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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.99 巡礼地への道

   [Ⅰ]



 ルーヴェラを発ってから、どのくらいの時間が経過しただろうか……。

 地平線の彼方に目を向けると、大地に沈み始めた赤く滲む太陽の姿が視界に入ってきた。

 空は朱に染まり、周囲は薄暗さが増している。またそれに伴い、気温も少し肌寒いものへと変化していた。

 この分だと、あと1時間もすれば、日は完全に沈んでしまうに違いない。

 馬車の車窓から周囲を見回すと、辺りは、ルーヴェラからずっと続いていた草原の姿ではなく、赤い土が広がる褐色の大地となっていた。

 草木も少なく、やや荒れた感じに見える。

 街道の先に目を向けると、背の低い山々が柵のように、横に連なって伸びていた。

 というわけで、以上の事からもわかるとおり、ルーヴェラ周辺の青々とした大地の肥沃さは、ここからは感じられない。

 その為、この辺りは、少し寂しい感じがする所であった。

 俺の知っている地球の景色で例えるならば、オーストラリアのエアーズロックがある辺りの光景だろうか。

 まぁとにかく、そんな感じの赤い大地が広がっているのである。

 ちなみにだが、ラティが言うには、ここも一応、バルドア大平原だそうだ。

 そして、この辺りからは本格的に人が住みにくい土地になる為、町や村がないそうである。

 だがとはいうものの、この辺りまで来ると、俺達の周囲は結構賑やかな感じになってきていた。

 なぜなら、俺達の他にも、沢山の人々や馬車の姿が確認できるからである。

 というわけで、俺達は今、巡礼者や旅人達に紛れて進んでいるところであった。

 その為、夕刻になったにも関わらず、魔物に対する不安はあまり襲ってこない。

 まぁ早い話が、赤信号、皆で渡れば怖くない、というやつだ。


(巡礼者が多いんだろうな。それだけ女神イシュラナの信仰が厚いんだろう。ピュレナはイシュマリアが神託を受けた聖地らしいし……)


 そんな感じで、俺達は巡礼者に混じり旅を続けた。

 それから進み続ける事、約1時間。

 前方に見えていた山の麓へとやってきた俺達は、多くの巡礼者達と共に、山の中へと伸びる街道を進んでゆく。

 近くに来て分かった事だが、山の斜面は岩と土だらけで、今までと同様、草木はそれほど生えていない。

 そんなわけで、ある意味ここは、ベルナ峡谷に似た環境の地域であった。

 だが、山の標高自体がそれほど高くはないので、どちらかというと、緩やかな丘陵地帯と言えるだろう。

 比較的、進みやすい地形だ。


(この辺はベルナ峡谷ぽいが……ここはあそこほど険しくないな。見通しもそんなに悪くないし……ン?)


 ふとそんな事を考えてると、ラティが俺に話しかけてきた。


「コタロー、巡礼地は、このピュレナの丘を暫く進んだ所やから、後もうちょっとやで」


 どうやらこの辺は、ピュレナの丘と呼ばれる所らしい。

 山にしては低いと思ったので、これで納得である。

 それはさておき、俺はそこで太陽に目を向けた。

 すると、太陽は今、地平線に隠れようとしてるところであった。


「ラティ、太陽が沈み始めてるけど、日没までには着けそうか?」

「まぁそれまでには着けるやろ。ちゅうても、ギリギリってとこやろうけどな」

「それを聞いて安心したよ。ところでラティ、話は変わるんだけどさ。巡礼地に着いたら馬と馬車はどうするといいだろ? 厩舎なんてないよな?」


 実を言うと、俺達の前後にいる沢山の巡礼者達を見てからというもの、これがずっと引っ掛かっていたのである。

 この巡礼者の馬の数は、宿屋が仮に数十件あったとしても、手に余りそうな数だったからだ。

 ラティは少し考える素振りをする。


「う~ん……神官や貴族が使う厩舎はあるけど、巡礼者や旅人用のは無かった気がするなぁ」

「じゃあ、他の人達はどうしてるんだ?」

「ピュレナ神殿のすぐ隣に大きな湖があるさかい、その湖畔で旅人達は馬の世話をしとるな。多少混雑はするやろうけど、そこで世話するしかないんやないか。まぁ結構広い場所やさかい、十分場所はあると思うで」

「ふぅん。てことは、自分達で面倒見るしかないんだな」

「まぁそういう事になるな」

「そうか……」


 どうやら、自分達で何とかしないといけないようだ。

 俺やアーシャさんは馬の世話なんてできないから、レイスさんやシェーラさんに面倒を見てもらうしかないだろう。

 ついでなので、これも訊いておく事にした。


「あと、食事が出来るところはあるのか?」

「一応、あるにはあるな。神殿側が、巡礼者相手にやっている食事の配給があるんや。まぁお布施が必要やけどな。でも、味はあまり期待せん方がええで。出てくるのは神官達が食べるハミルとガラムーエにルザロやからな」

「それかぁ……確かに、あまり期待はしない方が良さそうだな」


 ちなみに今言った料理だが、ハミルはフランスパンよりも固い、丸く平たいパンで、ガラムーエは何種類かの豆を使ったスープ、そしてルザロは、数種類の干した果実や野菜を混ぜ合わせた乾燥食品である。

 まぁ早い話が、イシュマリアにおける精進料理というやつだ。

 一応、この地で広く食べられている簡素な食事の代表的な物である。

 俺もついこの間までいたベルナ峡谷では、ガラムーエとルザロを食べていたので、その味はよく知っている。

 ハッキリ言って味気ない食事だ。

 まぁそんなわけで、これに関しては過度の期待は禁物のようである。残念……。



   [Ⅱ]



 俺達はそれから更にピュレナの丘を進んでゆく。

 すると前方に、高さ100m以上はあろうかという、褐色の断崖絶壁が見えてくるようになった。

 また、徐々に近づくにつれ、断崖に彫りこまれた巨大な女神像の姿も、俺の視界に入ってきたのである。

 夕日に照らされオレンジ色に輝く断崖の女神は、ゆったりとした波打つ衣を身に纏い、両手を大きく広げ、訪れる者に優しく微笑む美しい女性の姿であった。

 全体的に、古代ギリシャの美術品を見ているかのような美しいフォルムの巨像で、その表情は慈愛に満ちており、胸元にはイシュラナの紋章が刻み込まれていた。 

 そして、そんな女神像の足元には、今まで見てきたイシュラナ神殿と同じ建築様式の建物が幾つか建ち並んでおり、その隣には、断崖から黄金色の飛沫(しぶき)を上げる大きな滝と、夕日が反射してキラキラと黄金に波打つ大きな湖があるのだ。

 夕日が創り上げるそれらの光景は、周囲の景色を忘れるほどに美しいモノであった。

 俺は感動のあまり、ただただ無言で、その光景を眺め続けていた。

 また、アーシャさんやイアちゃんも俺と同じなのか、その光景を目の当たりにし、言葉少なであった。


「あれが巡礼地ピュレナや。結構、壮大な眺めやろ。特に、この夕日が射す時間帯の景色は、巡礼者達の間でも一番美しい眺めやって言われてるんやで」


 俺達はゆっくりと首を縦に振る。


「私は今までピュレナの事を色々と聞いた事はありましたが、まさか、これほど美しい所だとは思いませんでしたわ」

「私もです……」

「俺もだよ」


 そして、俺達は暫しの間、夕日に彩られた幻想的な巡礼地の姿を眺め続けたのである。

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