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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.95 ラティ

   [Ⅰ]



 俺達は馬車の中で、テト君達が戻って来るのを待っていた。

 さっきテト君から色々と事情を聞いたのだが、彼等はこの付近で休憩していた時に、魔物に襲われたようである。

 しかし、思っていたよりも魔物が強かったので、慌ててここまで逃げてきたというのが、これまでの経緯のようだ。

 そんなわけで、テト君達は今、自分達の馬車が無事かどうかを確認しに向かっているところであった。

 無事な事を祈るばかりである。


   *


 話は変わるが、テト君はやはりイシュラナの神官のようだ。

 ちなみに今は見習いだそうである。

 一応、この冒険者達のリーダー的な存在のようだが、俺からすると、お堅いイシュラナの神官が冒険者みたいな事をしてるのが不思議だったので、それをさっき訊いてみた。

 するとテト君から、こんな言葉が返ってきたのである。


「イシュラナの神官は悪事には加担しませんが、世を乱す魔物の退治には協力しますよ。女神イシュラナの啓示した光の聖典の第10章にも、こう書かれておりますからね。―― 世に災いをもたらす悪しき存在が現れしとき、恐れず、そして勇気をもって戦いなさい。汝の御霊はイシュラナと共にあります ――と。だからです」


 テト君の話を要約すると、悪しき存在には武器を手に取れという教義らしい。

 つまり、冒険者と共に行動するイシュラナの神官というのは、このイシュマリアにおいて、珍しくもなんともない事のようである。

 これは覚えておいた方が良さそうだ。

 それからテト君は、商人の護衛の他に、神殿にも用があるような事を言っていた。

 俺も何の用かまでは訊かなかったが、テト君曰く、今のイシュラナ神殿は色々と慌ただしい事になっているそうである。

 もしかすると、ヴァロムさんの件が影響しているのかもしれない。

 というわけで、話を戻そう。


   *


 彼等が確認に向かったところで、アーシャさんが俺に耳打ちしてきた。


「あの方達の馬車が無事だといいですね……。でもコタローさん、もし駄目だった場合は、どうするのですか?」


 中々難しい質問である。


「駄目だった場合ですか……まぁその時は、俺達の馬や馬車を利用してなんとかするしかないでしょうね。でも、今はとりあえず、彼等を待ちましょう」

「そうですね」


 俺はそこで空を見上げた。

 すると、空は相も変わらず、灰色の雲で覆われたままであった。

 太陽が見えない為、日没までどのくらいの時間が掛かるのか分からないが、今まで経過した大体の時間を考えると、恐らく、後4時間から5時間といったところだろう。


(彼等の馬車が無事ならば、日没までにはルーヴェラに着ける筈だ。無事だといいが……ン?)


 などと考えていると、十字路の右側から、テト君達が乗った2台の荷馬車がやって来たのである。

 見たところ、荷台に攻撃の爪痕が少しあるが、馬車は無事なようであった。

 


