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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、辺境の地ガルテナへ……

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Lv.87 カラール魔導研究所

   [Ⅰ]



 イアちゃん達の待つ部屋に戻った俺達は、ティレスさんと交わした内容を3人に話した。

 そして、今日は城に泊まっていくよう、ティレスさんから言われた事も、そこで伝えておいたのである。

 一通り説明したところで、イアちゃんが訊いてきた。


「あの……私達も、今日はここに泊めてもらえるんですか?」

「ああ、ティレスさんから直々にそう言われたからね。だから、ここはお言葉に甘えさせてもらおうと思ったんだよ」


 俺の言葉を聞き、イアちゃん達3人は表情が綻んだ。

 今まで色々とあったので、少し安心したのだろう。


「でも、リジャールさんは一旦、ガルテナに帰るそうです」

「すまんの、アーシャ様。儂も泊まりたいのは山々なんじゃが、向こうで村長に報告もせねばならぬからの。それに、まだ村は危険な状態じゃし、儂だけがここにいるわけにもいかぬのじゃよ。まぁそういうわけじゃから、ティレス様にはアーシャ様からよろしく伝えておいて下され」

「ええ、わかっております」

「ねぇ、それはそうと、この後はどうするの? まだ外は明るいわよ」


 シェーラさんはそう言って窓を見た。


「そうなんですよね。夕食までにはまだ時間があるんですよ。ところで、リジャールさんはもうガルテナに帰られるのですか?」

「ふむ……そうじゃな」


 リジャールさんはそこで顎に手をやり、暫し考える仕草をした。

 すると何かを思い出したのか、ポンと手を打ったのである。


「おお、そういえば、グレミオが帰りに寄って行けと言っておったな。久しぶりじゃし、儂は今から、あ奴の工房でも覗いてみようかの。日が暮れるには、まだ時間が掛かりそうじゃしな」

「グレミオさんて、さっき会った方ですよね?」

「ああ、そうじゃ。そして、お主が所有する魔光の剣を作った男じゃな。なんじゃったら、お主も来るか?」

「行きます、行きます。俺、魔導器の工房って興味あるんですよ」


 すると他の皆も声を上げた。


「じゃあ、私も行きます」

「では我々も」

「私も行きますよ。コタローさんの持っている魔光の剣というのが気になりますので」


 まぁそんなわけで、俺達は夕食までの空き時間を利用して、グレミオさんの工房へと向かう事になったのだ。



   [Ⅱ]



 マルディラント城を出た俺達は、リジャールさんの案内で1等区域内の大通りを進んで行く。

 まだ日が高いのもあってか、大通りは沢山の人々が行来していた。

 だが、ここが1等区域というのもあり、その多くは身なりの良い裕福そうな人達ばかりであった。

 俺達みたいな冒険者風の者もいないわけではないが、ここではどうやら少数派のようである。

 もしかすると、俺達は少し浮いて見えるのかもしれない。

 ふとそんな事を考えながら進んでいると、リジャールさんが俺に話しかけてきた。


「コタローよ、お主、ここにはよく来るのかの?」

「いえ、数回来ただけですよ。まぁその多くは、お師匠様のお使いみたいなもんですがね。リジャールさんは、よく来られるんですか?」

「マルディラントには何回も来たことはあるが、この1等区域は1年前に来たきりじゃな。通行許可証を見せれば、幾らでも1等区域に入れるが、グレミオと会う以外、用はないからの。ン?」


