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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
29/57

犬の捕獲

ゴミを漁る野良犬。それはどこにでもいる犬。

ーー月夜、その野良犬は増殖する…

春…それは出会いの季節。

しかし、浄霊師の世界では例外である。


「いやー俺たちもついに先輩か…」

「後輩たのしみだね。」

「ね。」


柊哉としゃくちゃんは呑気に話している。


「あんたたちに先輩が務まるの?」

「お前よりかは務まるんじゃないか?」

「なぁんでそういうこというの〜…」


雲井は黒霧島に抱きついて言った。


「離れろよ、めんどくさいな…」


あの日から雲井の距離が近い。


「なんかあの二人近くない?」

「何があったんでしょうかね?」

「まあ私たちも同じくらいよね?」

「そうですかね?」

「むぅ…健人はそう思ってないの?」


フランス人形は頬を膨らませて拗ねた。

そこに蛭間が割り込んでくる。


「君たち、なんか後輩を期待してるみたいだけど、いないよ?」

「「「え?」」」


3人は顔を見合わせて困惑した。


「浄霊師というのは常に人手不足。去年君たちが3人も入ってきたのが奇跡だよ。」

「そうなんですか?」

「そうそう。僕たちびっくりしちゃってさ。」


後ろから喜多方が姿を現した。


「先輩、わたしが来た時嬉しかった?」

「最初はな。今はまあ…」

「今は…?」

「………」


雲井は黒霧島を上目遣いで見つめる。


「えーっと…そんな可哀想な君たちに任務を与える。」

「えー。任務じゃなくて後輩をくださいよー。」


山形が蛭間に突っかかった。


「ないものはないの。じゃあ任務の説明をするよ?」

「最近、この街で"人面犬"が出るらしいの。」

「「「「人面犬?」」」」

「そう、人面犬。人の顔を持った犬だね。」

「それをどうするんですか?」

「今回の任務は人面犬の"捕獲"だよ。」

「そんなの、どうやって?」


柊哉が質問する


「普通にケージに入れるの。」

「そんな普通でいいんですか?」

「いいのいいの。今は捕まえるだけでいいの。」

「で、誰がいくんだ?」

「わたしいきたーい。」

「そう言えば、雲井は犬を飼っていたよな。」

「そうそう。人面犬といっても犬でしょ?」

「いや、今回は山形くんと喜多方に行ってもらう。」

「えーわたしは?」

「今日はお留守番。」

「えーつまんないの。先輩慰めて…?」


雲井は黒霧島に抱きついて言った。黒霧島はめんどくさそうに頭を撫でた。


「頑張ろうね健人くん。」

「はい!」


山形は元気よく返事をした。


「じゃあ、いってらっしゃーい。」

「「行ってきまーす!」」


二人は任務に出かけた。


「なあしゃくちゃん。雲井ってあんな感じだったか?前まで先輩に対して喧嘩腰だっただろ?」

「うーん…なんかわかんないけど、あの時の先輩のドッキリが原因かなあ…」

「どういうことだ?」

「私ね、最近人の感情が少し色でわかるようになったんだ。幽依ちゃんの感情は黒紫、恐怖している感情だよ。」

「ちょっと待て、いつの間にそんなことできるようになったんだ?」

「多分…あの任務で、しちゃったからかな?」


しゃくちゃんはあの日のことを思い出して顔を赤く染める。


「で、雲井は恐怖を抱いているのか?」

「そう、あのドッキリで先輩を失うことに対する恐怖が芽生えたんだと思う。」

「ふーん…」


黒霧島はおもむろに席を立った。

「先輩どこいくの?」

「コーヒーを淹れる。」

「わたしの分も淹れてきてよ。」

「自分で行け。」

「はーい。じゃあ先輩と一緒に行きまーす。」


2人は見守ることしかできなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「人面犬なんて、どこにいるのかな?」

「どうやって特定しましょうか…」

「特定ならわたしを使って。」


フランス人形がそういった。


「メリーさん?」

「わたしはもともと"電話した相手の家を特定して徐々に近づく"霊でしょ?だから居場所の特定は得意なの。」

「じゃあ、この街の人面犬の数とかわかりますか?」

「ちょっと待っててね…」


フランス人形は目を瞑った。


「何してるんですか?」

「捨てられた人形と情報を共有してるの。」

「そんなことができるなんて…すごいですね!」

「///まあね?」


フランス人形は頬を赤く染める。


「で、どうでしたか?」

「目撃情報はあったわ。歌舞伎町に二件、秋葉原に1件、汐留にも1件って感じ。」

「結構離れてるんですね。」

「そうだね。人面犬というのは広範囲に分布していることがわかるね。」

「じゃあ、作戦を言うよ。」

「はい。」

「僕のかんひもで髪の毛を伸ばして、それで絡みつかせて捕獲、ケージに収容する。これでいい?」

「わかりました。」

「この作戦上、基本的に二人行動だから少し行動範囲が狭まるけど、まあ頑張ろう。」

「はい!」


山形は勢いよく返事した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「人面犬を捕獲?上は何を考えてるんだ?」

