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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、辺境の地ガルテナへ……

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Lv.74 魔物の違和感

   [Ⅰ]



 空洞内に足を踏み入れたところで、リジャールさんから忠告があった。


「ああ、そういえば、言い忘れていた事があるわい」

「何でしょうか?」


 と、カディスさん。


「この辺はそうでもないが、奥の方は落盤の危険性がある。じゃから、オラム系の爆発を伴う魔法は控えてくれぬか」

「それは確かに危険ですね。ウチの仲間だと、ゾフィが当てはまるな」


 ゾフィさんは頷いた。


「では、使わないでおくわ。ちょっと残念だけど」


 俺も該当者なので宣言しとこう。


「生き埋めは嫌なので、オラム系は使わないようにしますよ」

「うむ。少々不便かもしれぬが、よろしく頼む」


 というわけで、ここからはオラム系魔法禁止の縛り探索となるのだ。

 俺達は空洞内を念入りに調べ始めた。

 見回したところ、見取り図には小さな空洞のように描かれていたが、結構広い所であった。

 大きさにして10メートル四方はありそうだ。

 だが空洞内には、特に目を引くものはない。

 瓦礫の山と、朽ち果てた古い木箱ばかり。

 当然、リュシアという女性の姿もなかった。


(見たところ、この空洞は何もないな。ここはもういいや。それより、アレを見に行ってこよう)


 というわけで、俺はさっき倒したリヴィング・デッドの所へと向かったのである。

 理由は、やはり、あの呆気なさが腑に落ちないからだ。

 袖で鼻を覆いながら、俺は死体を眺めた。

 動く気配はない。よって、ただの腐乱死体である。

 ソーンのオッサンにこれらの事を訊きたいところだが、今は流石にできないので自分で考えるしか無いようだ。

 するとそこで、アーシャさんが鼻をローブの袖で覆いながら、俺の横に来た。

 腐臭がきついので、こうなるのも仕方ないだろう。

 というか、俺も同じように鼻を覆っているので、人の事をとやかくは言えないが……。


「コタローさん、魔物がどうかしましたか?」

「ええ、少し気になる事がありましてね……あッ!」


 と、そこで、俺はある事を閃いた。

 だがその前に、それをしていいかどうかをリジャールさんに確認する事にした。


「リジャールさん、今ちょっといいですかね?」

「ん? 何じゃ、コタロー」

「この魔物達なんですけど、念の為に、魔法で燃やしつくしたらどうですかね?」


 するとリジャールさんは微妙な表情をした。


「魔物をか? しかしのぅ……あまり派手な事をすると、魔物達がこちらに集まってくるかもしれぬからの」

「確かに、その可能性は多いにありますね。今は少数で固まっている所を倒していった方が、良い気がします。奴等は大集団だと厄介極まりないですから」


 ヴァイロンという男が、リジャールさんに同調した。


「ああ、その方がいいだろう。あまり魔物を刺激するような事はしない方がいい」


 カディスさんも同じ意見のようだ。


「そうですか。確かに、そうかもしれませんね。わかりました。やめときます」


 完全に燃やしてしまった方がいいと思ったが、まぁ仕方ない。

 何か別の対策を考えよう。

 

(さて、他の方法となると何がいいか……お! そうだ!)