「どうやら大丈夫みたいですよ」

「ええ、馬も元気そうですので、あれなら旅に支障はなさそうです」


 アーシャさんの言うとおり、馬は軽快に足を動かしていた。

 とりあえずは一安心といったところである。

 彼等の馬車は、俺達の後方でゆっくりと停車する。

 と、そこで、テト君が馬車から降り、こちらへ駆け寄ってきた。


「コタローさん、遅くなって申し訳ありません。僕達の馬車はなんとか動かせそうです」

「それはよかった。なら、そろそろ出発しようか」

「はい、ではよろしくお願いします」


 テト君は自分達の馬車に戻る。

 俺はそこでシェーラさんに指示を出した。


「シェーラさん、彼等の後方に回って、殿(しんがり)を引き続きお願いできますか?」

「わかったわ」


 シェーラさんは頷くと馬に跨り、後方へと移動を開始する。

 それを見届けたところで、俺はレイスさんに出発の合図を送ったのである。


「ではレイスさん、お願いします」

「了解した。ハイヤッ」


 レイスさんの手綱を振るう掛け声と共に、馬車はゆっくりと動き始めた。

 すると、その時である。


 ―― パタパタパタ ――


 という羽音と共に、あのバートンが俺達の馬車に乗り込んできたのだ。

 バートンは空いてる席に座ると、陽気な口調で話しかけてきた。


「ついでやさかい、ワイもここに乗せてぇな。道草食ったから疲れたんや。フゥゥ」

「つーか、もう乗ってるやんけ。まぁ空いてるから、別に構わんけどさ」

「へへへ、あんちゃん、中々ええツッコミするなぁ。ワイと気が合いそうやわ」

「なんじゃそら」


 人懐っこいバートンだ。

 この様子を見る限り、赤いバートンと人の共存してきた歴史は、相当長いのかもしれない。

 まぁそれはさておき、道中、種族名で呼ぶのもなんだし、自己紹介でもしておくとしよう。


「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名はコタローだ。見ての通り、冒険者というやつだな」

「へぇ~、あんちゃん、コタローって言うんや。でも、この辺ではあまり聞かん名前やなぁ。まぁ見たところ、アマツの民のようやし、当たり前か……。さて、じゃあ、次はワイの番やな。ワイの名はラティや。ヨロシクなコタロー」

「ああ、ヨロシク」


 続いてアーシャさんやイアちゃんも自己紹介をした。


「私はアーシャですわ」

「私はイアです」

「アーシャねぇちゃんにイアねぇちゃんやな。憶えたで。ルーヴェラまでやけど、ヨロシク頼むわ」


 何となくだが、俺と少し差のある呼び方である。まぁいいか……。

 さて、名乗り合った事だし、軽く世間話でもするとしよう。


「ラティはバートン便を始めて長いのか?」

「うんにゃ、まだ2年ほどやから、ペーペーや。後ろにいる冒険者達みたいなもんやわ。そういうコタローは、冒険者生活が長いんやろ? さっきの戦いぶり見てたら、相当なもんやと思ったで」

「いや、俺もペーペーだよ。ついこの間、冒険者になったばかりだからな」


 ラティはポカンとしていた。


「は? ついこの間って……ホンマかいな。さっきの戦いの時、他の皆にえらい的確な指示をだしとったやん。腕っぷしも凄いけど、あの手際のええ戦い方は、ごっつい熟練の冒険者がする戦い方やったでぇ」

「まぁそう思われるのも悪い気はしないけど、今言ったのは事実だよ。できるだけ効率の良い戦闘方法を心がけてるから、そう見えるだけさ」


 とはいうものの、俺もある意味では、熟練の冒険者なのかもしれない。

 勿論、ゲーム上での話だが……。


「ふ~ん、そうなんか。ま、ええわ。それはそうと、後ろの若いあんちゃん達は命拾いしたなぁ。コタロー達が付近におらんかったら、確実に全滅しとったで。もう少し考えて、旅支度すればよかったのに」


 ラティはそう言って、俺達の後方を走る荷馬車に目を向けた。


「まぁそう言ってやるなよ。彼等も情報が少なすぎて、今の街道の状況を予想出来なかったんだろ。さっきの商人も言ってたじゃん。半年ほど前に来た時は、この辺りもネルバ周辺と同じくらいの魔物しか出なかったって」