「さあ?わたしにもわからない。」

「うーん…こうは考えられないか?」

「おっ!寛ちゃんの考察タイム?」

「ちょっとだら姉やめてよそれ。」

「早く考察言ってよ。」

「…上は人面犬を使って"人工的な怪異"を作ろうとしてるんじゃない?それも"兵器"として利用するために。」

「つまり?」

「俺が思うに、人面犬を捕まえて合体させる。つまり、"ケルベロス"だよ。」

「人面犬のケルベロス…。でもさ、ケルベロスにするくらいだったら普通に人面犬を調教して兵器として使ったほうがよくない?」

「確かに…」

「寛ちゃん?」

「なんだよだら姉…うるさいなあ。」

「論破されたからって不機嫌にならないの。…でも、兵器としての利用はあながち間違ってないかもね。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

歌舞伎町


「流石に朝早いからいないかなぁ?」

「どうでしょうか。人面犬って言っても、犬ですからね。昼にも出るでしょう。」

「ねえ、聞き込みしない?」

「ああ…ありですね。」


喜多方は聞き込みを始めた。お兄さんに話を聞いた


「すみません、私たちこの辺の噂を調査しているんですけど…人面犬の噂って何か知りませんか?」

「人面犬?ああ…なんか少しだけ聞いたことあるな。」


喜多方と山形は顔を見合わせて微笑んだ。


「どんなことですか?」

「うーん…路地裏でゴミを漁っている野良犬がいると思ったら顔がおっさんでした。みたいな話かな?」

「小梅太夫のネタみたいな話ですね。」

「まあそんな感じだね。別に顔がおっさんだったからと言って何もないからね。」

「そうなんですね。ありがとうございます。」


「情報、来ましたよ。」

「お!」

「人面犬は基本無害そう。そして、ゴミを漁っていることがある。この二つだね。」

「聞いている限りただの野良犬ですね。」

「もう一人くらい聞きますか?」

「聞きましょう。」

「次は健人くんお願い。」

「わかりました。」


健人は聞き込みを始める。おじさんに話しかけた。


「すみません。私たちこの辺の人面犬について調査してるんですけど…」

「人面犬!?そいつは危険だ。近づかないことだな。」

「え?なんでですか?」

「知らないのか?人面犬はな、噛んだ人間を人面犬にしちまうんだ。」

「なんですって!?」


山形は聞いた情報とは違う情報に驚きを隠せない。


「ああ。実際にこの目で見たんだ。人面犬に石を投げつけたおっさんが噛まれて人面犬になるところを。」


おじさんは顔色を悪くしながら話した。


「な…なるほど…ありがとうございました。」


山形は背筋が凍りついた。そんな恐ろしい奴らだとは、さっきの情報からは推測できなかった。


「先輩。人面犬、危険です。」

「え?なんで?ただの野良犬じゃん。」

「人面犬は噛んだ人間を人面犬に変えるらしいです。」

「まじで?」

「まじです。」

「それは危険だぞ…噛まれずにゲージに入れないといけなくなった。」

「あ…確かに、それはやばいですね。」

「やばい…どうしようかな。」

「どうしましょう。」

「うーん…一旦帰ろう。」

「え?…い、一旦ですね…。」


二人は"一旦"支部に帰ることにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ねえ雲井ちゃん。最近黒霧島にべったりね。なにかあったの?」

「実は…」


雲井は真剣な口ぶりで言う。


「温泉の任務ありましたよね。」

「あったね。」

「その時、先輩が一人で大量の霊と戦うことになったんです。その任務を達成した後、先輩が死んじゃうっていうドッキリを仕掛けられて。」

「うんうん。」


蛭間は真剣に聞いていた。


「それで、先輩が死んじゃったと思って…本気で悲しくなったんです。でも、それはドッキリで…だけど、本気で悲しかった。それから先輩を失うことが怖くなったんです…」

「なるほどね…」


蛭間は重い口を開いて言う。


「…安心して、黒霧島は"死なない"よ。」

人面犬はゾンビみたいに頭数を増やすらしいです。なんかでみました。

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