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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
27/57

帰郷

仮母女との戦闘を終えた4人。帰り道、故郷に寄ろうという話になった。

ーーその選択が間違いだったと彼らは思い知る。

これはある雪が降り積もる冬のことだった…

雲井・黒霧島・柊哉・しゃくちゃんの四人は海鳥の宿での任務を終えて帰路に着いていた。


「なあ、少し寄り道をしてもいいか?」

「いいですけど、どこに行くんですか?」

「俺の故郷ふるさとだ。」

「へぇ〜。どんなところなんですか?」

「"黒沢村"って言うんだ。」

「え…そこって廃村じゃ…」

「そうだ。」

「また廃村ですか…?」

「俺の育ったところを見てほしくてな。」

「そうですか…しょうがないですね。」

「よっしゃ、じゃあ向かうぞ。」


黒霧島はいつにも増して乗り気だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ところで、黒沢村ってなんで廃村になったんですか?」

「それはだな…黒沢村に住まう怪物のせいだ。」

「怪物?」

「ああ。そいつに俺以外殺された。」

「え…?」


車内に静寂が訪れた。聞こえてきたのは外からの鳥の鳴き声のみだった。


「衝撃的だったか?人間なんてそんなもんだ。死というのは突然訪れる。それを受け入れられないやつは弱い。」

「そ…そうですか。」

「俺も昔はそんなこと思ってなかったけどな。怪物のせいでこんなことを言うようになってしまった。」

「…というかそんな怪物がいるところに向かうんですか?嫌ですよそんなの。」


黒霧島は不思議な顔をして言う。


「ん?もう怪物はいないぞ?」

「え?なんでですか?」

「なんてったって俺が取り込んだからな。」

「え?」

「だから俺は浄霊師になったんだ。」

「先輩って浄霊師になる前から強かったんですか?」

「いやいや違う。取り込むまで押さえつけてくれたのは早乙女さんだから、俺の力じゃない。」

「なんだびっくりした。」


柊哉は黒霧島の衝撃的な話に驚きながらもさらに聞きたくなった。あたりは樹海に囲まれていて、日の光も入ってこなくなってきている。


「もうすぐだ。雲井と憑依霊起こすか?」

「いや、寝かせておきましょう。」

「そうだな。」


黒沢村に到着した。


「ここですか…なんか薄暗くないですか?」

「ここら一体は樹海でな、日の光が当たらない。ほら、あそこを右に曲がると村だ。」

「ん?なんですかこの看板?」


柊哉は謎の看板を見つけた。

そこには赤く滲んだ字で"巨頭オ"と書かれていた。


「なんだこれ?俺が前来た時にはこんなものなかったぞ。」

「誰かの忘れ物ですかね?」

「な訳ないだろ。どうやって忘れるんだよ。」

「まずなんなんですかね巨頭オって。」

「そうだよな。看板に巨頭って書くって何がしたいんだろうな?」

「そして"オ"。なんだよそれって感じです。」

「ほんと。でもなんかオの隣に掠れた跡があったけどな?」

「じゃあ"村"ってことですか?」

「巨頭村?俺たちが向かってるのは黒沢村だろ。」

「うーん?不思議な話ですね。」

「な。ほら、着いたぞ。ここが黒沢村だ。」


黒沢村。ここには日光が入らない。そのせいでかなり独特な雰囲気が漂っている。廃村になったこの村の建物には蔦が絡み付いており、人が住んでいた痕跡は全くもってなかった。


「ここですか…あれ?人がいますよ?」

「ん?この村について調査しに来たのかな?」


その人に近づいてみた。その人は何かがおかしかった。その人は頭部が異常に大きく、両手を両足にピッタリとくっつけていた。その人は頭を左右に大きく揺らしこちらに近づいてきていた。