 俺の脳裏に電球がピカーンと光った。

 名案が浮かんだので、俺は周囲に聞こえないよう、隣にいるアーシャさんに耳打ちをしたのである。


「アーシャさん、ちょっと頼みがあるんですけど」

「頼み? 何ですの?」


 と、アーシャさんも小声で返した。


「実はですね。今からこの死体に、ある物を掛けようと思っているのですが、そのある物の事をイシュラナの聖水という事にしておいてほしいんですよ」

「ある物? ……何をするつもりか知りませんが、わかりましたわ」

「じゃあ、そういう事でよろしくお願いします」


 俺はそう言って、腰に下げた道具袋からソレを取り出した。

 アーシャさんはそれを見て、目を丸くした。


「……聖水ってソレの事ですか」

「ええ、お願いします」


 アーシャさんも良く知っている物なので、この反応は当然だろう。

 というわけで、俺は死体の衣服の上に、ソレを少しづつ降りかけていった。

 そんな中、ドーンさんが近づいてきた。


「何してんだ、コタローさん?」


 ドーンさんは首を傾げてこちらを見ていた。

 その隣には、同じように首を傾げるヴァイロンさんの姿があった。


「ああ、これですか? ちょっと、イシュラナの聖水でもかけておこうかなと思いましてね。効果があるかどうかわかりませんが」

「なんだ聖水か。しかしまた、何でそんなもんをかけるんだ?」

「だって、元々死んでいる敵ですからね。また復活でもされたら嫌じゃないですか。とはいっても、これは気休めみたいなもんですよ」

「まぁ確かに、コタローさんの言う通りかもな。元が死体だから、その可能性は否定できねぇや」


 納得したのか、ドーンさんは頷きながら腕を組んだ。

 そして俺は、少量ではあったが、満遍なく死体達の衣服にかけ終えたところで、道具袋にソレを仕舞ったのであった。

 続いて、シェーラさんがこちらへとやってきた。


「何をやってるの、コタローさん」 

「ちょっと清めていたんですよ、このイシュラナの聖水でね。まぁ念の為にです」

「ああ、聖水ね。話は変わるけど、この死体の魔物は、私が以前見たのとは少し違うわね。ということは、やっぱり種類が違うのかも」


 シェーラさんはそう言うと、俺に向かい、意味ありげに微笑んだ。

 この仕草は多分、昨日話した魔物についてのものだろう。

 だが、あまり触れたくない話題なので、俺は何も言わずに軽く微笑み返すだけにした。

 これで一応、通じる筈だ。

 そんな中、ヴァイロンさんの弱々しい声が聞こえてきたのである。


「ここに妹はいないようです……は、早く次を探さないと……」

「ああ、そうだな」


 ドーンさんは相槌を打つと、カディスさんに視線を向けた。


「おい、カディス。ここにはリュシアはいない。それにガラクタばかりだ。もう次に行こうぜ」


 カディスさんは頷く。


「ああ、そうしよう。ではリジャールさん、そろそろ先を急ぎましょう」

「うむ」――



   [Ⅱ]



 俺達はその後、反対側にある空洞に向かい、慎重に歩を進める。

 そんな中、俺はヴァイロンさんに訊きたい事があったので、それを確認することにした。

 俺はヴァイロンさんの隣に行き、まず自己紹介から始めた。


「ヴァイロンさん、挨拶が遅れましたが、私はコタローという者です。今日はよろしくお願いします」


 ヴァイロンさんは目を大きくし、首を傾げていた。

 突然だったので少し驚いたようだ。


「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

「妹さん……たしか、リュシアさんという名前でしたか。早く見つかるといいですね」

「ええ、早く見つけて連れ戻さないと……。アイツは気が強いので、いつかこういう事になるんじゃないかと思ってました。でもいくら冒険者とはいえ、リュシアは女です。恐ろしい魔物達が闊歩する中に、今1人でいると思うと俺は……」


 ヴァイロンさんは消え入りそうな声でそう言うと、不安そうに肩を落とした。

 暗い雰囲気になってしまったが、俺は質問を続けた。


「心中お察しします。ところで、話は変わるのですが、ヴァイロンさんに幾つか訊きたい事があるのです。こんな時に訊くのもアレなんですが、今、よろしいでしょうか?」

「訊きたい事……何でしょうか?」

「ええっとですね……ヴァイロンさんとリュシアさんは、坑道の入り口を担当する冒険者だと思いますが、それは毎日されていたのですか?」

「俺は毎日ですが、リュシアは時々です」

「という事は、今日たまたま2人が警護についたところで、あんなことが起きたわけですね?」

「はい、仰る通りです。ああ、こんな事になるのなら、村の方の警護に向かわせておくべきでした……」


 ヴァイロンさんは暗い表情になり、ガクッと項垂れた。


「お辛い気持ちよくわかります。では、質問を続けさせてもらいますが、リュシアさんは明かりを得る為の手段はあるのですかね?」

「リュシアは松明を持っている筈です」

「へぇ、そうなんですか。松明を」

「ここに配置された者は、何があるかわかりませんから、大体持っている筈ですよ。俺も1本持っています」


 ヴァイロンさんはそう言って、腰に下げた棒状の松明を見せてくれた。


「じゃあ、暗闇の中を彷徨うという事はなさそうですね。安心しましたよ。ところで、ヴァイロンさんとリュシアさんは、このガルテナでの警護をいつ頃からされておられるんですか?」

