え…キレイなんじゃないですか…?」


喜多方は当たり障りのない返答をする。

すると女性は付けていたマスクに手をかけた。


「これでも…?」


女性はマスクを下ろした。


…


その女性の口元は大きく裂けており、歯茎が剥き出しになっていた。


「!?……突然力が溢れ出した…!」


その女性が裂かれた口元をあらわにした瞬間に喜多方の背筋に刃物で擦られたような感覚に襲われた。


「これでも…"キレイ"…?」

「やばい!かんひ…」


喜多方はかんひもを広げて腕に持っていった。


「………は?」


口裂け女はさっと鋏を取り出してかんひもを切り裂いた。かんひもの髪の毛が宙を舞い、玉がアスファルトに転げ落ちた。


口裂け女は鋏で喜多方の胸部に切り傷をつけた。


「ぐっ…に、逃げないと…」


喜多方は支部に向かって走り出した。その最中、財布の中身を漁り出した。


(確か口裂け女には小銭が有効だったはず…!)


喜多方は口裂け女に向かって100円を投げつけた。


「!?………お金。」


口裂け女が100円を探している最中に喜多方は距離を稼いだ。


支部まで残り500m


口裂け女はもう直ぐそばまできていた。

口裂け女の鋏の音が聞こえてくる。


(口裂け女にはポマードという言葉が有効なはず…!)


「ポマード!」

「!?」


口裂け女は少し怯んだ。


「ポマードポマードポマードポマードポマード」


喜多方はポマードと口にしつつ支部に近づいていく。


喜多方は血を垂らしながら走る。

支部の前についた。


ーーそこで喜多方はさっき使った100円が最後の100円であることに気づいた。


そのことに気づいた喜多方は黒霧島にメールをした。

口裂け女は支部に近づいてきている。


(早くきて…!)


…


お

い

つ

い

た


…


口裂け女は喜多方の心臓を貫いた。


「あ…」


口裂け女は追い討ちをかけるように喉も貫いた。


(喉がつぶされた…これじゃ助けも呼べないや…)


喜多方は自動販売機に寄りかかった。


口裂け女は水音をたてながら去っていった。


(ああ…僕も死ぬのかな…)

("一郎さん…")

(なんだ…?紗希ちゃんの声が聞こえるなぁ…)

("痛かったね…これからはわたしとずっと一緒にいよ?")

(そうだね…紗希ちゃん、ずっと一緒にいよう…)