 そう……彼等に事情を話してもらった時、商人の男が確かそんな事を言っていたのだ。

 つまり、ここ最近になって、魔物が強くなり始めたという事である。

 オッサンの説を信じるならば、この辺りに漂う魔の瘴気が濃くなってきているという事なのかもしれない。

 というか、最近色々とあったので、俺はもうこの説を信じつつあるが……。


「そういえば、そんなこと言うとったな。ネルバは田舎やさかい、情報伝わるのも遅いし、しゃあないか」

「ところで話は変わるけどさ。ラティはルーヴェラについて詳しいのか?」

「まぁな。ワイはルーヴェラを拠点に活動してるさかい、ある程度の事は知っとるつもりや。で、なんか訊きたい事でもあんの?」


 ゴルティア卿とゼマ神官長について訊きたいところだが、直球で質問すると不審に思うかもしれない。

 特にフレイさんの名前については出さない方がいいだろう。

 回りくどくなるが、俺はそれとなく訊いてみる事にした。


「俺さ、ルーヴェラは初めてなんだけど、どんな所なんだ?」

「ええ所やで。バルドア地方第二の都市やから、沢山住民もおるし、外から色んな物や色んな奴等も行き来するしな。賑やかで、ええ街や」

「でも大きい街だと治安悪い場所とか多そうじゃん。その辺はどうなんだ?」

「まぁそりゃ、そういう場所も少しはあるけど、全体的に見れば治安は良い方や。街を守る衛兵もちゃんとしてるしな。ワイから見れば、王都よりも、よっぽど治安ええで」

「へぇ、そうなんだ。じゃあ、街を治める貴族は上手い事やってるんだな」

「せやで。ルーヴェラを治めるゴルティア卿は、悪事に厳しいしっかりした人やさかい、その辺はちゃんとしてるで。街の者達からも信頼が厚いしな。ええ御方やわ」


 ラティの話を聞く限り、中々の善政を敷く貴族のようである。

 じゃあ、次行ってみよう。


「なるほど、それを聞いて安心したよ。ところで、さっきテト君が言ってたんだけど、ルーヴェラのイシュラナ神殿が最近ゴタゴタして忙しいみたいだね。何かあったのか?」

「ああ、それは多分アレや。王都の方で起きてるゴタゴタ関連のやつやろ」


 多分、ヴァロムさんの件だと思うが、知らないフリをしておこう。


「王都でのゴタゴタ?」

「なんや、コタローは知らんのか? 今、王都では、魔炎公と呼ばれた元宮廷魔導師が異端審問裁判にかけられるって話で持ち切りやで」

「ほ、本当かそれ? 初めて知ったよ」

「ホンマや。まぁそれがあるもんやから、ルーヴェラのイシュラナ神殿もゴタゴタしとるんやろ。ルーヴェラのイシュラナ神殿最高権力者であるゼマ神官長や、その取り巻き連中も王都に呼ばれておるそうやからな。だから、かなり大事(おおごと)やで」

「そんな事になっているのか……それは大変だな」


 どうやら、ゼマ神官長は今、ルーヴェラにはいないようである。

 と、ここで、アーシャさんが話に入ってきた。


「ラティさん、ちょっとお訊きしてもよろしいですか?」

「ええで、アーシャねぇちゃん」

「今、魔炎公の話が出てきましたけど、王都の方で何か進展はあったのですか?」


 アーシャさんは言葉を選んで訊いている感じであった。

 俺が知らないフリしたのを見て、アーシャさんも察したのだろう。


「う~ん……その辺の事はあまり聞かんなぁ。ワイが知ってるのは、八支族である太守と八名の大神官に加え、主要な神殿の神官長が王都に召集されている事くらいや。これ以上の事はワイもわからんわ」

「そうですか。どうもありがとうございました」

「ところで話は変わるんやけど、コタロー達はルーヴェラに何か用事でもあんの?」

「いや、特にこれって用事はないよ。俺達はアルカイム地方に向かっているから、とりあえず、今日の宿泊地ってだけさ」


 するとラティは目を大きくし、驚いた表情を浮かべた。


「なんやそうなんか! なら、丁度ええわ。ワイの次の書簡配達場所がオヴェリウスやねん。つーわけで、明日もワイ、コタロー達と一緒に行ってもええか? ワイ等バートン便は信用第一やさかい、基本単独行動なんやねんけど、コタロー達は信頼できる気がするわ。それにコタロー達はなんか話しやすいしな。で、どやろ? 一緒に行ってもええかな?」


 俺はそこで、アーシャさんとイアちゃんに視線を向けた。

 2人は頷く。


「私は別に構いませんわ」

「私も良いですよ」

(2人が良いなら、別にいいか)


 俺は返事した。


「じゃあ、明日も一緒に行くか、ラティ」

「道中長いけど、明日もよろしく頼むわ」


 とまぁそんなわけで、ラティが王都への旅に、加わることになったのである。


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