「俺達兄妹は、魔物が棲みつき始めて暫くしてからですけど」

「暫く? というと、具体的にどのくらい経ってからですか?」


 と、そこで、リジャールさんが話に入ってきた。


「ヴァイロン達兄妹は魔物が現れてから4、5日ほど経った後、たまたま、ガルテナにやってきたのじゃよ。あの時はカディス達のような冒険者もまだいなかったもんじゃから、儂も無理を言って、暫く村の警護に就いてくれるようお願いしたのじゃ」

「という事は、それからずっと、ヴァイロンさん達はこちらで村の警護をされているというわけですね?」


 ヴァイロンさんは頷いた。


「ええ、仰る通りです。しかし、今にして思えば、あの時まさか、こんな事になるなんて思ってもみませんでした。俺達兄妹がこの村に来たのは、本当にたまたまでしたので」

「仲間と共に旅をしてらしたのですか?」

「いや、仲間はいません。俺と妹はわけあって2人で旅をしておりまして、モルドの谷の向こうにあるルーヴェラに向かうつもりだったのです。でもこのガルテナに立ち寄った時には、こういう事態になっていましたので……」

「そうだったのですか、2人で……」

「お主達には感謝しておる。無理を言って引き留めて済まんかった。おまけにリュシアをこんな事に巻き込んでしまって」


 リジャールさんは申し訳なさそうに、ヴァイロンさんに礼を述べた。


「いや、それは言わないでください。俺達もその分、見返りは貰ってるんですから」


 今の話を聞く限り、どうやら、初期の頃からいるみたいだ。

 これは好都合である。


「じゃあ、魔物が現れた頃から村の警護をされているという事ですね。いやぁ良かったです。ならば話が早い。実はそう言った方に、是非訊いてみたかった事があったんですよ」

「是非、訊いてみたかった事……何でしょうか?」

「実は昨日ですね、そこにおられるリジャールさんから、魔物は夜になると現れるって聞いたんですよ。ですが、今日は明るい時間帯に現れました。そこで教えて貰いたいのですが、今までも、こんな明るい時間帯に魔物が現れる事はあったのですか?」


 ヴァイロンさんは少し思案顔になった後、頭を振る。


「いえ……そういえば、こんな明るい時間に出てきた事はなかった気がしますね」

「うむ。儂も夜に現れるとしか聞いとらんぞ。じゃから、明るい内に坑道に入る事にしたんじゃしの」

「言われてみると、確かに妙だよな。良く考えてみたら、こんな明るいときに魔物は出てこなかった筈だ」


 リジャールさんとドーンさんも怪訝に思ったのか、首を捻った。


「では今日が初めてだったのですね。なるほど……あッ!」


 俺はそこで、昨日、リジャールさんに訊きそびれていた事を思い出した。


「そういえば昨日、リジャールさんに訊き忘れたことあったんですよ」

「何じゃ、一体?」

「ここにいる魔物と初めて遭遇したのって、もしかしてリジャールさんなんですかね?」


 これを訊いた瞬間、リジャールさんはハッとした表情でこちらに振り返った。

 そして、少し探るような眼で俺を見たのである。


「確かに……魔物を見つけたのは、儂ともう1人の村人じゃが……なぜわかったのじゃ?」

「やはりそうでしたか。まぁその辺の話は、これが片付いたらにしますよ」


 思った通りだ。

 第一発見者はリジャールさんで間違いないようである。

 中々いい情報を得ることが出来た。


(さて、これらをどう考えるかだが……恐らく、ただの魔物騒ぎではない。俺の推察が正しければ……)


 と考えていた、その時であった。

 カディスさんの緊迫した声が聞こえてきたのである。


「空洞入口から魔物が4体出てきたッ。全員、戦闘態勢に入れッ」


 魔物が現れた……ようだ。


(チ、良いところだったのに……まぁいい、まずはこいつらを倒すとしよう)


 そして、俺は魔導師の杖を構え、臨戦態勢に入ったのである。

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