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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.96 ルーヴェラ

   [Ⅰ]



 俺達が移動を再開してから2時間程経過すると、マルディラントとよく似た街並みが見えてくるようになった。

 ラティ曰く、あれがルーヴェラのようである。

 ルーヴェラはバルドア地方第二の都市というだけあって、確かに大きな街だが、マルディラントと比べると、やや規模は小さい感じだ。

 とはいえ、建物の建築様式が古代ギリシャや古代ローマ風なので、美しい街並みである。

 この分だと、王都もこんな感じの街並みなのかもしれない。

 また、ルーヴェラに近づくにつれ、街道を行き交う馬車や人々の姿も多くなってきていた。

 大きな街なので当然といえば当然だが、俺にとってこれらの光景は、すごくありがたいモノに映った。

 なぜなら、やはり、これだけの人がいると、魔物が襲ってくることは滅多にないからである。

 もうここまで来たら、街に着いたも同然に近いのだ。


(さて……もうそろそろルーヴェラ到着か。警戒を少し解くとしよう。気を張り続けるのも疲れる……)


 それから程なくして、街の中へと入った俺達は、馬車のスピードを落とし、街道から続く石畳の大通りをそのまま真っ直ぐと進んだ。

 そして、その先にある大きな広場が見えてきたところで、俺はレイスさんに指示したのである。


「レイスさん、あの広場なら馬車を停めれると思います。広場の脇に寄せて一旦停めてもらえますか」

「了解した」


 広場に入ったところで、レイスさんは馬車を脇に寄せ、ゆっくりと停車させる。

 後続のテト君達も馬車を停めた。

 テト君は馬車から降り、俺達の方へとやってきた。

 そして、深々と頭を下げたのである。


「ここまでくれば、もう安心です。今日は本当に、色々とありがとうございました。僕達が無事に辿り着く事が出来たのは、これもひとえに、皆さんのお力添えのお蔭です。本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません」


 俺はとりあえず、忠告だけしておいた。


「まぁそれは良いけど、ネルバに帰る時は、もう少し準備をしてから出発した方がいいよ。敵は何が出てくるかわからないからね。それと出来るならば、出没する魔物の情報を街で調べて、対策を立ててから出発するといい。根拠のない自信は、足元を掬われる元だよ」


 続いてレイスが彼らの前にゆく。


「コタローさんの言うとおりだ。慣れないうちは慎重に行動した方がいい。命を落としてしまっては元も子もないからな」

「ご忠告ありがとうございます、コタローさんにレイスさん。今の言葉を肝に銘じておきます。それと話は変わりますが、この道中、皆さんのような上級の冒険者に僕達が出会えたのも、恐らく、女神イシュラナの導きなのだと思います。イシュラナに感謝しますと共に、これからの皆さんの旅に、イシュラナの加護がありますようお祈り致しまして、僕達は失礼させて頂こうと思います」


 テト君はそこで目を閉じ、空にイシュラナの紋章を描く。

 それからテト君は胸の前で祈るように掌を組み、イシュラナへの祈りを捧げた。


「―― 遥かなる天上より、慈愛の光にて世を包み、我等を見守りし女神イシュラナよ……願わくば、この者達の旅に加護と祝福の光を ―― では、僕達はこれで失礼させて頂きます」


 そして彼等は、この場を後にしたのだった。



   [Ⅱ]



 彼等が去ったところで、ラティが俺の前に飛んで来た。


「さて、ワイもルーヴェラ物流組合に行かなアカンから、ここで一旦お別れや。ところで、コタロー達は今から宿を探すんやろ?」

「ああ、そうだけど。どこか良い宿を知ってるのか?」

「せやなぁ……まぁコタロー達が気に入るかどうかわからへんけど、この大通りの先にウルザっちゅう旅の温泉宿があるんや。結構大きな宿やから、部屋はあると思うで。厩舎もあるし。それにウルザは、物流組合が運営してる旅の宿やさかい、ワイの顔も効くしな。で、どうする? そこにするか?」

「温泉宿か……いいねぇ。どうする皆? ラティの薦める宿にする?」


 俺は皆に訊いてみた。


「私はコタローさんの判断に任せますよ」

「私もアーシャさんと同じです」

「レイスさんとシェーラさんもそれでいいですか?」


 2人はコクリと頷く。

 ここはラティにお願いするとしよう。


「じゃあ、ラティ、よろしく頼むよ」

「ほな行こうか。宿はコッチや」



   [Ⅲ]



 ウルザはラティが言っていたとおり、結構大きな宿屋だった。

 飾りっ気のない四角い石造りの建物で、割と庶民的な感じだ。

 旅人の宿でもあるので、当然といえば当然かもしれない。

 多分、貴族はここに宿泊なんぞしないだろう。

 それはさておき、俺は今、この世界に来て温泉に入れるとは思わなかったので、少しテンションが上がっているところであった。

 俺の中に脈々と流れる日本人の血が騒いでいるのである。

 どんな温泉なのかはまだ見てないのでわからないが、周囲の建物の様式を考えると、古代ローマのテルマエのような公共浴場なのかもしれない。

 だがしかしィィィィ! 

