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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、辺境の地ガルテナへ……

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Lv.81 殺人の考察

   [Ⅰ]



 リジャールさんの話に、少し気になる点があったので、俺はそれを訊ねた。


「フレイさんは何故、ここには住まなかったのですか?」

「それは決まっておろう。儂等は秘密裏に事を進めていたからじゃよ。王家に仕えていた錬成技師である儂等が、こんなガルテナの山奥に揃って住んでおるのは流石に怪しまれるからの。特にガルテナは、儂が移住してきた時ですらも、驚く者がおったくらいじゃ。だから、その辺の配慮はせねばならんかったのじゃよ」

「ああ、そういう事ですか、なるほど」


 確かに、そういった事情ならば仕方ないだろう。


「まぁそういうわけで、儂等はこうして調査を開始したわけじゃが、地道に進めてきた事もあり、調査には年月が掛かった。しかし……今から遡る事、約1年前、儂等はようやくその決め手となる、ある事実を発見したのじゃ。じゃが、ここで大きな問題が出てきた」

「大きな問題?」


 するとリジャールさんは、コメカミをポリポリかきながら、恥ずかしそうに話し始めた。


「それが実はのぅ……掘削する為の資金が足りなかったんじゃよ。いや、ある程度は蓄えもあったんじゃが、調査の時間が予想以上に掛かったので、そこまでの資金はもう無かったんじゃ。資金援助を有力貴族に願い出ようかとも思ったが、胡散臭い話には誰も飛びつかん上に、あまりこの事を口外したくないという裏事情もあった。それもあり、儂等は途方に暮れていた。……だが、そんな時じゃった。古い親友が儂の元に現れたのはの……。そして、その男は、ある魔道具を製作するのと引き換えに、その資金を作ってくれたのじゃ」


 リジャールさんはそこで、俺の顔を見た。

 その男とは多分、ヴァロムさんの事だろう。

 つまり、遠巻きながら、この一連の騒動にヴァロムさんも関係しているのだ。

 というか、更に突き詰めると、俺も関係しているのかもしれないが……。

 ま、まぁそれはともかく、話を進めよう。


「では、掘削する為の資金の目途が立ったのですね」

「うむ。じゃから儂は、それを一刻も早く知らせる為に書簡をフレイに送ったのじゃ」

「そうですか」


 色々と複雑な事情があるのは分かったが、まだ知りたい事があるので、俺は質問を続けた。


「リジャールさん、殺害現場がフレイさんの家と先程仰いましたが、フレイさんは家のどこで、どのように殺されたのですか? それと遺体を一番最初に発見したのは誰かわかりますかね?」


 リジャールさんは少し考える。


「……近所の者の話じゃと、フレイは錬成作業をする部屋の床で、大の字になって死んでおったらしい。儂も部屋を確認したが、床に血の跡が残っておったから、まず間違いないじゃろう。しかも、ナイフで心臓を一突きだったそうじゃ。恐らく、即死だったに違いない。その上、傷もそれ以外無かったそうじゃから、相当な手練れの者に一撃で殺されたのではないかと言われておる。それと最初に発見したのは、確か、イシュラナ神殿の神官じゃと聞いた気がするの」


 発見は作業部屋で、死因は心臓を一突き。

 発見者はイシュラナの神官か……。

 いや、考えるのは後にしよう。

 今は質問が先だ。


「そうですか、なるほど。では続けますが、その部屋は1階ですか? それと部屋に窓や入り口は幾つありましたか?」

「部屋は1階じゃ。というか、フレイの家は平屋じゃから2階は無い。それと入口は1つだけで窓は無いの。日の光は錬成作業の邪魔じゃからな」


 錬成作業に日光は邪魔のようだ。

 覚えておこう。


「では、その部屋の大きさはどのくらいでしょうか? それと部屋の様相はどんな感じでしたか?」

「部屋の大きさは、昨日、お主と話したあの部屋くらいのもんじゃ。それと部屋の様相は、中央に錬成用の壺と錬成陣があり、周囲の壁に棚や机が幾つかある程度じゃから、それほどゴチャゴチャしてはおらぬの。至ってすっきりした作業部屋じゃな」