「なんだこいつ…」

「人ですかね?」

「いや…おそらく人じゃないだろう。」

「どうします?」

「一体だけなら俺がなんとかする。」


するとその奥の草むらから同じ人がたくさん出てきた。


「ちょっと!いっぱいいますよ。」

「これは良くないな…帰ろう。」


2人に気づいたその人たちは頭を左右に大きく揺らしながらこちらに近づいてきた。その速度は上がっている。


「んんー、んんー、」


その人たちは独特な声のような音を出している。


「なんですかこの音は…」

「この声は…」

「声なんですかこれ。」

「やばい!はやく逃げるぞ。」

「え?」


黒霧島は柊哉を連れて急いで車に戻って行く。その人たちも後を頭を左右に大きく揺らしながら着いてきた。


「ちょっと着いてきてますよあいつら。」

「ちょっくら陽動をかけるか…」


「鴉!」


黒霧島はカラスを1匹出した。カラスはその人たちに向かっていった。


「今のうちに距離を稼げ!」


2人は急いで車に乗り込んだ。そして黒沢村を後にした。後ろから"んんー、んんー"といった声が聞こえてきた。


「ふぅー…ビビった…なんなんですかあいつら。」

「あいつら、おそらく"アガリビト"の一種だろう。」

「"アガリビト"?」

「そうだ。山に捨てられた、人間に恨みを持った人々が"生きたまま霊になった姿"だ。」

「生きたまま霊に…!?」

「確か小さい頃じいさんからそんな話を聞いた。この辺にはアガリビトが出る、それをこの村では崇めているという話を。」

「もしかして例の怪物もそのアガリビトかも知れませんね。」

「それはあるかもな。実際その怪物は樹海で首吊り自殺した死体の見た目にそっくりだった。」

「…」


さっきのに対する恐怖から車内に沈黙が流れた。

車の上に雪が落ちた音が響いた。それ以外の音はしなかった。


山道を抜けたところでやっと恐怖心も和らいできた。

そして、柊哉は黒霧島の不完全燃焼な感情を消化させるため、提案をする。


「先輩、いいこと思いつきました。」

「なんだ?」

「俺の村にも行きませんか?」

「お前も村出身なのか?」

「そうです。伊佐波村っていうんですけど。」

「へぇ〜。いいじゃん。行こう。」

「行きましょう。しゃくちゃん、伊佐波村行くよ。」

「え?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


村に向かう途中、ヒッチハイクに出会った。段ボール

に"伊佐波村"と書かれた看板もどきを持ったサングラスをかけた女性だった。その女性は親指をあげている。


「どうします?乗せます?」

「せっかくだし乗せてあげよう。」

「優しいんですね。」


黒霧島はヒッチハイクの前で車を止めた。


「ありがとうございま…なんか見たことある!」

「え?」


柊哉は奥から覗き込んだ。


「げっ。柊哉。」

「藍里!なんでこんなところに。」

「藍里?なんか聞いたことあるな。」

「あれですよ。アクロバティックさらさらの時の。」

「ああ。あの時の…」

「ねえねえ。知り合いなんだし乗せてよ。」

「いいけど、後ろだぜ?」

「いいのいいの。じゃ…お邪魔しまーす。」


藍里は後部座席を見た。


「へ?藍里さん?」

「あ…あんたもいるの?」

「あ、ま…まあ?」

「ちょっとあんた、奥に詰めてよ。」

「え…狭いです…」

「しゃくちゃん前来る?」

「じゃあ行く。」


助手席には柊哉としゃくちゃん、後部座席には藍里と雲井が座った。


「この隣の人は誰?」

「ああ…そいつは…」

「おい、あんま教えんなよ?」


黒霧島からの圧がかかった。


「俺の同僚だ。」

「あっそ。また教えてくれないのね。」


藍里は悲しげにいった。


「八尺瓊、伊佐波村まではどう行くんだ?」

「ずっと道なりです。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


伊佐波村につながるトンネルに入った。


「ここを抜けたら伊佐波村です。」

「いやー久々の実家!楽しみー!」


藍里のテンションが上がっている。


「そんなにいいところなのか?」

「まあ私は都会の方が好きだけどー?久々だし。」

「俺が急に帰ってきたらじいちゃん達どんな反応するかなー?」


トンネルを抜けた。藍里と柊哉は素敵な田舎町を想像してワクワクしていた。


トンネルを抜けるとそこには崩壊した集落があった。崩壊した民家からは煙が立ち込めていて、田畑からは火が燃え盛っている。


「「え…?」」


二人は言葉を失った。


