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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、辺境の地ガルテナへ……

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Lv.91 王都へ出立

   [Ⅰ]



 やや曇った空の元、風の冠の力によってマルディラントを発った俺達は、昨日と同様、リジャールさんの家の裏手へと降り立った。

 俺達は正面に回って玄関扉を開き、中に向かって呼びかける。


「おはようございます、リジャールさん。コタローです」


 家の奥からリジャールさんの元気な声が聞こえてきた。


「おお、来たか。ではコタローよ、お主だけ中に入ってきてくれ。昨日、報酬を渡した部屋じゃ」

「え? 俺だけですか。……わかりました。では、お邪魔します」


 なぜ俺だけなのかがわからなかったが、とりあえず、指示に従う事にした。

 昨日の部屋へと進むと、丸テーブルの椅子に腰掛けるリジャールさんの姿があった。

 リジャールさんは俺の姿を見るとニコリと微笑んだ。


「ではコタローよ。そこの空いている椅子に腰掛けてくれ」

「はい」


 俺が椅子に腰掛けたところで、リジャールさんは口を開いた。


「まずは、おはようじゃな。昨夜はよく眠れたかの?」

「ええ、よく眠れましたので、今日は調子がいいですよ」

「それは良かった。さて、それでは本題に入ろうかの……」


 と言うとリジャールさんは、茶色い革製の巾着袋をテーブルの上に置いたのである。

 巾着袋の大きさは、日本で売っている一般的な弁当箱が入る程度の物で、中に重い物が入っているのか、ずっしりとした感じであった。

 テーブルに置いた時に、シャリンという金属音が聞こえたので、もしかすると、中身は金物系のアイテムかもしれない。

 リジャールさんは巾着袋を俺に差し出した。


「昨日、お主に渡すと言った物じゃが、それはコレの事じゃ」

「これは?」

「とりあえず、中を見てみい」

「では……」


 リジャールさんの意図がよく分からないが、俺は巾着袋を手に取ると、言われるがままに中を確認した。

 だが次の瞬間、俺は目を見開いて驚いたのである。

 なぜなら、巾着袋の中には、カーンの鍵に似た物が幾つも入っていたからだ。


「え!? これは一昨日のアレですよね……しかも、こんなに沢山……どうしてこんなに」

「ああ、お主の言うとおり、それはアレじゃ。しかしの、それは代替え素材で作った紛い物なのじゃよ。1度使うと形状を維持できずに砕けてしまうので、不便といえば不便じゃが、もし何かあった時の為に予備で持っておくとよいと思っての。まぁそういわけで、アレの事は、あまり大きな声で話すわけにはいかぬから、お主だけを呼んだのじゃ」


