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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
東京編
17/57

恐怖の摩天楼

世間を恐怖に陥れたテケテケ事件からはや数ヶ月ーー。

民俗怪異対策課東京支部に新たな事件が舞い込んできた…!

テケテケの件から数ヶ月後…大きな事件がないまま東京支部の7人は日常の浄霊任務をそつなくこなしていた。

そんなある秋の日、東京支部に一件の依頼が舞い込んできた。それは警察からだった。


「警察が珍しいですね。」

「今回のヤマはいかんせん特殊でね。もしかしたらと思ってここを頼ってみたわけさ。」

「いつもの"長宗我部警部"なら自力で解決すると豪語しているのにな。」


蛭間は長宗我部という警部と話している。陰から見ていた柊哉は喜多方に聞いた。


「あの人は誰ですか?」

「ああ。彼は長宗我部源次(ちょうそかべげんじ)。警視庁の警部だよ。」

「警部?なんでこんなところに。」

「警察はこれは明らかに霊の被害だなと判断したらここに情報を流すんだ。前のテケテケの時もそうだった。」

「へぇ〜。」


その頃蛭間と長宗我部警部は…


「これですか。確かに奇妙な場所にある。」

「そうでしょう。おそらく貴女方の専門だろうと思いましてね。」

「なるほどわかりました。では調査してみます。」

「頼みますよ。」


そういうと、長宗我部警部は出口の方に向かった。


「はーいそこに隠れてる君たち。これ、みんなに回しといて。」


蛭間は柊哉と喜多方が隠れているのに気づいていたような口ぶりだった。


「なんで俺たちがここにいるって…!」

「ふふーん。私はなんでもお見通しなんだよ?じゃあよろしく。」


そういうと蛭間はお茶を片付けにいった。


「やれやれしょうがないね。持っていこう。」


2人は広間に書類を持っていった。そこには黒霧島しかいなかった。


「なんだこれは?」

「なんか事件の書類?らしいです。」

「見てもいいか?」

「俺たちも中身は知らないんで見せてください。」


3人は資料をみた。そこには現場証拠の文言と写真が一枚入っていた。


「なんだこの写真は…合成か?」

「いえ、実際の光景だそうです。」


写真には死体が写っていた。警察が現場検証で撮る写真だ。しかし、明らかに不自然な写真であった。


「いやでも、おかしいだろ、ビルの屋上に飛び降りの死体なんて。」


そこに写っていたのはビルの屋上にある死体。しかしその死体は体中にひどく打ちつけた跡が残っている。これは高所から落下した人間の死体につく跡だ。


「だから僕たちのところに来たんだよ。」

「なるほど…この調査を俺らをやれと。」

「そうです。」

「ふーん。」


黒霧島は少し上機嫌だ。


「てか、幽依ちゃん知らない?」

「なんか風邪らしいです。」

「風邪?」

「まあ季節の変わり目だからね。で、誰が行く?」

「俺がいこう。」


やはり黒霧島は立候補してきた。


「じゃあ、僕は健人くんの看病をするから、柊哉くん行ってきて。」

「ええ俺ですか?」


この感じ先輩が行く奴だろ、と柊哉は思った。


「そう。頑張って。」


適当に流した喜多方を殴ることを決意した柊哉は諦めて行くことにした。


「しゃくちゃん、起きて。」

「うーん…眠たいよ…」

「任務だよ。」

「うーん…すぐいく…」


寝ぼけたしゃくちゃんを連れて2人は任務に行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「先輩、まずは何します?」