 俺は質問を続けた。


「そうですか。ちなみに殺された部屋は1階のどの辺りですか? 奥の方ですか、それとも玄関のすぐ近くですか?」

「奥の方じゃな」

「では話を戻しますが、殺されたという部屋……いや、家の中も含めてですが、争った形跡や何かを物色した形跡とかはありましたか?」

「ふむ……争った跡などは無かったような気がするの。フレイは几帳面じゃったから、家の中も綺麗じゃったわい。それに、近隣の住民も、そんな様子はなかったと言っておったしの。で、それがどうかしたのかの?」

「そうですか。ちょっと待ってくださいね。少し頭の中を整理します」


 この質問をしたのには勿論、理由があるが、これは犯人を捕まえようなどと思ってした質問ではない。

 ルーヴェラは王都に向かう際に通る場所なので、極力面倒は避けたいから訊いたのである。

 俺は整理がついたところで、現時点での見解を述べておいた。


「リジャールさん、これはあくまでも俺の想像ですが、フレイさんを殺したのは、フレイさんとかなり親しい人物の可能性があります。そこでお聞きしたいのですが、ルーヴェラでフレイさんと懇意にしていたのは誰かわかりますかね?」


 するとリジャールさんは目を大きくした。


「ちょっ、ちょっと待て……なぜそう思うんじゃ?」

「簡単に言うと、ナイフで心臓を一突きという死に方ですかね。普通、武器を持った者を見た場合、被害を受けるかもしれない者は、程度の差はあれ、多少身を守ろうとします。なので、射程の長い剣や槍や弓といった得物ならいざ知らず、ナイフのような間合いの短い得物で心臓を一突きというのは至難の技だと思うんです。ですが、気心を許せるほどの友人や知人ならば話は別です。かなり接近できると思いますから、意表をついてナイフ一突きで殺害するのは、それほどナイフを扱う腕がなくても、難しくはないと思うんですよ」


 俺はそこで言葉を切り、皆の顔を見た。

 全員、「え?」と言って固まっていた。

 意外な考察だったようだ。


「しかも、殺されたのは家の奥にある錬成作業をする部屋ですから、赤の他人をそんな大事な部屋に招くとも思えませんし、もしそんな者が無断で入ってきたならば、多少の小競り合いが起きて部屋の中に何らかの痕跡が残ったと思います。おまけに窓もないですから、外からナイフを投げたなんて事も無さそうですしね」


 俺はリジャールさんの顔を見た。

 その表情はやや険しいものであった。

 俺は続ける。


「それだけじゃありません。リジャールさんが送った封筒の中身が無くなっていたというのも引っ掛かるんです。もしかするとフレイさんは、ガルテナで行なっているリジャールさんとの調査や、その書簡について、気心の知れる親しい人物に、それとなく話したのかもしれません。そうなると、フレイさんを殺害した何者かは、書簡を手に入れるのが目的だったという事になります。いや、寧ろそう考えた方が、これら一連の出来事の辻褄が合うような気がするんですよ。そしてここが重要なんですが……これが真相ならば必然的に……フレイさんを殺した者は、魔物達と密接な関係があるという事にもなるんです。まぁとはいっても、古代の魔法を使い、透明になって襲いかかったという可能性や、先程のヴァイロン達のように変装してフレイさんに近づいた可能性も勿論あるので、今言ったのはあくまでも1つの可能性として考え……って、え?」


