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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
49/57

喪失

恋人である高島を失った喜多方は悲しみに暮れた。

そんな中、絶対に犯人を突き止めようと言う意思も芽生え始めた…!

数日後…高島の葬式が開かれた。


喜多方はもちろん参列した。


「お悔やみ申し上げます…」


喜多方は香典を差し上げた。


「もしかして、一郎さん…?」

「え…はい。」


喜多方は呆気に取られながらも答えた。


「そうでしたか…紗希が嬉しそうにあなたのことを話してましたよ…」


高島の両親はハンカチで涙を拭いそう言った。


「そうですか…」


喜多方は悲しみのあまり言葉が出なかった。


その後喜多方は涙を流しながら棺桶に花を入れた。



喜多方は高島の葬式が終わってそのまま支部に行った。高島との思い出が詰まったあの部屋にはそう簡単に戻ることができなかったからだ。


悲しい顔を浮かべている喜多方に対してみんなは何も言えなかった。

そんな中、喜多方が口を開いた。


「みんな…捜査に協力してくれないか…?」


喜多方は泣きそうな声を堪えて言った。


「そんな声で言うなよ。お前らしくもない…」


黒霧島が最大限気遣ってそう言った。


「………そうだよな。」


喜多方は頬を叩き、涙を振り落とした。


「みんな!俺に協力してくれ!」

「当たり前じゃないですか!」


山形は答えた。


「ここにいるみんな同じ気持ちだ。」


さらに黒霧島も答えた。


「みんな…ありがとう。………ごめんちょっと涙が。」


喜多方は後ろを向いた。


「先にお前の涙を枯らしてから行け。」


五十嵐は仮眠室を指差した。


「枕カバーくらい洗ってやるからよ。」

「ありがとう…」


喜多方は泣きそうな声で言い、仮眠室へと向かった。

閉じられた仮眠室のドアからは部屋中を響き渡る慟哭が漏れ出した。



1時間後…喜多方は仮眠室から出てきた。


「もういいの?」

「はい。いつまでもウジウジしてたら紗希ちゃんにも叱られるんで。」

「そうか。なら、出発だな。」

「あ、そうそう。君たちに紹介したい人がいるんだけど…」



ここは501号室。


「なんで来たの。もう顔見たくないって言ったじゃん。」


カシマレイコは不機嫌そうに言った。


「しかも、今日は6人って。部屋は2LDKなんだけど?」

「カシマさんって2LDKとかわかるんですね。」

「バカにしないで!」

「ちょちょちょ待って。」

「なに?」

「会わせたい人ってこれ?」


黒霧島はカシマレイコの顔を指差した。


「これって何よ!?」

「いやだって…こいつやべえじゃん。」

「そうですよ。だってこの人…」

「伝説の怪異、"カシマレイコ"ですよ?」


しゃくちゃんが全身を震わせながら言った。


「伝説の怪異…やはりそうか…カシマって言ってたもんな…」


カシマレイコはしゃくちゃんの顔をじっと見つめた。


「………なんですか?」


しゃくちゃんは柊哉の後ろに隠れた。


「ふーん…その子…なるほどねぇ。」


カシマレイコは何かに気づいたようだ。


「なんですか?」

「ううん?なーんも。」

「はぁ…本題いっていいですか?」

「なに?」

「あの、最近何か変なの見ませんでした?」

「変なのって?」

「例えば、何か強い霊の気配とか。」

「うーん…私が強いからわかんないなぁ…」

「はぁ〜…使えねぇな。帰ろうぜ。」


黒霧島はカシマレイコを見限った。


「ちょっと!?そこの金髪?」

「どうしたポンコツ。」

「ポ…ポンコツ…!?」

「レイコ姉ちゃん。ちゃんと言ってあげてよ。」


蒼真が口を挟んだ。


「なんでよ?こんなやつに言うわけないじゃない?」

「お兄ちゃん、好きな人死んじゃったんだよ…?」

「え…?そうだったの…?」

「うん…僕見たもん。お兄ちゃん、泣いてたよ?」

「だからさ…僕お兄ちゃんの力になりたいよ…」

「蒼真くん…」

「言ってくれるのか?」

「勘違いしないで?これは蒼真くんのためよ!」

「わかったらから。早く言え。」


黒霧島が冷たく急かした。


「ちっ…態度の悪いガキ…」

「最近強い霊の気配がなかったことは事実よ。」

「え…?じゃあ、誰が紗希ちゃんを…?」

「さあね。人間かもね。」

「人間…?」

「人間か。それとも、"憑霊使い"か。」

「憑霊使い…」

「憑霊使いだったら人もいますよね?」


柊哉はカシマレイコに質問した。


「あんたみたいな憑霊使いは稀よ。基本霊を体に憑依させるのが憑霊使いなの。」

「そうなんだ…」

「私たち珍しいんだね。」


しゃくちゃんは少し嬉しそうだった。


「じゃあ先輩はなんなんですか?」