「なんだ。お前らの村も廃村なのか?」

「ちがう!だって…1年前まではあったじゃん…!」


藍里は泣きそうな声で話す。


「先輩。ちょっと降ろしてください。」


柊哉はシートベルトを外して車の外に出た。


柊哉の目の前には崩壊した祖父母の家があった。それは爆弾か何か威力が大きいもので一気に破壊されたようだった。


「じいちゃん!ばあちゃん!」


藍里も一緒に降りて探すのを手伝った。


「柊哉!じいさんが!」

「じいちゃん!」


柊哉の祖父、権蔵は瓦礫の下敷きになっていた。3人は瓦礫を退けた。


「柊哉!帰ってきたのか!」

「じいちゃん!どうしてこんなことに?」

「それは…」


権蔵の頭上に影ができた。上から人が降ってきた。その人は持っていた大幣で権蔵の心臓を貫いた。その人は天狗の面をつけていた。


「がっ!」

「じいちゃん!」

「きゃ!」


権蔵は血を吐いた。胸部からは血が流れ出ていた。降ってきた人は面を外し正体を明かした。


ーー面の先には"草薙京平"の顔があった。


「柊哉…俺だよ…」

「京平…?」

「京平さん…?」


柊哉と藍里は信じられないものを見た。


「俺がこの村を壊したんだ…お前の母さんも、爺さんも、全て俺が殺した…」


大幣を藍里に向けて言い放った。


「やっぱりあなただったのね…」

「やはりしゃくちゃんには勘づかれてたか…」

「な…なんでこんなことをしたんだよ!京平!」


柊哉は悲しみと怒りを込めて言い放つ。


「…なんで?そうだな…こいつらのことが殺したいほど嫌いだから…かな?」

「なんでそんな…京平さんは村の人々から尊敬されていたのに…」

「そうか…俺はそんなに尊敬されていたのか…自分勝手な奴らだ。反吐が出るな。」


そういうと京平は権蔵の死体に唾を吐き捨てた。


「っ…!?てめえっ!」


柊哉は怒りに身を任せて殴りかかった。京平は柊哉の腹に蹴りを喰らわせた。


「ぐっ!」

「柊哉!」


しゃくちゃんは柊哉を受け止めた。


「残念ながら、これを見たお前らは殺さなければいけない。さあ、"俺たち"のために死んだくれ。」


京平は大幣を振り上げた。そこにカラスが飛んだくる。


「くそ!どきやがれ!」


京平はカラスを振り払い、護符でカラスを消し炭にした。


「チッ!」

「先輩!」


京平は藍里の目の前に立った。


「まずは藍里…お前からだ…」


京平は大幣を振り上げる。



間一髪のところで黒霧島が藍里を助けた。振り下ろされた大幣は焼けた大地をパンのように切り裂いた。


「あ…ありがとう…」

「感謝は後だ。後ろに回れ、守れないだろ。」


黒霧島は印を結びながら言った。


「その印…そうか、お前が黒霧島か。」

「!?なぜ俺の名を!」

「カラスと蜘蛛を使う"黒霧島黎"。有名だぜ。」


京平は大幣で黒霧島に斬り掛かる。黒霧島は避ける。大幣は大きな鎌へと変形して黒霧島の首を狙う。


「蜘蛛!」

「こういうネチネチした攻撃は嫌いなんだよ。」


京平は護符で蜘蛛を一掃した。そして流れるように黒霧島に回し蹴りを喰らわせる。黒霧島は藍里の方に飛んで行った。


「ぐっ…!」

「だ…大丈夫?」

「ああ…なんとかな…!?」


京平は一瞬で黒霧島との距離を詰め、大幣を振り上げた。


「二人同時に殺してやる。じゃあな…黒霧島。」



ピピピピピ


その時電話が鳴った。京平の電話である。京平は電話に出た。


「なに?今いいところなんだけど。………ああそう?じゃあ戻るわ、うん。じゃあねー。」


京平は電話を切った。さっきまで人を殺していたとは思えないくらい普通に話していた。


「命拾いしたな。」


そういうと京平は大幣で地面に空間を開き、そこに飲まれていった。


「待てよ!京平!」

「待てと言われて待つ奴がいるかばーか!」


京平の姿はたちまち消えた。


「くそ!くそ!くそ!」


柊哉は地面を叩いた。そして怒りと悲しみを込めた声で泣いた。


しゃくちゃんが近づいた。他二人は立ち尽くすことしかできなかった。


「……しゃくちゃんはいつ気づいたんだ?」

「おじいさまを殺した時、武器の大幣の放つオーラを知っていたの…」

「そうか…」


しゃくちゃんは柊哉を抱きしめる。それしかできないからだ。村中から草木が燃えて煙が立ち込める。その匂いは悲しい匂いだった…

草薙京平くんが出てきました。この人は柊哉にしゃくちゃんを憑霊させた人です。覚えてるかな?

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