怪異と少年
この話の前日譚です。プロローグより前ね。
2006年…
ーそれは霊がまだ怪異と言われ畏怖されていた時代。
「ぽぽぽぽ…」
ー少年はある怪異に魅入られた。
「なに?いなくなった!?」
「はい…どこにもいなくて…」
「"八尺様"だ…八尺様に魅入られたんだ…」
「父さん…?どうしたの?」
「お前は早く寝なさい。」
「村に連絡しろ。八尺様が出た、直ちに捜索を開始しろ。」
村中にサイレンが鳴り響く。子供達は不安に駆られ、その夜は一睡もできなかった。
…
「どうだった?」
「全然見つかりません…」
「くそ!八尺様め!お前たち、山の隅々まで探せ!」
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「お姉さん。誰?」
少年の目の前には女性の姿があった。その女性の身長は2mを超える。白の洋服で身を包んだ女性だった。
「ぽぽぽぽ…」
「怖いよ…助けて…」
お姉さんはその声を聞くと、木陰に隠れた。そして木からは少女が出てきた。少年より1〜2歳年上の少女である。
「怖がらせてごめんね?」
「誰?さっきのお姉さんは?」
「それは私なの。」
「え?でも…」
「細かいことはいいの。ほら、着いてきて?」
少女は手を差し出した。少年は導かれるようについていった。
二人は山の奥深くに着いた。
「ここは…?」
「ここは私の秘密基地だよ。ここで遊ぼう?」
「うん…」
二人は日が暮れるまでここで遊んだ。
ー夕暮れ時…
「ぼく、もう帰らないと…」
「えー?泊まっていかないの?」
「でも、お母さんが…」
「いいのよ一日くらい。ね、そうしよ?」
「うん…わかった。」
二人は秘密基地で夜を過ごした。翌日その少年は何食わぬ顔で家に帰ってきた。
「あんた、どういうこと!?」
「ごめんなさい…」
「村中が探したんだから!」
「まあまあいいじゃないか。無事なんだし。」
「はぁー…まあいいけど。」
母からの説教を素直に受け止めた少年はいつも通り学校に向かった。
帰り道、少年は昨日と同じお姉さんを見つけた。
しかし、そのお姉さんは昨日と様子が違っていた。
お姉さんは少年を見つけると、馴れ馴れしく近づいてくるのだ。
「怖い…やめて…」
「ああ…そうか。ごめんね。わたしよ。」
お姉さんは身長を縮ませながらそう言った。
「あ…昨日の…」
「びっくりした?」
「びっくりした…」
「えへへ…」
「ねぇ…名前はなんていうの?」
「名前?うーん……なんだろ?…」
その少女は返答に詰まっている。
「じゃあ、君が名前つけてよ。わたしの。」
「え?」
「“あだ名“ってやつだよ。」
「う…うーん。じゃあ"ゆきちゃん"。」
「えーなにそれー。猫みたいじゃん。」
少女は笑いながら答えた。
「ダメかな?」
「いいよ。気に入った。」
「よかった。よろしくねゆきちゃん。」
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それから少年はゆきちゃんとよく遊ぶようになった。
「ねえ、またわたしの秘密基地行かない?」
「いいよ…」
「今日も泊まろ?」
「うん…」
少年はまたゆきちゃんと夜を過ごした。
「ゆきちゃん…」
「えへへ…」
翌朝、また何食わぬ顔で家に帰ってきた。そしてまたなんてことない日常を過ごした。変わったことといえば、最近ゆきちゃんを見ないことくらいだ。
(ゆきちゃん…どこ行ったんだろう…)
ゆきちゃんがいない生活は退屈だった。
5年後、大きくなった少年はゆきちゃんと再会した。
「わたしのこと…覚えてるかな?」
「もしかして、ゆきちゃん?」
「よかった…覚えてくれて…」
「ねえ…この後さ、わたしの秘密基地来ない?」
「え?行く行く!話したいこともたくさんあるし!」
少年は例の秘密基地は向かった。その後ろに草が踏まれる音が聞こえる。
「帰ったよー」
「ママおかえりー。」
「この子は?」
ゆきちゃんは少し動揺した。
「わたしの子だよ。」
「子?誰との?」
「君だよ。」
「え?俺の?」
「そう、君との子。あの日、私たちが最後に会った日覚えてる?」
「ああ…その時…」
「そう…あの時の。」
「へぇー…ゆきちゃんに似てるね。」
「えへへ…そうかなあ?」
「ここで暮らしてるのか?」
「そ。ここで、食べ物は村から取ってくるんだ。」
「へぇ…すごい生活だね。」
「あっ。君に言うことがあるんだった。」
「なに?」
「わたしの"力"についてだよ。」
「ちから?」
「そう、私の力を見ててほしいの。」
そういうとゆきちゃんの身長は2mを超えた。
突然草むらが揺れた。松明を持ったおじさんが数名現れた。遠くから読経をする声も聞こえてくる。
「でやがったな八尺様!」
「え?なに?」
「坊主、お前はこっちに来い。」
少年はおじさんに連れていかれた。
「覚悟しろ八尺様。今日こそ払ってやる!」
「あんたは影に隠れてなさい。」
「うん…」
ゆきちゃんは女の子を隠れさせた。おじさんたちは秘密基地を土足で踏み荒らす。札をゆきちゃんに対して投げつける。布団が土で汚された。
「ああっ!」
「ゆきちゃん!」
「静かにしてろ!」
おじさんに押さえつけられている少年は何もしてあげられない。秘密基地はおじさんたちによって破壊されていく。ゆきちゃんは札から伸びた鎖に縛られた。
「ようやっと捕まえた…」
「いや…やめて…!」
「息子の恨みー!!」
「ゆきちゃん!!」
おじさんはゆきちゃんの胸部を刀で貫いた。ゆきちゃんの身体が塵となって消えた。
「ごめんね…」
ゆきちゃんの最期の一言だった。その声は二重に聞こえた。高くとも低くとも取れる声だった。
ーー少年は深く絶望した。
「はあ…やった…やったんだ…!」
「おう!やったな!今夜は宴だ!」
意気揚々とおじさんたちは帰っていった。木陰から女の子が出てきた。
「お母さんは…?」
「………消えたよ。」
「どうして…?」
「そんなの…俺が聞きたい。」
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時は進み2024年ー
残された少女にもまた待ち人が…!
「………柊哉……やっと会えた……」
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ーーこれは、霊と人間の愛と憎しみを描く物語…
カクヨムの方で、"浄霊"を少し改変したverが出てます。そっちも読んでね。