 そんな事はどうでもいいのである。

 とにもかくにも、今の俺は、温泉につかってゆっくりと身体を休め、鼻歌でも歌いたい気分なのだ。


(やったぁ、温泉だ。今日はゆっくり浸かるぞ)


 ラティに受付へと案内され、チェックインを済ませた俺達は、早速、部屋に向かう事にした。

 ちなみに借りた部屋は、6人部屋を1つだけだ。

 話し合った結果、皆で一緒にいる方が安全という結論に達したからである。

 部屋に入った俺は、荷物をその辺の床に置き、ベッドに腰かけて横になった。

 この道中、魔物との戦闘も何回かあったので、流石に疲れたのだ。

 他の皆も同じで、室内に置かれた椅子やベッドに腰掛け、楽にしているところである。

 暫くそうやって体を休めていると、アーシャさんが俺に耳打ちをしてきた。


「コタローさん、一度マルディラントに戻りたいので、ついて来てもらいたいのですが、いいですか?」

「ああ……そういえばそうでしたね」


 俺はそこで立ち上がり、イアちゃん達に視線を向けた。


「少しばかり、アーシャさんと出掛けてきますんで、皆は暫く、ゆっくりと休んでてもらえますか」

「わかりました」

「うむ。了解した」

「そうさせてもらうわ。私も疲れちゃたから」


 とまぁそんなわけで、俺はアーシャさんの一時帰宅に付き添うことになったのである。


 ―― それから1時間後 ――


 俺達が部屋に戻ると、イアちゃん達の他にも待っている者がいた。ラティである。

 後で部屋に来ると言っていたので、チェックインの時に部屋番号を教えておいたのだ。

 ラティは俺達の姿を見るなり、ニカッと笑みを浮かべ、気さくに話しかけてきた。


「おっ、帰って来たな。悪いけど、上がらせてもらってるで」

「物流組合での用事とやらはもう終わったのか?」


 俺はそう言って、自分のベッドに腰掛けた。

 アーシャさんも俺の隣に座る。


「まぁな。それはそうとコタロー、明日なんやけど、いつ頃出発するつもりなん? ワイも、その辺の事を訊いとかなと思って来たんや」

「出発は……そうだな……ここにもイシュラナ神殿があるから、イシュラナの鐘が鳴る頃なんてどうだ?」


 するとラティは目尻を下げ、微妙な表情を浮かべた。


「イシュラナの鐘かぁ……少し遅い気もするなぁ……」

「え、遅いのか?」

「コタロー達はともかく、ワイは王都に向かわなあかんからな。まぁアルカイム地方に入るだけなら、1日あればええけど」


 そういえば、ラティには、アルカイム地方に向かっているとしか言わなかった。

 用心の為に伏せたのだが……こうなった以上は仕方ない。

 ここは誤魔化さず、ハッキリしておいた方がいいだろう。


「そういえば言い忘れてたけど、実は俺達も王都に向かっているんだよ。だから目的地はラティと同じさ」

「なんや、コタロー達も王都かいな。ン……って事は、もしかして、王都に向かうのは初めてなんか?」

「ああ、初めてだ。話を戻すけど、ここから王都までは結構かかるのか?」


 ラティは天井を見上げて考える仕草をする。


「せやなぁ……馬車なら、最低でも2日はみといた方がええかもしれんな」

「2日か……」

「まぁ日数はそんなもんや。でもな、1つ問題があんねん。実はこの先、王都に着くまで、街や村が無いんやわ。せやさかい、必要なモンがあるんなら、ここで今の内に調達しとかなあかんで」


 ここでレイスさんが話に入ってきた。


「という事は、道中は野宿になるのか?」

「いや、野宿はせんでもええわ。まぁ時と場合によっては、それもあるやろけど」

「どういう意味ですか?」


 と、イアちゃん。


「ここから王都に向かう場合はな、普通、アルカイム地方に入ってすぐにある巡礼地ピュレナを目指すんが、旅人達の間では常識なんや。せやから、野宿はせんでええと思うで。とはいっても、道中、要らん事が起きたりすると、野宿もあるかも知れんけどな」

「ピュレナ?」


 初めて聞く単語なので、俺は思わず首を傾げた。


「光の女神・イシュラナが、イシュマリアに自らの意思を伝えたと云われる、啓示の地の1つです。私は行った事がありませんが、噂によりますと、ピュレナには断崖に彫りこまれた巨大な女神像があるそうですよ」


 アーシャさんが答えてくれた。


「へぇ、そうなんですか」


 岩壁に彫りこまれているということは、バーミヤンの石仏みたいな像なのかもしれない。


「まぁそういうこっちゃ。で、話を戻すけど、そのピュレナには巡礼者が寝泊まりできる大きな建物があるさかい、そこで一晩休んでから旅人達は王都に向かうんや。ただ、宿屋みたいに部屋はないから、皆で雑魚寝になるけどな」

「なるほどね、巡礼地ピュレナか……で、その巡礼地まではどれくらいかかるんだ?」

「ワイが気にしてんのは、そこやねん。実はな、ここからピュレナまでは結構距離があるんや。相当朝早く出発せんと、日が落ちるまでに着けへんねん。せやからさっき、イシュラナの鐘の鳴る頃では少し遅いと言ったんや」


 空を飛べるラティがこう言うくらいだ。

 かなり遠いんだろう。


「そうか……。ところで、ラティはいつ頃がいいと思うんだ?」

「せやなぁ、夜が明け始める頃には出た方がええと思うで」


 俺はそこで皆の顔を見た。


「どうする皆?」

「私達はこの土地には疎いですから、ここはラティさんの意見に従った方がいいかもしれませんね」

「私もそう思うわ」

「コタローさん。私も同意見ですわ」

「私もだ」


 皆はラティの意見に賛成なようだ。

 まぁそれが一番無難だろう。


「じゃあ、明日は少し早いけど、夜明けと共に出発って事でいいね?」


 皆はコクリと頷く。


「じゃあ、そういう事になったから、明日はヨロシク頼むよ、ラティ」

「こっちこそ、ヨロシクや」


 その後、打ち合わせを終えた俺達は、善は急げという事になり、旅に必要な道具や武具を近くの店で仕入れる事にした。

 そして、それらを粗方揃えたところで宿に戻り、温泉で旅の疲れを癒す事にしたのである。

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