「そうだな。まずは事件現場のビルの屋上に行く。」

「そのビルってどこですか。」

「書類には確か沢渡ビルって書いていたな。」

「じゃあそこに向かいましょう。」


2人はまだ眠たいしゃくちゃんを連れて沢渡ビルへ向かった。屋上の扉を開けると人をビルの下へ叩き落とそうとするような風が吹き抜けた。


「ここか。」

「特に変わった様子はないようですね。」

「ん?これを見ろ。」

「なんですかこれ?」


屋上の手すりのところに青紫色の跡が見える。警察の書類にはなかったものだ。


「おそらく霊はこれを強く握ったのだろう。」

「警察の書類にはなかったですよ?」

「これは体内に霊を持つものにしか見えない"霊跡(れいせき)"と呼ばれるものだ。」

「霊跡…」


柊哉は辺りを見渡した。


「あ!ここに見えます、後ここにも。」


柊哉は近くに霊跡が密集しているのを発見した。


「なるほど、きっとこの霊はここから飛び降りた。人が来るのを見計らってな。」

「見計らって?」

「そうだ。特定の人がここに来るまでこの手すりにぶら下がっていた。そしてその人が来るタイミングで落下する…」


黒霧島は持論を展開する。


「それってなんの意味が…?」

「わからない。しかし、大体霊の名前はわかった。」

「…!なんですか?」

「その霊は高所から飛び降り、消え、また飛び降りる。そして人を攫い飛び降りる…」

「そ、その霊の名前はなんですか…」



「"アクロバティックさらさら"だ。」



「……は?ふざけないでください。」


あまりに間抜けな名前に拍子抜けした。


「ふざけた名前だからって気を抜くな。一瞬で命を落とすぞ。」


黒霧島は柊哉を睨みつけて言った。柊哉の肝が冷えた。


「ねえ〜寒い…」

「お前な…」


気が抜けている様子のしゃくちゃんに黒霧島は呆れている。


「どうします?そのアクロバティックさらさらを追いますか?」

「いや、それはできない。」

「どうしてですか?」

「やつはその名の通りアクロバティックに移動する。つまり、目撃したとしてもすぐに逃げられる。」


黒霧島は続けて言う。


「そして、遭遇すること自体が困難だ。」

「じゃあどうするんですか。」

「あちら側から俺たちに近づかせるしかないだろ。」

「つまり、誘き寄せるということですか?」

「そうだ。そうなるとまずはアクロバティックさらさらが出現する条件を調べる必要がある。」


そんな時、電話がかかってきた。蛭間部長からだ。


「はい、黒霧島です。……なんですって!?」

「先輩?どうしたんですか…?」

「また死体が出たらしい。」

「え!?」


3人はすぐさま支部に戻った。


「その死体ってのはどれですか?」

「これだよ。」


蛭間はそっと写真を見せた。

ー写っていたのはまたもや不自然な死体だった。

ーしかも、前回よりも不自然である。


その死体は体をひどく打ちつけたような跡があった。そこまでは前回と同じだ。しかし、それが不自然たらしめる理由がある。それはその死体が屋内にあるということ。


「なんだこれは…まるで訳がわからない。」


黒霧島は理解に苦しんでいるようだ。


「で、この霊の正体は掴んだの?」


蛭間が黒霧島に問いかける。


「掴んだんですけど、この写真で一気にわからなくなったんです。」

「ほう…」

「最初の写真を見て、さらに現場検証を行った結果からはアクロバティックさらさらが殺したのだと思っていました。」

「アクロバティックさらさらね…」

「なんですかそれ。」


喜多方が質問する。


「昔流行った怪異だよ。その怪異はネット掲示板で存在が広まっていったんだ。愛称は"あくさら"だったかな?」

「でも、そのあくさらではないんでしょ?」


喜多方は黒霧島にも質問した。


「ああ。いくらアクロバティックさらさらと言っても屋内で飛び降り死体を作るのは不可能だろう。」

「え?屋外、ビルの屋上の件は可能なの?」

「ああ、まず、アクロバティックさらさらというのは飛び降りる→瞬間移動→飛び降りるを繰り返す。その飛び降りる動作の時に人を捕まえてまた飛び降りると、ビルの屋上といっても飛び降り死体を作ることができる。」

「でも、今回は屋内。あくさらは建物を貫通できたとしても人間が貫通できないから犯行は不可能って訳だ。」

「そうだ。これがまたややこしい。」

「なるほど…」


2人が議論している時、しゃくちゃんが耳元で話しかけてきた。


(ねぇ…膝枕して?)

(なに?そんなに眠いの?)

(うん…)

(しょうがないなぁ…)


柊哉はしゃくちゃんを膝枕した。


「俺はまた現場検証に出かける。おい、準備しろ。」


黒霧島はしゃくちゃんを見限って冷たく言い放つ。


「おい憑依霊。お前今回は寝てろ。」

「え?」

「お前に言ってない。そこで寝てやがる憑依霊に言っている。」

「わたし…?」

「そうだ。お前、寝ろ。そんな奴は現場検証にはいらない。」

「ちょっと、そんな言い方…!」


柊哉が反論しようとする。


「喜多方、還具庫からアレ持ってこい。」

「あ…ああ。」


喜多方は黒霧島に怯みながら還具庫に向かった。


「いいか。これは仕事だ。しかも死も伴う危険な仕事だ。そんな寝ぼけたやつを連れて行くなんて死にに行くようなもんだ。わかったか?」

「で、でも…しゃくちゃんだって眠たくて寝てる訳じゃ…」

「だからなんだ。実際そいつは眠たくて仕方がないんだろ。だから俺たちが真剣に話している時に惰眠をぶっこきやがった。」

「…………」


柊哉は何も言い返せない。しゃくちゃんは終始無言である。


「とにかく、今回はそいつを置いていけ。代わりの還具を喜多方に持って来させるから。」

「……………わかりました。」

「ほら、早く寝てこいよ。」


しゃくちゃんは無言で仮眠室へ向かった。その後すぐに喜多方が還具庫から帰ってきた。


「これは?」

「ライフルだよ。もしあくさらに遭ったらこいつを撃って。少しは足止めできるから。」

「ありがとうございます。」

「準備はできたようだな。では、現場検証に向かう。」


2人は再び現場検証に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あらら…キレちゃった。」

「黒霧島。彼は幼い頃から浄霊師を目指していただけあってこの仕事に1番真剣だ。無理もないよ。」

「そうだね…。」

「てか、だら姉。あいつの眠気ってなんなの?」

「うーん…なんとも言えないけど、これだけは言えることが一つある。」

「なに?」

「あの子は"人間臭くなってきている"ということ…

新たな事件が始まりました。どうなるんでしょうね。

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