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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
48/57

ゲームの終焉

犯人の目星をつけた長宗我部警部は部下の伊佐山と共に調査へと向かった。

ーーマンションの陰に隠れていたもう一つの闇が明るみになる…!

306号室。


長宗我部警部はインターホンを押した。


「すみませーん…越智さんいますか?」


返答はない。


「留守かな?伊佐山、勤務先は?」

「喜多方さんの情報によると、"東京銀行"だそうです。」

「喜多方すご…よし、行くぞ!」



ーー東京銀行。


長宗我部警部は頭取との話し合いを組んでもらった。


「越智孝弘?そんな人はいませんね…。」

「え…?」

「ん?いや…"今は"いません。」

「今?昔はいたんですか?」

「そうですね。5年前までいらっしゃいました。」

「5年前?」

「はい。」

「何があったんですか?」

「5年前、あるマンションの建設計画がありまして。」

「ディアスミール御徒町ですか?」

「流石警察。詳しいんですね。」

「まあ…でも、それとなんの関係が?」

「その時にマンションの建設会社がうちの銀行に融資を頼んできたんです。」

「はい。まあそうですよね。」

「でも、その会社は粉飾決済を行なっておりまして…」

「その担当が越智…?」

「はい。彼が粉飾決算に気づかずに融資を行ったせいでうちは大損害を被ることになりました。」

「その額は…?」

「700億です。」

「700億!?」


長宗我部警部はたいそう驚いた。


「はい。」

「でも、マンションですよね?」

「はい。マンションです。」

「銀行側はなんとも思わなかったんですか?」

「変だとは思いましたよ。だってマンション一つに700億ですよ…?」

「まあ、そうですよね…」

「でも、その件は当時の常務によって揉み消されました。」

「当時の常務…?」

「はい。」

「名前を言っていただけませんか…?」


長宗我部警部は申し訳なさそうに聞いた。


「"長浜恭介"と言いました。」

「「!?」」

「そこで出てくるか…」

「じ、じゃあ、"猿飛牧子"という人物は…?」

「猿飛牧子…彼女も常務でしたね…」

「また常務…」

「彼女もまた、マンションの粉飾に関わっている人物でした。彼女はマンションへの融資が通ったら長浜から常務に推薦してもらう約束を裏で交わしていたみたいで…それで、常務に。」