喜多方は雨に打たれながら体温を失っていく。

最期に聞こえてきたのは高島の幻聴であった。


ーー7月26日。喜多方一郎、死亡。享年25歳。


…


柊哉たちは支部に戻ってきた。


「五十嵐先輩!喜多方先輩の傷跡見せてください!」


仮眠室のドアを勢いよく開けて言った。

そこには肌が白くなっている喜多方があった。


「今から解剖を始めるところだ。」

「待ってください。少しだけ確認したいことがあります。」


柊哉は胸の刺し傷と首の刺し傷をじっと見つめた。


「……あった。」

「なにがだ?」

「霊跡ですよ。正岡さん、坂口さん、高島さんの傷口にも同じのが!」

「じゃあ、喜多方はその3人と同じやつに殺されたと言うのか?」

「そうです。」

「で、その犯人は?」

「まだわかりません。でも、候補なら1人。」

「それはなんだ?」

「"口裂け女"です。」

「口裂け女…」

「まだわかりません…実際に傷をつけられないと。」

「そうか…」


五十嵐が悔しそうな声を漏らした。

黒霧島は不意に立ち上がった。


「先輩…?」

「やっぱダメだ…1人にさせてくれ…」

「なんで。そんなに思い詰めるなよ…」


黒霧島は締め付けられたような声で言った。

そんな黒霧島を見かねた雲井は抱きしめた。


「先輩…わたしの胸、貸してあげます。だから、そんなに1人で抱え込まないで…?」

「雲井…」


黒霧島は雲井の胸に顔を埋めた。そして、びしゃびしゃにした。


「俺が…俺が喜多方を死なせたんだ…あの時早くメールに気づいていたら…喜多方だって…!」

「そんなに自分を責めないで…」


雲井は黒霧島の頭を撫でて言った。


「そんなの…無理だ…だって…」

「やめてください…こっちも苦しくなっちゃう…」


黒霧島の独白に雲井の心も苦しくなってきた。


「お前、今日はもう帰るか…?」

「いや…俺は喜多方を殺したやつを見つけ出す…!」


黒霧島は雲井の肩を掴んだ。


「ダメですよ…そんな状態じゃ…」


雲井は黒霧島を強く抱きしめた


「やめろ…俺は見つけるんだ…」

「そんな状態じゃ無理ですよ…今日は休みましょ…ね?」

「そうだな。雲井の言う通りだ。今日は帰れ。」


黒霧島は無気力にベッドに座り込んだ。

雲井と同じように座った。


「今日は私も一緒に先輩の家に帰ります。1人はいやでしょう?」


黒霧島は虚な目をして頷いた。


「じゃあ…帰りましょう…」


雲井は黒霧島を連れて帰って行った。


…


「さて、お前たちはどうするんだ?」

「同じ霊跡なことは分かりましたが、それがなんの霊跡かはわかりません。」

「そうだな。調査するか?」

「そうします。」

「まて、今日は俺も行く。」


五十嵐は白衣を脱ぎ捨てて言った。


「え?五十嵐さん戦えるんですか?」

「俺は戦えない。しかし、役には立てるだろう。」

「それって…?」

「俺の霊具、"五億年ボタン"でサポートくらいはできるだろう。」

「それって…?」

「押した者の体の活動を五億年止める。」

「……?」


柊哉にはいまいちわからなかった。


「例えば、俺が腕を切り落としたとして、切り口から流血するだろ?それが止まるんだ。」

「体の活動が止まるって…」

「ああ、人間をその状態のままにしておくと言うことだな。」

「はあ。で、なにに使うんですか?」


柊哉は期待外れの能力に呆れながら聞いた。


「口裂け女に切り裂かれた時にこのボタンを押すと切り口から出血しなくなるぞ。」

「おお!それはすごい!」


山形が興奮気味に言った。


「そうだろうそうだろう!じゃあ俺も行くから、それでいいな?」

「ぜひ、お願いします!」

「きみたち…」


蛭間がドアから顔を出した。


「部長…留守番は頼みました。」

「わかった。調査ね?」

「はい。」

「そう。じゃあいってらっしゃーい。」


蛭間に見送られて3人は調査に向かった。

激しく降り注いでいた雨は止んでいて、雨雲を裂くように日差しが差し込んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方黒霧島は雲井の家に到着した。

部屋中整理整頓されていて、ゴミひとつないような部屋だった。


「今日は一緒にいましょう…」


雲井は悲しげに言った。


「ありがとう…」


黒霧島は何かに気づいた。この部屋にそぐわない何かだ。それは日本人形だった。


(なんだこれ…嫌なオーラが出ている…)


「なあ…これどうしたんだ?」

「これですか?これはーー」


…


黒霧島は雲井と一緒に寝ていた。しかし、あんなことが起こってしまって寝ることなんてできない。


(はあ…寝れないな。)


黒霧島は嫌なオーラをまた感じ取った。


(…なんだこれ。)


それは例の日本人形からだった。


(あれか…え?ちょっとあれおかしくないか?)


その日本人形は明らかに首が長くなっており、すこし口が動いているように見えた。


(ちょっとあれやばいだろ…)


その時黒霧島はある声を聞いた。聞くだけでおかしくなりそうな声であった。


ホホホ……ホホホ……ホホホ……ホホホ……ホホホ……

しゃくちゃんのネーミングばか被ってたんやけど。いややなぁ〜

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