 俺はそこで話すのを止めた。

 なぜなら、全員、ポカーンと口を開け、呆けた表情で俺を見ていたからだ。

 アーシャさんは口元をヒクつかせ、言葉を発した。


「コ、コタローさん……よくそこまで色んな事を考えられますね。感心します」


 他の4人も同様であった。


「凄いわね……あの話で、ここまで物事を深読みする人、初めて見たわ……」

「ああ、俺もだ。いや、ある意味、ここまで考えられるから、ヴァイロン達を見破ったともいえるが」

「コタローさん、凄いです……」

「お主、たったあれだけの情報で、よくそこまで考えられるの」


 皆の目は、まるで珍獣でも見るかのような感じだったので、俺は少し居心地が悪くなった。

 ちょっと喋りすぎたか……。

 しかし、頭が冴えるので、色々と考えてしまうのである。

 多分これは、叡智の衣を着ている恩恵なのかもしれない。

 賢さが上がるというやつなのだろう。

 考えてみれば、叡智の衣を装備してからというもの、頭が冴えた調子いい時の状態が持続してるような感じなのだ。

 もしかすると俺は、この衣を着る事によって、凄い恩恵を知らず知らずの内に受けているかも知れない。


「ええっと、では話を戻しますが、ルーヴェラでフレイさんと懇意にしていた方ですけど、誰か心当たりありませんかね?」

「フレイが特に親しくしていたとなると、ルーヴェラの有力貴族であるゴルティア卿と直近の配下の者達、そしてルーヴェラにあるイシュラナ神殿のゼマ神官長と直近の神官達、それとあとは近隣の住民じゃろうか……多分、そのくらいじゃろう」

「そうですか……」


 ゴルティア卿にゼマ神官長か……。

 とりあえず、厄介事に関わらない様にする為にも、それら有力者の名前は覚えておいた方が良さそうだ。

 だが、今やるべきことはそれではない。


「さて、リジャールさん。これからどうしますかね? この奥に進みますか?」

「うむ、そのつもりじゃが、お主等はいいのかの? 毒の上を歩くことになるが」


 他の4人に訊いてみる事にした。


「アーシャさんとイアちゃん達はどうしますか? 俺はリジャールさんと共に行きますが」

「私は行きますよ。毒の床は、回復さえすれば大丈夫だと聞きますからね」


 と、アーシャさん。


「イアちゃん達は?」

「私達も行きます」


 皆、来てくれるみたいだ。

 だが、そうなると1つ問題が出てくる。


「でも、誰かここに残っていないと、不味いんですよね。またあいつ等がやって来て、この通路の扉を閉める可能性があるので。そうなったら最後、ガス中毒で俺達はあの世行きですからね」


 するとそこで、レイスさんが手を挙げた。


「では、私とシェーラがここに残ろう」

「え? でもそれじゃ、イアちゃんは?」

「それについてはコタローさんにお任せする。貴方なら信頼できるからな」

「確かに、コタローさんがいれば滅多な事にはならない気がするわ」

(おいおい……信頼されているのかどうかわからないが、いいのかそれで……。アンタら、姫様の護衛だろ)


 などと考えていると、イアちゃんが俺にニコリと微笑んだ。


「コタローさん。宜しくお願いしますね」

「まぁ……イアちゃんがそれでいいなら。でも、そうなると明かりが無くなるんですよね。レイスさんは松明とか持ってますか?」

「いや、持っていない」

「私も持ってないわ」


 多分、そうだろうと思ったので、俺は腰にぶら下げたグローを手に取ると、ファーラを種火に明かりを灯し、レイスさんに差し出した。


「ではレイスさん、このグローを使ってください。それと、魔物を火葬するのに使ったのであと少ししかありませんが、灯り油もここに置いておきますね」

「すまない、コタローさん」


 レイスさんがグローと灯り油を受け取る。

 俺はそこでリジャールさんに視線を向けた。


「では、そろそろ行きましょうか」

「うむ。行くとするかの」


 そして俺達は、レイスさんとシェーラさんをここに残し、奥へと進み始めたのである。

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