 リジャールさんはそこで言葉を切ると、前方に佇む大きな石造りの建物に目を向けた。

 それは、奥行きがある2階建ての四角い建物であった。

 正面にはノッカーの付いた木製の大きな玄関扉があり、その上にはこの国の文字で『カラール魔導研究所 兼 魔導器製作工房』と書かれた大きな細長い看板が掲げられていた。


「あれじゃ、グレミオの工房は。どれ、行ってみるかの」


 どうやらここが、グレミオさんの工房のようだ。

 建物の前に来たところで、リジャールさんがノッカーに手をかけ、扉を軽く打ち鳴らす。

 程なくして扉が開かれ、中からメイド姿の若い女性が現れた。


「はい、どちら様でございましょうか?」

「儂はグレミオ殿の知り合いでリジャールと申す者じゃが、グレミオ殿は今こちらにおられるかの?」

「少々お待ちくださいませ」


 女性は建物の奥へと消えてゆく。

 それから暫くすると、女性はこちらに戻ってきた。

 そして、丁寧な所作で、俺達を中へ迎え入れたのである。


「失礼をいたしました。どうぞ中へお入りください。グレミオ様は、この奥にある研究室におられますので、私について来てくださいませ」

「うむ」――


 建物の中に入った俺達はメイドさんに案内され、青いカーペットが敷かれた上品な通路を、奥へと進んでゆく。

 それから程なくして、メイドさんはとある扉の前で立ち止まった。

 メイドさんはそこで扉をノックし、中に向かって呼びかけた。


「グレミオ様、リジャール様をお連れ致しました」

「わかった、今行く」


 という声が聞えた直後、ガチャリという音を立てて、扉が開かれた。

 中から現れたのは勿論、先程マルディラント城で見た、あの男であった。

 男は恭しく頭を下げ、リジャールさんに挨拶をした。


「リジャール様、お久しぶりでございます。先程はどうも」

「久しぶりじゃな、グレミオ。どうじゃ、調子の方は?」

「まぁまぁといったところでしょうか。では、立ち話でもなんですので、中にお入りください。さ、お連れの方々もどうぞ」


 俺達はグレミオさんに促され、部屋の中へと足を踏み入れた。

 グレミオさんはそこでメイドさんに視線を向けた。


「タニア、お茶を7つ用意してくれるかい?」

「畏まりました」


 メイドさんは頭を下げ、扉を閉める。


「さ、それでは皆さん、奥に椅子がございますので、そこでお寛ぎください。その内、熱いお茶も来ますので」

「うむ、そうさせてもらおうかの」


 そして、俺達は部屋の奥へと移動したのである。



   [Ⅲ]



 グレミオさんの研究室は、それなりに広い空間であった。

 学校の教室程度はあるだろう。

 研究室というだけあって、作業台や幾つもの棚が置かれていた。

 また、それらの上には、様々な魔導器や素材らしきものが沢山並んでいる。

 パッと見は、工学系の実験室を思わせる様相をしていた。

 なので、お世辞にも上品な部屋とは言えず、寧ろ、作業部屋といった方がしっくりくる。

 だがとはいうものの、俺達が案内された場所は別であった。

 なぜなら、部屋の奥には、品の良いソファーや応接テーブルが置かれているからである。

 奥のスペースだけは別世界のように、上品な雰囲気となっているのだ。

 俺達が奥のソファーに腰を下ろしたところで、グレミオさんもその辺の椅子に腰掛けた。

 

「1年ぶりでございますかな、リジャール様。お元気そうで何よりです。ところで、こちらの方々は?」


 グレミオさんは俺達をチラッと見た。


「この者達は、儂の知り合いじゃよ。中々に腕の立つ者達でな。ここ最近物騒な事があったものじゃから、手を借りておったのじゃ」

「へぇ、そうだったのですか。では初めてお会いする方達ですので、自己紹介をしておきましょう。私はこの工房の主であるグレミオ・メリン・カラールと申す者です。リジャール様は私の師である方ですので、これからも一つよろしくお願いしますよ」


 俺も自己紹介をしておいた。


「私の名はコタローと申します。よろしくお願い致します」


 その後、俺に続いて、他の皆も自己紹介をしていった。

 ちなみにアーシャさんは変装中なので、身分を隠蔽中である。

 そして、自己紹介を終えたところで、グレミオさんとの懇談会が始まったのだ。

 グレミオさんは物腰柔らかく、話をする人だった。

 割と気さくな方のようだ。


「いやぁ、それにしても、驚きましたよ。マルディラント城で、まさかリジャール様と会うなんて思ってもみませんでしたからね」

「儂もじゃ。ところで、ティレス様から、何か仕事の依頼でもされたのかの? あの時、量産体制がどうとか言っておったのが聞こえたが」


 するとグレミオさんは、少し困った表情になった。


「ええ……実は、破魔の剣と慈愛の杖を急ぎ量産してほしいと頼まれたんです。ここ最近、強力な魔物が増えてきているそうなので、普及品である武具では対処が難しくなりつつあるらしいのですよ」

 破魔の剣……懐かしい名前である。

 確か、道具で使うとギルアと同等の効果が得られた武器であった。

 ゲームでは中盤に入りかける頃にお世話になった武器の1つだ。

 それはさておき、今の話を聞き、リジャールさんも顔を顰めた。


「むぅ、それはまた難しいところじゃな。その2つは作るのは簡単じゃが、どちらも魔力源であるドロウ・スピネルと魔法発動式を組み込まねばならぬから、錬成に時間が掛かるからの」