「そうですか…なかなかなものですね…」

「今はその粉飾に関わった者は全て然るべき処罰を与えましたが、猿飛牧子だけは…彼女の死後事情を知ったわけですので、処分は下せませんでしたが…」


長宗我部警部はメモを取り終えた。


「伊佐山。これでわかったことは、越智は被害者を恨んでいる可能性がある。」

「坂口と正岡ですか?」

「そっちはまだわからない…しかし、猿飛、長浜、磯野の殺害動機はある。あとは越智を探すだけ…」

「僕が越智だったら次は誰を殺すかなぁ…」

「俺だったら建設会社の社長だな。」

「そういえば、そのマンションの建設会社の社長の名前ってわかりますか?」


長宗我部警部は思い出したように聞いた。


「"石野建設"ですね。社長の名前は"石野治"…」

「「石野治…!」」


長宗我部警部は急いで身支度を済ませる。


「頭取、ありがとうございました。」

「え?どちらに行かれるんですか?」

「越智を止めに行くんですよ。」


2人は銀行をあとにした。

パトカーを飛ばし、ディアスミール御徒町へと向かう。


「石野の部屋は…508号室…!」

「スペアキー盗みます!」

「よし!」


2人はエレベーターに乗った。


「うお!ポリのおっちゃん!?なにしてはるん?」

「犯人を捕まえに行くんですよ。」

「ついにですか…きばってや!」


長谷川はエレベーターを後にした。

彼の声援を胸に508号室へと向かう。


「伊佐山開けろ!」

「はい!」


伊佐山は勢いよくドアを開けた。


「お前でラストだ…石野!」


部屋の先から怒鳴り声が聞こえてきた。


「やめろ!越智!」

「今頃きても遅い!もうじきやつは死ぬ!俺が殺すからな!」


越智は注射器を片手に石野に襲いかかった。


「その手の注射器を下せ!」


長宗我部警部は銃を構えていった。


「いまさら止まれるかよ!ポリ公!」


越智は石野の顔面を掴み注射器を首に刺した。


「やめろ!越智ー!」


長宗我部警部は越智の足に銃弾を撃ち込んだ。


「くそ…!こんなもの…!」

「伊佐山!捕えろ!」

「はい!」


伊佐山は勢いよく越智に飛びかかる。

その隙に越智は注射器の中の液体を流し込んだ。


「ああ…」


石野の顔色が次第に悪くなっていく。


「くそ…!一足遅かったか…」


伊佐山は越智を取り押さえ、手錠をかけた。


「越智孝弘!殺人容疑で現行犯逮捕!」


長宗我部警部は急いで救急車を呼んだ。


「石野!しっかりしろ…!救急車は警部が呼んだからな!」

「ああ…誰だ?あのおっさんじゃないのか…」

「そんなしょうもないことなら話すな!安静にしてろ!」


数分後、救急車と共にパトカーも来た。


「治…しっかりして!」


国枝は石野に必死に声をかけた。


「有莉沙…ありがとう…」

「いや…そんなお別れみたいなこと言わないで…!」

「俺はどっちみち有莉沙とはお別れだ…」

「治が刑務所に入っても私毎日面会行くからね…!」

「有莉沙のそんな口調初めて聞いた…」


石野は意識を失った。


「治!」

「揺らさないでください!」


石野は救急車に乗せられた。


「治…」



猿飛牧子、長浜恭介を殺害し、磯野頼人の暗殺を不知火に依頼した犯人、越智孝弘は逮捕された。


のちの供述によると、石野はマンションの建設を完遂できたら部屋を一つ斡旋するという文言で磯野や猿飛をたぶらかしていたことが分かった。

そして、越智は正岡殺しと坂口殺しの時のカードと張り紙の件を認めた。越智曰く、自分はやっていないが、カードと張り紙を貼って捜査を撹乱したかったとのこと。



幸い一命を取り留めた石野はその後の取り調べにて全ての罪を認めた。



翌日、事件の解決を聞いた喜多方はやり残したことがあると言って501号室に向かった。


「カシマさんがかけた呪いを解呪しにいきます。」

「お願いします…」

「僕からもお願いします…

「全くです。名前とかってわかりますか?」



喜多方はカシマレイコから聞いた情報を元に、各家を行脚して解呪した。


「これで終わりました。」

「ありがとうお兄ちゃん。」

「またカシマさんがなにかやらかしたら遠慮なく僕を呼んでね?」

「あんたの顔なんて二度と見たくないわよ。」

「だって。この感じだと、僕の出番はないかな?」



事件解決から2ヶ月。高島は相変わらず喜多方の部屋に居候していた。


「ほんとうによかった…」

「ね。これで安心して寝れる…」

「あの…今日久しぶりにしませんか…?」


7月、夏が始まる季節。この夜は熱帯夜だった。

喜多方は高島との平穏な生活を噛み締めた。


「一郎さん…?」

「なあに?」

「もっかいしますか?」



「紗希ちゃんおはよー…」


喜多方は眠い目を擦って高島に近づく。


「起きてないの…じゃあイタズラしちゃお…」


喜多方は高島の胸部に手を置いた。


ーーその感触は氷を触っているように冷たかった…


「……え?」

「紗希ちゃん…?」


喜多方は恐る恐る掛け布団を取った。

掛け布団の内側から糸を引いていた。

その糸の先は高島の胸部。赤い糸だった…


「紗希ちゃん…!」


高島の胸部に小さな穴が空いていた。その穴は赤く、体の先まで見えていた。その穴は高島を失った喜多方の心を表すようだった。


「なんで…紗希ちゃん…うわあああああ!」


喜多方はひどく悲しみ、そして泣いた。

外の雨もそれに呼応して激しく降り注いでいた。


少しばかり落ち着きを取り戻した喜多方は警察に通報した。


数分後、警察が到着した。


「喜多方、どう言うことだ…どうして高島が…?」

「僕にもわかんないですよ…なんで紗希ちゃんが…」


喜多方はひどく取り乱していた。


「ごめんなさい…」


喜多方は急いでトイレ駆け込み、吐いた。


「無理はない…目の前で恋人が死んでるんだ。」

「あの、取り調べは…?」

「一応受けてくれ…苦しいと思うが…」

「はい。しょうがないですよね…」


喜多方は長宗我部警部の肩を借りてパトカーに乗った。

はい。死にました。

高島を死なせることについては最後まで悩みました。結局死なせましたが、きっとあなたの番ですを見てなかったら死なせなかったと思います。

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