司会進行
去年の冬…
喜多方の住むマンションで殺人事件が起こった。
それは人狼ゲームに見立てた猟奇的な殺人ショーだった…
「え…?」
正岡の胸には刃物が突き刺さっていた。
喜多方はゴム手袋を付けて死体に近づいた。
その死体は体温を失っていた。
「喜多方さん…?」
喜多方は首を横に振った。
「そんな…正岡さん…」
高島は膝を地面に落とした。
高島は喜多方の胸に頭をうずめた。
喜多方は高島の頭をそっと抱き寄せることしかできなかった。
「正岡さん…ううっ…」
高島の絞り出すような声に喜多方の心は苦しくなった。喜多方は警察に通報した。
「長宗我部警部?」
「"なんだ。"」
「人が死んでます。」
「"なに!?どこでだ!」
「"ディアスミール御徒町"、僕が住んでるマンションです…」
数分後、長宗我部警部は部下を引き連れて来た。
「被害者は"正岡裕子"42歳。このマンションの208号室の住民です。」
「一人暮らしか?」
「はい。同居者はいません。」
「なるほどな…死亡推定時刻は?」
「昨夜の午後10時ごろだと思われます。」
「はあ…ではみなさん、昨夜の午後10時ごろ皆さんは何をしていましたか?」
マンションの入り口に住民全員が集まっていた。
「その頃ですと、ちょうど住民会が終わった頃ですね…」
「住民会に参加した人は手を挙げてください。」
高島、喜多方、坂口、猿飛、今津、秋本が手を挙げた
「そこに正岡さんもいました。」
「なるほど…となると、住民会が終わってすぐに殺害されたことになりますね。」
「では、住民会に参加した人の中に犯人がいると?」
喜多方は長宗我部警部にキツめに聞いた。
「まだわからないけど、その可能性は十二分にある。」
「そんな…!」
高島が悲しげに言った。
「あの、僕たち三階のエレベーター前で変な張り紙を見たんですけど…」
「なんだそれは。」
「来てみたらわかります。」
警察と住民は三階のエレベーター前に集まった。
「これは?」
「わかりません。」
「見たところ、予告かなにかか?」
「これ、"人狼ゲーム"の司会者のセリフです…!」
猿飛が割り込んだ。
「人狼ゲーム?」
「はい。朝のターンが来る時、司会者が言うんです。人狼に人が襲われた時に…」
「"人狼"…」
喜多方はふいに胸ポケットからカードを取り出した。
「警部。そういえば、その紙の上からこのカードが貼り付けられてました…」
喜多方は長宗我部警部にカードを手渡した。
「なんだこのカード…"市民"?」
住民会に参加していた人たちが動揺し出した。
「どうしました?」
「そのカード…人狼ゲームのカードです…」
「また人狼ゲーム…」
「しかも、その時にした人狼ゲームでは正岡さんは"市民"でした…」
「それって…!」
「ああ、住民会に参加していた人の犯行であることは確かだな…」
「そんな…!私違います!」
猿飛は否定した。
「じゃあ、俺たち帰っていいですか?」
そう言ったのは長浜恭介。305号室の住民である。
「ちょっと長浜さん?そういうことは…」
「夜勤明けで眠いんですよ…寝たいっす。」
長浜はボサボサの髪を掻きながら言った。
「私も…子供達を保育園に連れて行かないと…」
晴山舞。501号室の住民である。
「そうですか…じゃあもう帰っていいですよ。」
長宗我部警部は住民を帰らせた。正岡の死体は回収された。
「喜多方さんは仕事行くんですか…?」
「行きますよ?」
「そうですか…」
高島は不安そうな顔で言った。
喜多方はそれを感じ取った。
「あの…今日は一緒にいて欲しいです…」
高島は喜多方の袖を掴み言った。
「え…でも仕事…」
高島の瞳には涙が浮かんでいた。
その時メールが来た。蛭間からだ。
「"なにしてんの。はやくして"」
喜多方はメールを打ち返した。
「あ〜…仕事無くなりました…」
「え…?」
喜多方の目は泳いでいた。
「高島さんは大丈夫なんですか?」
「はい…休みます。怖いので…」
「そうですか。じゃあ私はこれで失礼します…」
「じゃあ私も…」
「え?」
高島は泣きそうな顔で喜多方を見上げた。
「一緒にいてくれるんですよね…」
高島は泣きながら袖口を引っ張った。
喜多方は無言でドアを開け、高島を招き入れた。
喜多方の部屋はしっかりと整頓されていた。
「意外と綺麗なんですね…」
「意外とは余計じゃないですか…?」