「そうなんですよ。ですから、生産効率を上げる為に、人員の配置や生産工程を短縮する方法を見直さないといけないんです」


 色々とマニアックな会話が聞こえてきたが、わけがわからんので俺は訊ねた。


「リジャールさん、今、ドロウ・スピネルと仰いましたが、それは何なのですか?」

「ああ、ドロウ・スピネルとはな、魔力を蓄積する赤い魔晶石の事じゃ。つまり、魔法を付加させる魔導器を製作するには、必要不可欠な素材という事じゃな。採掘量もそれなりにある上に仕入れやすいものじゃから、魔法発動式を組み込む際に、その魔力源としてよく用いられておるのじゃよ」

「へぇ、なるほど」


 ゲームではその辺の謎は触れていないので、少し好奇心をそそる話であった。


「しかも、何かと便利な素材でな。溜めた魔力を使い切っても、周囲に漂う大地の魔力を吸収して、またすぐに蓄積するんじゃよ。じゃから、ほぼ永久的に魔力を供給し続けられるんじゃ。まぁとはいっても、それほど大きな物はあまり採掘されんから、溜められる魔力量は、精々、ギルラーナ一発分程度じゃがの」

「へぇ、そうなのですか。凄く勉強になります」


 妙に納得がいく話であった。

 よくよく考えてみれば、魔法を付加した剣や杖を使うには、そういった物がないと無理な話だからだ。

 魔力源がないと魔法が発動できないのは、当たり前の話なのである。

 だが話を聞いた感じだと、魔力を溜めておけるのはギルラーナ一発分程度らしいので、MPに換算すると5~6P程度のようだ。

 つまり、あまり大きな魔法は付加できないという事なのだろう。


   *


 話は変わるが、今の話に出てきた魔法発動式というのは、別名・紋章魔法とも呼ばれているモノだったと記憶している。これはヴァロムさんから習った魔法学で知ったのだが、魔法は呪文を唱えて発動させるものの他に、紋章を描いて発動させられるものもあるらしいのだ。

 ギラで例えるならば、ギラの呪文とギラの紋章という2つの魔法発動方法があるという事である。

 だがとはいうものの、紋章魔法の種類は圧倒的に少ないらしく、現状では、道具や武具などに付加させるくらいにしか使われていないそうだ。

 そして日進月歩ではあるが、この国の魔法研究者達は今も尚、呪文魔法を解明して紋章魔法で再現する方法を模索しているそうである。

 つーわけで、話を戻そう。


   *


「それはそうとグレミオよ、ここにお主の考案した魔光の剣の使い手がおるぞ。なんでも、この1等区域にある武器屋で試作品として手に入れたそうじゃ。この際じゃから、色々と訊いてみたらどうじゃ?」


 するとグレミオさんは驚きの表情を浮かべ、俺に視線を向けた。


「本当かい!? いやぁ、まさか使っている人がいるとは思わなかったよ。ボルタックさんに訊いたら、使った人の反応は、皆、イマイチな評価だって言っていたからね。そうかぁ~、使っている人がいたのか。ははは」


 グレミオさんはそう言って、陽気に笑った。


「そ、そうっスか。なはは……」


 俺はズッコケたくなる気分ではあったが、とりあえず、話を続けた。


「でも、他の人はイマイチかもしれませんが、俺はかなり気に入っている武器ですよ。今まで、これで何回も命拾いしましたからね」

「へぇそうなんだ。で、どう? 何か気に入らないところがあったら言ってよ。今後の糧にしたいからさ」

「そうですねぇ……今まで使ってきて少し不満があるのは、固い物を切断しようとすると魔力を相当籠めないといけないところですかね。特に、岩とか鉄のような固い物質は、ファーラミ15発分以上の魔力が必要になるんです。なので、改善してほしい部分としては、魔力消費を抑えつつ切断力を上げてもらう事ですかね。まぁ可能かどうかは、ともかくですが……ン?」


 そこで俺は言葉を切った。

 なぜなら、グレミオさんはポカンとした表情で俺を見ていたからだ。


「あのぉ……俺、何か変な事でも言いましたかね?」

「て、鉄や岩を斬るって……ちょ、ちょっと君、それは本当かい? 本当にそんな物が斬れたの?」

「ええ、本当ですが」


 グレミオさんは、少し狼狽していた。


「こ、これは想定の範囲外だ。い、今から、君の魔力圧を計らせてほしいんだが、いいかい?」

「はぁ、構いませんけど」

「じゃあ、ちょっと待っててッ、今、魔力圧計測器を持ってくるからッ」


 そう言うや否や、グレミオさんは慌てて部屋を飛び出したのである。

 その直後、タニアと呼ばれていたメイドさんが、7つのカップを載せたトレイを持って現れたのであった。


「お茶をお持ちいたしました」――

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