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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.98 夜明け前の旅立ち

   [Ⅰ]



 翌日の早朝、俺は夜が明ける前に目を覚ました。

 そろそろ旅立ちの時というやつである。

 夜明け前に起床できるかどうかが不安であったが、昨夜は早めに寝た事もあり、上手い具合に体内時計が働いたようだ。

 俺はそこで室内を見回した。

 だがまだ夜が明けていない事もあり、室内は非常に薄暗かった。


(まだ、他の皆は寝てるだろうけど、もう少しで出発だし、魔法で明るくするか……)


 俺は小さく呪文を唱えた。


「グローラム」


 周囲が明るく照らされる。

 俺はそこで、ゆっくりと室内を見回した。

 するとレイスさんとシェーラさんの寝ている姿が俺の視界に入ってきた。

 グローラムの明かりに全く反応しないところ見ると、どうやら2人の眠りはかなり深いようだ。

 日頃の疲れが溜まっているのだろう。

 次に俺はアーシャさんとイアちゃんのベッドに視線を向けた。

 だがしかし……彼女達のベッドはもぬけの殻になっており、室内のどこを見回しても、姿が見当たらないのであった。


(あれ? 2人共、何処に行ったんだ……便所か?)


 などと考えた、その時……。


「ン?」


 左右の脇腹の辺りに、なにやら柔らかい物体があるのを俺は感じ取ったのである。

 俺は、まさかと思い、そこでまず左側に目を向けた。

 すると、思った通りであった。

 アーシャさんがスースーと可愛い寝息を立てて、俺の左隣で寝ていたのである。


(はぁ……やっぱり、アーシャさんだったか……)


 昨晩、マルディラント城で宿泊した時は大丈夫だったので安心していたが、この様子を見る限り、まだあのトラウマからは解放されていないのだろう。

 この調子だとマルディラント城以外での宿泊は、ずっとこんな感じになりそうだ。

 嬉しいような、悲しいような、といったところである。

 だが、そうなると別の疑問が1つ浮かび上がってくる。

 それは勿論、右側にあるこの感触は一体何なんだ? という事である。

 俺は首を右に振り、その物体を確認した。

 そして、次の瞬間! 


「エェ!?」


 俺は目を見開き、思わず、驚きの声を上げてしまったのだ。

 なぜなら、そこにいたのはイアちゃんだったからだ。

 イアちゃんが俺の右腕にしがみ付くように腕を回し、スースーと寝息を立てていたのである。


「はへ……な、なな、なんでイアちゃんがここに!?」


 と、そこで、アーシャさんの寝むたそうな声が聞こえてきた。


「ンンン……どうしたんです……コタローさん、大きな声を出して……」


 アーシャさんは瞼を擦りながら、ムクリと起き上がる。

 だが、俺の隣で眠るイアちゃんを見た瞬間、目を擦る動きを止め、静かに固まったのであった。

 室内にシーンとした静寂が訪れる。

 程なくして、アーシャさんは俺に鋭い視線を投げつけた。


「コタローさん……これはどういうことですか?」

「ええっと……これはですね……俺もどういう事なのか、は、はは、ははは」

「……」


 アーシャさんは無言で俺を睨み付けていた。

 この様子を見る限り、多分、妙な想像をしているに違いない。


(はぁ……どう説明したもんか……ン?)