「えへへ…ごめんなさい。」
「もしかして今日はずっとここに…?」
「事件が解決するまで…?」
「ああ、そう…」
喜多方は冷蔵庫から牛乳を取り出してストローを刺した。
「事件か…はやく捕まるといいね。」
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警視庁
「正岡裕子…市民…」
「坂口貞治…市民…」
「今津明人…妖狐…」
「秋本美雪…ボディガード…」
「喜多方一郎…預言者…」
…
「そして、高島紗希…"人狼"…」
「なんですかそれ?」
「例の人狼ゲームの役職だよ。やっぱり参加者の誰かが犯人かなぁ…」
「市民…あのカードも市民でしたよね…」
「そうだよなぁ…それがわかるのは犯人だけだよなあ…」
「そういえば、あのマンションって住民何人住んでるんですか?」
「ん〜…15人らしいね。」
「15?部屋数と全然違うじゃないですか。」
「まあ新築だからそんなに人がいないじゃない?」
「そうですか…」
磯野刑事は残念そうに帰っていった。
「部屋割りかぁ…聞いてみるか…」
長宗我部警部はマンションに出かけた。
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「今からコンビニ行くけどなんかいる?」
「それ…私も付いていっても?」
「え…1人で行けるから…」
「1人は怖いんです…」
「じゃあ一緒にいく?」
その時インターホンが鳴った。
「ん…なんだ?」
喜多方はドアに近づいた。
「ちょっと…!出るんですか!?」
「だってインターホン鳴ってるし…」
喜多方はドアを開けた。そこには長宗我部警部がいた。
「喜多方か?ちょっと話いいか?」
「ああ、はい。部屋入ります?」
「ああ、なんか紙くれ。」
「チラシの裏でいいですか?」
「書けたらなんでもいいぞ。」
長宗我部警部は部屋に入った。
「彼女は?」
「居候です。」
「違います!」
「そうでしょ。」
「まあいいや。では、このマンションの部屋割りを教えてください。」
「切り替えはや…」
「マンションの部屋割りなんて知らないですよ。」
「ええ…ここの住民でしょ?」
「知らないものは知らないんですよ。そんなことなら管理人さんに聞けばいいじゃないですか。」
「いや、あんたなら知ってるかなって。」
「知らないですよ…」
「じゃあもう管理人に会いに行くから。」
「ええ。なんすかそれ。」
喜多方は残念そうに言った。
「知らない方が悪いだろ。」
「そうですか…」
「じゃあ、喜多方来い。」
「なんでですか…」
「だって俺管理人室知らないもん。」
「はあ…人使いが荒いなぁ…」
「そんなこと仕事でわかるだろ。」
「確かに。」
「喜多方さん警察なんですか?」
高島は喜多方に聞いた。
「ああ…まあそうです…」
喜多方は気まずそうに答えた。
「じゃあ喜多方来い。」
「しょうがないですね…」
「じゃあ私も行っていいですか…?」
「これは警察の仕事なんで…」
悲しそうな高島を長宗我部警部は一蹴した。
「1人は嫌らしくて…」
「ええ…でも仕事…」
「私と仕事どっちが大切なんですか?」
「それ夫に言うやつでしょ。」
「ついて行かせてあげてください。可哀想なんで。」
「はあ…お前らしいな。じゃあ来い。」
3人は部屋を出た。
「管理人室は一階です。」
「遠いな。エレベーター使おう。」
「いやですよ!人が死んでた場所ですよ?」
「じゃあ俺らはエレベーターで行くから。」
長宗我部警部はめんどくさそうに言った。
「1人は嫌ですよ…」
「あーもう!階段で行けばいいんだろ?」
3人は階段で一階に向かった。
「はあ…歳でもうキツい…」
「階段二周ですよ?」
「早く来てください。」
「はあはあ…もう着くから。」
「ここです。」
喜多方はドアをノックした。
「管理人さーん…来客です。」
喜多方はドアノブに手をかけた。ドアノブは回りだした。
(ん…?なぜ鍵をかけていない…?)
ドアはひとりでに開いた。
部屋から冷気が外に逃げてきた。
部屋には冷たい風が吹いていた。
ーー猿飛牧子の死体を揺らしながら…
そして、管理人室の前の掲示板の貼り紙には、
"今日処刑されたのは、猿飛牧子さんでした。"
そう書かれていた…
人狼をモチーフにした事件は金田一であったよね。