 俺はリジャールさんの話を聞いて、ゲームの魔法の鍵を思い出してしまった。

 確かシリーズによっては、一度使うと壊れる設定の話もあったからだ。

 それはさておき、持っていても損はない物なので、俺は快く鍵を貰う事にした。


「そうなのですか。では、ありがたく頂戴いたします」

「うむ。持ってゆけ。それから、また欲しくなったら、儂の所に来るがいい。幾らでも作れるからの」

「はい、その時はまたよろしくお願いします」


 代替え素材とはいえ、こういった物を作り上げてしまう、その手腕は流石だなと思った。

 老いたりとはいえ、今でも超一流の錬成技術を持っているのだろう。

 ヴァロムさんが頼るわけだ。


「ところでコタローよ。ティレス様は、守護隊の派遣について何か言っておったかの?」

「ええ、それなのですが……ティレス様は今日中に第1陣を発たせると言っておりました。なので、恐らく、2日後には第1陣の部隊がこちらに到着すると思われますよ」


 リジャールさんは安堵の表情を浮かべた。


「そうか、それは良かった。儂もその旨を村長に伝えておこう」


 俺も昨晩の事を訊いてみた。


「昨晩はどうでしたかね? ヴァイロン達は現れましたか?」


 リジャールさんは頭を振る。


「いや、現れなんだ。お主の言うとおり、今は攻め手を欠いておるのかもしれぬの。まぁこちらも今の内に警備体制を整えておけるので、その方が好都合じゃがな」

「確かに……あ」


 俺はそこで、昨日、訊けなかった事を思い出した。

 ちなみにそれは、イアちゃん達がいたので訊けなかった事であった。


「あの……この魔導の手なんですけど、ヴァロムさんが使っているところを見た事がないんですが、ヴァロムさんも以前は使っていたのですかね?」

「いや、ヴァルは魔導の手を使っておらぬ。というか、ヴァルなら、使わぬでも同じ事が出来るからの」

「え、それってどういう……」

「お主のその口振りじゃと、まだヴァルから、大賢者が編み出した秘術を学んではおらぬようじゃな」


 大賢者の編み出した秘術……多分、アレの事だろう。


「それって……もしかして、アムト・レイシェントの事ですかね? それなら、今、学んでいる最中ですが」

「ほう、そうか。ならば話は早い。これはヴァルが言っておったのじゃが、秘術を使っておる時は、周囲に漂う大地の魔力に干渉出来るらしく、魔導の手を使わぬでも同じことが出来るそうなのじゃ。まぁそういうわけで、ヴァルは魔導の手を使ってはおらんのじゃな」

「そ、そうだったんですか、初めて知りました」


 まさか、アムト・レイシェントにそんな秘密があったとは……。


「実は儂も、お主と同じような事をヴァルに訊いた事があるんじゃ。するとヴァルの奴はの、こんな事を言っておったわ。――やろうと思えば道具無しでもできるのだから、無理して魔導の手を装備する必要はない。腕は2つしかないのだから、自分の能力をもっと高めてくれる物を装備する――との。あ奴らしい答えじゃわい」

「確かにそうですね。ヴァロムさんらしい合理的な考え方です」

「ああ、全くじゃ。……さて、儂から渡す物は以上じゃ。これ以上引き留めると、お主等の旅に支障が出るじゃろうから、もうこの辺にしておこうかの……っと、そうじゃ、これを言い忘れたわい。投獄されているヴァルに会う事があったならば、儂がこう言っていたと伝えておいてくれ。『何をするつもりなのか知らんが、お主も年なんじゃから、あまり無理をするなよ』との」

「ええ、必ず伝えておきます」


 リジャールさんからしたら、こう言いたくもなるだろう。

 それはともかく、俺もそろそろお暇させてもらうとしよう。


「ではリジャールさん。皆も待っていると思いますので、俺もこれで失礼させて頂こうと思います」

「うむ、見送ろう」


 皆の所へ戻った俺は、そこでリジャールさんに向き直り、別れの挨拶をした。


「リジャールさん、短い間でしたが、色々とありがとうございました」

「いやいや、世話になったのはこちらの方だ。またいつでも気兼ねなく訪ねてきてくれ。お主等にはそれが出来るのじゃからな。カッカッカッ」


 リジャールさんはそう言って豪快に笑った。

 俺は思わず苦笑いを浮かべる。


「はは、その時はよろしくお願いしますよ」

「うむ」


 出会って2日しか経っていないが、この人ともこれでお別れかと思うと、少し寂しさが込み上げてくるから不思議なものである。

 多分、話しやすい人だからなのだろう。

 なぜか知らないが、何日も一緒にいたような錯覚を覚えるくらいである。


「それから、カディスさん達にもよろしくお伝えください。警備の邪魔しては悪いので、俺達はこのままガルテナを発つつもりですから」

「ああ、伝えておこう。それと道中は気を付けるがよいぞ。人づてに聞いた話じゃが、王都に向かうにつれて、魔物も強くなってきておるそうじゃからの」

「ええ、十分に気を付けて進むつもりです」


 続いて、他の皆もリジャールさんに挨拶をしていった。


「ありがとうございました、リジャールさん。色々と勉強になりましたわ。またお会いしましょう」

「リジャールさんもお元気で」

「お世話になりました、リジャールさん」

「ではリジャール殿、お身体に気を付けて下され」


 リジャールさんは皆にニコリと微笑んだ。


「うむ。お主達も元気でな。たまには顔を見せに来るがよい」

「はい、その時はまたよろしくお願いします」


 と、イアちゃん。

 そして、俺達は最後にもう一度、リジャールさんにお別れの言葉を告げ、この場を後にしたのであった。


「ではリジャールさん、お元気で」と。


 俺達はその後、宿屋の厩舎に立ち寄り、馬と馬車を引き取りに行った。

 そして、来る途中にあった分かれ道にまで戻り、王都オヴェリウスへと向かって馬車を走らせたのである。



 ―― 第二章 終 ――       草々

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