 するとそこで、イアちゃんがモゾモゾと動き出した。

 イアちゃんは眠い目を擦りながら、俺とアーシャさんに視線を向け、ニコリと微笑んだ。


「あ、おはようございます、コタローさんにアーシャさん」

「へ? ああ、おはよう」

「え、ええ……おはようございます、イアさん」


 イアちゃんがあまりにも普通に挨拶をしてきたので、俺とアーシャさんも釣られて挨拶をしてしまった。

 そして暫しの沈黙が、俺達の間に訪れたのである。

 まず最初に口を開いたのはアーシャさんであった。


「あの、イアさん……どうしてここに?」


 イアちゃんは頬を染め、恥ずかしそうにモジモジした。


「えっと……夜中に、アーシャさんがコタローさんのベッドに入るところを見たので……私も、と思って入ってしまいました」

「あの……つまり、どういう事?」

「じ、実は……私もアーシャさんと同じで、1人で寝るのが怖いんです。それに私も、コタローさんが近くにいると安心できるものですから……つい……ご迷惑でしたか?」


 サナちゃんはそう言うと、少しションボリし、潤んだ目で俺を見詰めたのである。

 こんな風に見詰められると、俺も流石に何も言えない。

 だが、腑に落ちない点があったので、それを訊ねた。


「いや、別に迷惑ではないけどさ。というか、なんでイアちゃんが、それを知っているんだい?」

「悪いとは思ったんですが……実は昨日の朝、コタローさんとアーシャさんの会話を私は聞いてしまったんです。それで……アーシャさんも私と同じだったんだと思って……」


 イアちゃんが言っているのは、多分、ガルテナの宿での事だろう。

 どうやら、あの時の会話を聞かれてしまったようだ。


「そ、そうだったのですか……。それなら、仕方ありませんね……」


 アーシャさんもトーンダウンした。

 少し恥ずかしいのだろう。

 まぁ確かに、イアちゃんは今までが逃亡生活だったようなもんだから、仕方ないといえば仕方がない。

 だがそうなると、1つ懸念すべき事があるので、俺はそれを忠告しておいた。


「レイスさんとシェーラさんはこの事を知っているの?」

「い、いえ……レイスとシェーラにはまだ……」

「あのね、イアちゃん……俺を信用してくれるのは嬉しいんだけど、俺達は出会ってまだ5日しか経ってないんだ。だからレイスさんやシェーラさんには、ちゃんと言っておいた方がいいよ。護衛の2人も想定外の行動をされると困るだろうからさ」

「そ、そうですよね。すいません……軽率でした」


 イアちゃんはションボリと肩を落とす。

 するとそこで、レイスさんとシェーラさんが、ムクリと上半身を起こしたのである。


「私は別にいいわよ。コタローさんなら信用できるから」

「私もだ。皆でいる時くらいはイメリア様のしたいようにさせてあげたい」

「へ? 聞いてたんですか?」

「こんなに近くで話をされたら、嫌でも目が覚めるわよ」


 シェーラさんはそう言って微笑んだ。

 言われてみればその通りである。


「で、ですよね。なは、はは、ははは」 

「ありがとう、レイスにシェーラ」

「いえ、お気になさらないでください、イメリア様」

 

 と、レイスさん。

 まぁそんなわけで、なんかよくわからんが、あっさりと2人から公認されたのであった。

 めでたしめでたしといった雰囲気である。

 だがしかし……そこで、俺にジッと視線を投げかけてくる者がいたのだ。

 それはアーシャさんである。

 アーシャさんは何かを言いたそうな表情を浮かべていた。

 もしかすると、俺がイアちゃんによからぬ事をすると思っているのかもしれない。

 とはいえ、そう思われるのは俺も心外だ。

 言っておかねばなるまい。

 俺はイアちゃん達には聞こえないよう注意しながら、アーシャさんの耳元で小さく囁いた。


「アーシャさん、安心してください。俺は紳士です。いくらなんでも情欲を起こしたりしませんから」


 すると、アーシャさんはアタフタとした。


「な、なな、何を突然言うんですか。わ、私、そんなこと考えてませんよ。突然、何を言うんですか、もう……」

「へ? 違うんですか? アーシャさんの表情見てたら、俺がよからぬ事をするんじゃないかと心配してる風に見えたんですけど」

「そ、そんなんじゃありません。も、もういいです」


 アーシャさんはプイッと、俺から顔を背けた。

 だがさっきと比べると表情が明るかったので、少しは安心したのかもしれない。

 とりあえず、誤解は解けたのだろう。

 まぁそんなわけで、朝から少し予想外の展開があったわけだが、俺達はその後、旅の準備を整え、1階の受付で待つラティと合流した。

 そして、巡礼の地・ピュレナへと向かい、俺達は馬車を走らせたのだ。

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