山形は黒霧島に質問した。


「俺の場合は憑霊使いではなくて、霊"そのもの"だな。」

「あんた。もしかして?」

「ああ。俺は霊を取り込んだ。」

「うそ?そんなやつ今時いないでしょ。」

「ここにいるだろ。」

「それって憑霊使いより珍しいんですか?」

「当たり前よ。」

「私たちそんなに珍しくないって…」


しゃくちゃんは深く悲しんだ。


「第一、よく生きてるわね。」

「なんか、らしいな。」

「適当…そりゃ生き残るわ…」

「生きてるって…本来だったら死ぬんですか?」


山形はさらに質問した。


「当たり前だろ。生のエネルギーである人間が死のエネルギの塊である霊を取り込むんだぞ?危ないに決まっている。」

「そうだよな…」

「はいはい。で?霊はいなかったの?」

「そうよ。」

「そうか…ありがとうございました。」


喜多方は残念にお礼をして帰った。



支部に帰ると蛭間が来客の対応をしていた。


「だから、ほんまにおるんすよ。霊が!」

「部長。どうしたんですか?」


柊哉が聞いた。


「ああ。なんか霊障に困ってるらしいんだけど…」

「え!?相川さん?」

「ああ!喜多方はん!なんでここにおるんや!」

「まあ僕の勤め先ですから。」

「ほな都合ええわ!喜多方はん話聞いてくれや!」


喜多方は相川の話を聞いた。


「俺の部屋な、多分"事故物件"やねん。」

「事故物件?」

「そうや。俺がリビングにある時に寝室の方から音がすんねん。」

「それは大変ですね…」

「やろ?もうほんま大変やで。毎日毎日うるさくてしゃーないねん。」

「そうでしたか…大丈夫ですか?心の方は…」

「大丈夫なわけあるかいな!もう毎日イライラですわ!」

「イライラ…?」

「そうや?もう腹たってしゃーないんですわ!1LDKやゆーてんのになんで2人で住まなあかんねんな。ほんでそいつ家賃払わへんやろ?ほんましばいたろかって感じですわ。」

「あ…そうですね…」


喜多方はまさかの憤怒に言葉を紡ぐのでやっとだった。


「でね?調査してほしいんですわ。」

「確か302号室ですよね?」

「そうです。絶対なにかおるんです。」

「わかりました…じゃあ、隠しカメラを設置します。」

「そんなんで霊が写るんですか?」

「霊が写る特殊なカメラです。」

「そうですか…ほなそのカメラを設置して、1日置くっちゅーわけですか?」

「そうです。1日は待ってもらうことにはなりますが…」

「長年の悩みがたった1日で解消されるなら安いもんですわ。さっそく頼みます。」



302号室。


「ここにカメラを設置します。明日取りに来るのでインターホンがなったら出てくださいね。」

「わかりました。」


喜多方はカーテンの上に小型カメラを設置した。

その時インターホンが鳴った。


「あれ?もう回収でっか?」

「違いますよ…」


喜多方はドアを開けた。そこに長宗我部警部が立っていた。


「あ…警部。」

「喜多方か。もう大丈夫なのか…?」

「全然大丈夫じゃないですけど…なんとか。」

「そうか。」

「警部はなぜここへ?」

「相川のアリバイを聞きたくてな。」

「ああ、あの日のか…」


喜多方はあの日のことを思い出して心苦しくなった。今でもあの手の感触は思い出せる。


「俺?」

「はい。午前5時ごろあなたは何をしていましたか?」

「俺は徹夜で麻雀ですわ。長谷川はんの部屋で。」

「わかりました。長谷川にも聞きます。」


長宗我部警部は去っていった。


「…やなこと思い出させてもたな。すんまへん。」

「相川さんが謝ることではないですよ…」

「では…また明日。」


喜多方は夕映えの中302号室を去った。



翌日。その日は雨が朝から降っていた。

その雨はどこか寂しい音を立てていた。


「ん…?メールだ。」

「開けて?あいつまた100円忘れたのかよ…」


黒霧島は重い腰を上げて玄関に向かった。


「はぁ〜…遅刻だぞ…?」


黒霧島は内側のボタンを押し、自動販売機を動かした。



ーー喜多方は無機質に倒れ込んだ。雨は喜多方向かって激しく降り注いでいた。


「…あ?おい。喜多方?」


黒霧島が喜多方の体を揺らした。雨のせいでもあるが、その体は冷たかった。


「な…なんだよこれ…」


黒霧島の手のひらには血がびっしりとついていた。

雨は激しく降り注いでいた。


ーー喜多方の血を洗い流すように…


はい。死にました。(2度目)

喜多方の死は決定事項でした。この次の章が東京編の最終章なので、インパクトのある幕開けにしたいなと思ったときに死なせることを思いつきました。とても安直な考えですね。

東京編の最終章なんで、いつも通りストーリー3〜4個ではなくて、人狼ゲーム編みたいに長く書きたいですね。

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